ハイの夢
ゾークに続いてハイまで。夢の世話までさせないでくれよな。
こっちだって自分の夢で精一杯なんだから。一人で解決して欲しいぜ。
「だからどうすれば? 」
「自分はモテない! これは願望で現実じゃないと自分の体に言い聞かせろ! 」
「だからどうやって? 」
自分で考えればいいのに困った奴だ。自分の夢だろう?
「簡単さ。自分はモテないと十回唱えればいいだけ。ほら早く! 」
「自分はモテない…… 」
きちんと十回数えるハイ。意外にも律儀な奴だ。
何の確証もないけど頑張ってくれたらな。きっとそれですべて解決さ。
「あれおかしい。なぜか消えてくれない」
ハイはもう意味不明だと頭を抱える。それがハイだがやっぱり同情はできない。
うわ…… いつの間にかテルファーまで求婚してるぞ。
都合のいい夢だな。どこまで欲張りなのか?
フォレーセスはまだいいがテルファーは昨日会ったばかりだろうが。
それなのにハーレムに入れるなよな。
夢ぐらい見ていいと思うけどあまりに現実とかけ離れた夢を見たらこうなるさ。
だからって現実的になれとまでは思わないけどね。
「もっと心から! どうせ夢だし悪夢さえ何とかすればいいんだから! 」
きっとハイはまだ心のどこかで自分はモテると勘違いしている。
別にそう考えるのは構わない。でも事実と違う以上こじらせてはいけない。
ここで食い止めないとどんなものが出てくるか。多少強く強引に。
「俺はモテない! モテるはずがない! 絶対にモテないんだ! 」
やり過ぎな感もあるがこれで悪夢が消えるなら。ちょっと悲しいがそれでいい。
もちろん僕はハイを格好いいと思ってる。でも男のそれと女のそれは違う。
お願いだから夢ばかり見ないでくれ。どんどん夢がおかしくなってしまう。
「あれまだ無理だぞカズ…… 」
ハイはもう限界と泣きついて来る。でも今さっき思いついただけだし。
ちゃんとした解決策などハイ本人にしか分からない。
「よし一人捕まえて告白しろ! そうすればきっと収まるだろうから」
適当だがきっとハイも一人を選びたかったんだろう。その願望が残っている。
消そうと思っても奴自信がそうではどうにもならない。
こうして夢とは言えドラコを捕まえ愛の告白をするハイ。
結局ドラコを選ぶとはどう言う趣味してるんだ?
僕たち兄弟になっちゃうぞ。
では大人しく見守りますか。
これはハイの夢なのでどんな無茶苦茶な願望でも当然すべてうまく行く。
こうして告白成功と同時に他の女の子は消滅。ドラコも翼を広げ飛んで行った。
ハイはようやく悪夢から解放されたのだった。
ではそろそろ起きるかな。
うん? 父さんは夢を見ないらしい。これでゆっくり眠れる。
「好きなの…… 」
うん? どこからか漏れる女の子の声。これってテルファー?
誰が好きなんだ? テルファーの好きな人に興味はあるがこれ以上聞くのは違う。
「私…… 」
どうやらもう少し放っておけば夢が流れて来るだろう。
しかしもう限界だ。ハイのお陰で疲れた。だから熟睡したい。
悪いけどもうこれ以上他の者の夢には関わらない。
「お願い! 私の愛しの…… 」
うわ…… 大人っぽい恋愛話はちょっと無理です。
僕はまだ子供だし恋とか愛とか自分にはよく分からなくて。
それは父さん譲りって言われてたけど……
その訳はきっと竜人だから。父さんが竜人なら僕だって竜人。
ドラコもソラも受け継いでいる。
竜人って普通じゃない。愛や恋に鈍感で興味が薄いことも。それが僕だ。
父さんは逆に異常なほど。そのせいで母さんを悲しませることに。
だからって父さんの裏切りが許されるはずがない。
「起きなさい! 起きるのです勇者・カズ! 」
「ここは? 」
「神世界です」
女神様登場で物語は急展開を見せる?
「それで僕は…… 」
「あなたのこれまでの活躍に敬意を表しあなたを立派な竜人にしてあげましょう」
そんな風にチート級のレベルアップを宣言。
「女神様…… ああ女神様! 」
レベルアップ!
レベルがマックスになった。
カズは立派な竜人へと成長した。
よしではそろそろラスボスでも倒しに行くかな。
「おい! 起きろってカズ! 」
「ううん? 父さん…… 」
「カズいつまで寝ぼけてやがるんだ! 早く支度しろ! 」
酔っ払いの父さんは二日酔いもせずに厳しい。
あれほど昨日だらしなかったのにさすがは大人だ。
でもだからって絶対真似したくない。
真似したらきっと僕までマローンおばさんに滅茶苦茶言われるぞ。
「あれ…… 父さんおはよう。皆は? 」
どうやら女神様もチート級のレベルアップもただの僕の願望だったらしい。
でもとりあえずレベルの確認。
えっと…… ダメだ。レベル5のままだ。
「もうとっくに起きてるぞ。テルファーにフラフラしてる情けないガキどもだ」
酷いな。自分だって同じだろう。でも言えない。言えば怒られる。
「それでどうするの? 」
「まずは追いつくんだ! 」
まさか…… テルファーの奴僕を置いて行ったのか?
ほぼリーダーで一番詳しい僕を無視かよ。
「それでテルファーを巻き込んだのはカズお前か? 」
「違うけど…… ジャックが使いを…… 父さん酔い潰れてたからテルファーが」
「まったくお前たちと来たら! 人様を巻き込むなよ。
これは俺たちの問題だろうが。違うかカズ?
テルファーは使えるが友だちの姪なんだから巻き込むのは違うぞ」
なぜか僕が説教される。
父さんの代わりに動いただけじゃないか。
まさか昨日のことはまったく覚えてないとか言わないでよ? 本当に勘弁して!
事情だってきちんと話したじゃないか。
そもそも父さんが酔い潰れたから僕たちが聞きに行った訳で。
僕たち悪くない。ちっとも悪くないよ。もう本当に困った父さんだな。
消えたテルファーを追いかけて……
「それでどこに行ったのテルファー? 」
「知るかよ! きっと家に帰ったんだろうさ」
イライラ気味の父さん。酒に溺れて母さんに叱られている時のよう。
でも格好悪いからそれは言わないであげよう。
「ハイはどこに行ったか知ってる? 」
「さあ俺にもちょっと。トイレでも行ったとか? 人に見られたくないんだろう」
以外にもハイは分かってる。もしかして女の子と? いやそれはないか。
ただどうであれただの下ネタ。これでは父さんと変わらない。最低だな。
続く




