馬車でゾークが
魅惑の都市・ベネットを目指す僕たちの前に現れたテルファー。
新たなヒロイン登場で盛り上がる中で肝心のテルファーがいない。
ハイの言うようにトイレにでも行ってるのかな?
それとも昨日のはすべて夢でテルファーなど存在してなかったとか?
絶対にあり得ないことでもない。
「ゾークは…… 」
「たぶん…… 」
「いやいい。テルファーがフン集めなんかするはずない」
「勝手に僕の言うことを決めつけないで。きっと恥ずかしくなって逃げたんだよ」
「ちなみに誰から? 」
暇じゃないけど一応は聞いてやるのが親友さ。仲間は信用するものだ。
「もちろん僕に決まってるだろう? 」
ゴンっと容赦なく一発食らわす父さん。
「師匠。それはないですよ」
「うるさいぞゾーク! 逃げたに決まってるだろう?
嫌になったんだよ。お前たちガキの相手するのがな」
父さんは有無を言わせない。まあゾークよりはありそうと言うかそれしかないか。
「父さん言い過ぎだって! ゾークも大丈夫だから」
「そうっすよ親分」
ハイも止める。
「いいから早く別の方法を探すぞ! 」
「だから…… 」
そんな風に言い争いしてるところで人影が。
「どうした? 朝っぱらから騒がしいお客だ。ほらお前たちも食べるか? 」
マーケットまで朝飯を買いに行ってくれたらしい。何ていい子なんだ。
かわいいし気も利くし何と言っても第一印象よりも怖くない。
チキンとポテトと野菜とで朝飯にする。
待ってました! 余計な体力を夢の中で使ったから腹ペコ。
「おいこれ…… 」
父さんが何かに気づく。
「大丈夫だって。これは正真正銘の鳥だから。ドラゴンじゃない」
テルファーが笑う。昨日とは違ってどこか砕けた感じでワイルド。
口も乱暴ってほどではないけど激しい。そうするとかわいさが霞んでしまう?
それにしても父さんは何をそんなに気にしてるんだ?
好き嫌いはないはずだけどな。鳥が嫌いだったっけ?
どうもテルファーもその辺の事情に詳しいようだ。
「嘘つけ! どうせ違うって言われただけだろうが? 」
父さんは基本的にマーケットの者を信じない。簡単に嘘を吐くからだそう。
それはこのテルファーのおじのジャックもそう。信用ならない悪党だと。
見た目はそうだけどそこまで言うことないんじゃないか?
「大丈夫。美味しいって。共食いにならないからってジャックは勧めてた」
「まったくとんでもない奴らだ。俺を嵌めたらただじゃおかねえからな! 」
どうやらチキンはダメだそう。確かにうちではチキンが並ぶことはなかった。
でもハイとゾークがよく食べてるからその時に僕も。
「いいから行くよ」
こうしてテルファーの先導で目的地へ。
「ここから馬車に乗るぜ」
テントから一時間以上歩いてようやく馬車を捕まえる。
さあこれでゆっくり旅が続けられるかな。
ただ一つ問題が。資金が間もなく底をつくのは間違いない。
お金の管理は僕がしているが父さんが詳しく教えないしテルファーも非協力的。
帰りの馬車代ぐらいはどうにか確保しないとな。
お宝を売って金に換えるか?
それにはダイヤや金銀財宝をどこかで見つけておかないとな。
またダンジョンに潜って手っ取り早く稼ぐか?
それともクエストでもこなすか? 今回の旅の性質上クエストは難しいからな。
馬車に揺られて五分。異変を感じた。
「どうしたんだゾーク? 」
「ううん何でもない…… 」
どうもゾークが我慢してる様子。顔色が悪い。みるみるうちに青くなっていく。
「ゾーク? まさか体調が悪いのか? 無理するなって」
「悪くない…… 」
まさか…… 気持悪いとか?
そうだった! ゾークはいつでもどこでも吐く奴だった。
おかしなコレクションもこれが原因。
ゾークのことはまったく考えずに旅を続けてしまった。
できたら自分で言って欲しかった。いくら僕が世話係でも無理なものは無理。
「おいゾーク? 」
まずい。酔い止めはさすがに持って来てない。
ゾークのポケットを探るが見当たらない。どうしよう? どうしたらいいんだ?
「頼むハイ! 」
だがある訳ない。ハイの七つ道具には含まれてない。
しかしなぜゾークはもっと早く言わないんだよ。
初めに言ってくれたらどうにか。当然馬車からは降りれない。
言うにしてもガキが何を言ってるんだとお馬のおじさんに叱られる。
それはさすがに嫌だし困る。
最悪全員下ろされるかも。そうすれば相当なロスだ。
とんでもない遅れをとってイライラで限界の父さんまで怒り出しかねない。
そんなすごくまずい状況。だから誰にも言えない。
ここはハイにテルファーから聞いてもらう。
「おい! あるか? 」
ダメだ。テルファーに緊張して肝心の何を求めてるのか言えてない。
「はあ? あってもあげれる訳も貸せるはずもないでしょう! 何を考えてる?」
テルファーも混乱状態。何だか勘違いしてる気がするな。
一体ハイは何を言ったんだ? まさかね……
横になっていた父さんが突然起き上がる。
「どうしたんだカズ? 」
「いや…… ゾークが気持ち悪いって…… 」
まずかったかな? でもここは非常事態だから仕方ない。
「何だよ早く言えばいいのによ。ホラこれを飲ませてやれ」
どうやら父さんが合成した酔い止めと胃薬の合わせたものだそう。
これは客からの要望で作っていたもの。当然バー仲間からの依頼だ。
それを自分用にも作って持っていたと。これでゾークは回復するぞ。
急いでゾークに薬を飲ますことに。
十分後体調も戻って笑顔も出るように。これで一件落着かな。
ようやく父さんの凄さを理解できたような気がする。
これなら僕たちも安心して旅ができるぞ。
昨日は酔っぱらって。いつも酔っぱらって。王子にはタンサン毒水を飲ますし。
ドラコの件で危うく家族の危機にまでなった。
今までロクなことならなかったけど今はちょっとだけ格好よかった。
テルファーがゾークの汗を拭いてやる。
意外にもこう言うことに気を使うタイプなんだ。
どうやらゾークの様子からテルファーに嫌われたくないと我慢したのが分かる。
そのせいで悪化したら元も子もないって。
今は凄く幸せそうで安心した感じ。さあこの後どうなるかな?
続く




