それぞれの夢
父さんがもう限界なので近くでテントを張ることに。
残念なことに父さんが足を引っ張ってばかり。
二人にも悪いしテルファーだってもう呆れてる。
「どうしよう? 」
「テントが落ちてないか探して来て」
テキパキと指示するテルファーは輝いて見える。
現在父さんは酔っていて戦力にならない。
僕たちでどうにかしないとどうにもならなくなる。
この辺りは何度か来たことがあってテントが壊れて捨てられてる場合があると。
よく探してみてとテルファーが。でも光も僅かでは暗くて見えない。
ドラコのライトニングでもあればいいんだろうけどまだ継承してないからな。
ここは地道にライトでテントを手分けして探す。それも危ないか?
そんな風に迷ってるとゾークの声が。
「あったよ! 」
細かい探し物が得意なゾークが使い古しのテントを発見。
これで今夜は凌げそう。でも本当に大丈夫? いい加減な感じがして不安だ。
「さあさっさと寝る! 」
テルファーが穴だらけでほぼ使い物にならないテントらしきものを立てる。
さすがは旅と冒険と無茶な依頼に慣れてるテルファー。その手のことはプロ級だ。
まだまだと言うが僕らからすれば相当凄いこと。本当に尊敬しちゃうな。
さあでは元気に明るく夜を楽しむかな。
雨風さえ凌げればいい。もちろん今夜は雨も風もないムシムシした夜。
もしかしたら朝早くに一雨来るかもしれない。とは言え天気は悪くなさそう。
突然の大雨で起こされることもないだろう。
「おい火を絶やすなよ! どんなのが来るか分からないぞ! 」
そう言うと真ん中で豪快に眠るテルファー。僕とゾークがその隣を確保。
父さんを足元に。ハイは入口付近で待機。
ハイは異変があったらいち早く知らせる係。きちんと機能してくれるといいけど。
さあでは落ち着いたところで寝るとしよう。
当然こんなところではぐっすりと行く訳がないが。
悪夢が襲ってきた。
一人につき一体の悪夢がまとわりつく。
「どうしようカズ君」
夢だと言うのにゾークは僕に頼る。自分の夢ぐらい自分でどうにかしてよね。
でもリーダー命令なら仕方ないか。まだゾークがリーダーのまま。僕も世話係だ。
仕方ない。自分の悪夢は後回しにしてまずはゾークを悪夢から救うとするか。
あまり気が乗らないけどね。これも世話係の役目さ。
「どうしたゾーク? どうしても辛いなら目を覚ませばいい」
悪夢だって夢に違いない。だから夢と気づいてもらって目覚めればいいだけ。
ちょっとずるいがこれもチーム戦だから文句ないだろう。
「それができるのなら苦労してないよ! いいからカズ君助けてよ! 」
らしくなくゾークは興奮している。人は夢では本性が出てしまうのだろう。
もちろん恐ろしい夢でどうにもならないのだろうから可哀想なんだけどね。
悪夢から逃れられないゾークには同情するぜ。
「だから何をどうしろと? 本来自分でどうにかするもの。それを人任せって」
悪いなと思いながらもなるべくなら人の夢に関わりたくない。
おかしな夢に巻き込まれるのもあるが仲が悪くなる恐れがあるから近づかない。
「いいから早く! フンが大量に降って来るんだよ」
ゾークらしい下品で汚らしい夢だ。やっぱりあまり関わりたくないな。
でもアドバイスを送らないとゾークは悪夢から抜け出せそうにないからな。
「よしまず傘を出して。念じればきっと出てくるから」
焦ってるゾークにアドバス。これくらいゾークの頭なら思いつきそうだけどね。
「うん。本当だ」
一本でいいところを二本も三本も出してしまう。
その内その傘が凶器となって襲って来る。
自分が描いたものだから消えることはない。これは余計まずいことに。
「カズ君…… 」
「太陽だ! 太陽を描けばきっと傘も役目を終えてどっかに行ってくれるはずだ」
「よし太陽! 太陽! 」
そう念じる。これで解決か?
「よしいいぞゾーク」
「うわ! 月が現れた…… 」
何もない空にいつの間にか月が登場。焦ったゾークが出現させたもの。
「おい…… 」
文句言おうとしたが何と傘がどこかへ。
太陽でなくても月でも傘は消えてくれた。
これはラッキー? それともゾークの機転?
まあこれで…… ゾークの悪夢は消え解決。
ではそろそろ自分の悪夢に立ち向かおうかな。
「カズ! どうしよう? 」
ハイが走って来る。まさか今度はハイの悪夢に巻き込まれるのか?
もう充分。これ以上はいらない。自分の夢で足りてるっての。
「もう一人でどうにかしてよ。もう眠いよ…… 夢の中だけどね」
「いいからどうにかしてくれ! もう止まらない! 」
そんな風に怯えるハイ。一体どんな悪夢を見てるんだよ。
仮にそんな恐ろしい夢だったとしてなぜ僕に頼る?
やっぱり人の夢には関わりたくない。
ハイを追いかけて女の子が何人も。何か悪いことでもしたのか?
「ははは…… 実は初めはいい夢だったんだよ。でもその内狂ってきて……
これってどうすればいいんだよ? 」
どうやらハイの願望が叶ったらしい。だが一気に悪夢になったと。
どんな願望でどんなおかしな夢を見てるんだよこいつは?
もう付き合いきれないよ。どうして二人とも僕を巻き込もうとするんだ?
もう知るものかって言えたらな。でも僕は世話係な訳で……
「ハイ! 」
女の子の一人にフォレーセスの姿があった。それだけでなくドラコまで。
うん? こっちはテルファーじゃないか。どうなってるんだ?
まさかまだ前のヒロインを忘れられずに引きずってる?
結局ハイの願望ってこう言うのか? 最低だな。でも仲間だから助けないと。
「カズ! もう逃げ切れない! どうすれば…… 」
「現実を思い出せ。お前は誰からもモテない可哀想な男。人気などある訳ない!
願望は願望。この悪夢から逃れるには現実を思い出せばいいんだ」
だがそれはハイにとってとても耐えられない苦しみ。どっちが悪夢か分からない。
「だからどうすれば? 」
「自分はモテない! これは願望で現実じゃないと自分の体に言い聞かせろ! 」
「だからどうやって? 」
ハイは僕の答えを求める。自分で考えればいいのに困った奴だ。自分の夢だろう?
続く




