待ち合わせ
マーケットでベネットを知る者を探しているとジャックへと行きつく。
ジャックは第一印象は最悪で実際に話してもやはり怖い人。父さんの悪友らしい。
夜九時に待ち合わせたのはいいが肝心の父さんが酔い潰れてしまった……
ダメだ。もう呂律が回ってない。
弱いのに飲むから…… 人に迷惑を掛けてばっかり。
これはマローンおばさんの受け売り。そこまで僕は詳しくない。
「お客さん! そんなところで寝ちゃ困りますよ」
ついには瓶を抱えて寝てしまった。これはもうどうにもならないぞ。
店の人も手がつけられない状態。放っておくそう。
これでは待ち合わせに間に合わない。仮に間に合っても役に立たない。
せっかくジャックを見つけたのにいつもこうなんだか。
「どうするカズ? 」
「どうしようカズ君? 」
少しは考えればいいのに僕に頼る。頼られるのは悪くない。実際父さんの性だし。
「よしもう帰るか」
やけくそ。でもまだ旅は初日でここまでなら一度戻って立て直すのもありかな。
「おいおい本当に帰っていいのかよカズ? 」
「いいはずない。待ち合わせに行かないとたぶんベネットへの道は閉ざされる。
父さんを叩き起こすのは無理だから僕たちで行こう」
父さんは安全なところで寝かせておいて僕たち三人で行けばいいだけ。
相手があのジャックとは言え僕が代わりなら文句ないだろう。
「でもどうやって…… 」
「大丈夫。メモもあるし今すぐ行けば間に合う。どうする二人とも? 」
マーケットで買い物したり食い倒れてる場合か?
僕たちの真の目的は新たなアトリエ探しさ。ここでノロノロしてられない。
「分かったよ俺たちは行くぜ」
ハイはゾークを無視して賛成してくれた。
「ゾークはどうする? 」
「僕はちょっと…… 」
「だったらキャプテンを送り届けるか一人で帰るかしてくれ」
ハイはゾークに選択を迫る。当然暗くなった今一人で帰るのは危険。
ゾークがハイのように強いならまだしもただの臆病だからな。
もちろん僕だって人のこと言えないが。しかもいつもの道のりでもない。
父さんを連れては余計に大変。いくら安全でも世話は大変だろう。
だからゾークは僕たちについて来るしかない。ハイらしくなく頭を使っている。
賢いと言うより汚いかな。
「もう二人とも分かったよ。僕も行くよ。行けばいいんでしょう! 」
若干キレ気味でゾークも納得する。
「よしだったら急ぐぞ! 遅刻したらシャレにならないからな」
ハイが引っ張る。
こうして父さんを置いて待ち合わせ場所へ向かう。
いい子は帰って飯食って寝る時間だが僕たちは旅の途中だから問題ない。
ジャックとの待ち合わせ場所に走る。
夜九時にジャックの指定したバーへ。
ハアハア
ハアハア
危ない危ない。どうにか間に合った。
暗いだけでなく初めての場所で迷いやすくその上子供の足ではギリギリ。
「おい君たちここは子供の来るところじゃない。早くお家に帰りなさい」
バーの外に追い返される。当然か。でもジャックが指定したのはここ。
この機会を逃したら旅の予定が大幅に遅れることに。
「あの…… 」
「ほら早く。お家の人が心配するぞ。ここに来るのは十年早い」
ちっとも話を聞いてくれない。ジャックがいないか確認しようと思ったのに。
これじゃあ気分を悪くして帰っちゃうよ。あの見た目で我慢強いはずがない。
僕たち子供よりも我がままで我慢できない困った大人のはずだから。
「だからその父さんを探しに来たんですって! 」
ハイが口から出任せを言う。こう言うのは本来僕やゾークの役割。
でも平気で嘘を吐くのはどうしてもできなくてただ大人しくするだけ。
「ああそれは可哀想に。皆兄弟? 」
「ううん。この子のお父さんでジャックって言うんだ。
体中に入れ墨をした怖い人がこの子のお父さんなんだ」
ハイの父と言うことにする。あの見た目は一番ハイっぽいもんな。
「よし待ってろ。呼んでくるからな」
さあこれでうまく行くぞ。
だが店内には目当ての客は存在しないと怪しまれる。
「ごめんなさい。きっと別のところに…… 」
ハイの代わりに答える。
「そうか…… だったら頑張りな。おじさんも手伝いたいけど…… 」
どうにか疑いは晴れ変な目で見られることもなくなった。
しかしなぜジャックがいない? 待ち合わせの時間はもうとっくに過ぎてるのに。
店を間違えたか? 父さんとの話を聞いてただけだからもしかして場所が違った?
それとも待ち合わせの時間を間違えた? ただ遅れてるだけ? どうしよう?
もし一人だったら心細くて仕方なかったろうな。でも今は仲間もいるし心強い。
ただ皆には悪いなと思う。でもどうしようもない。
これ以上ここに居ても邪魔になるだけ。一旦どこかに……
その時ハイが興奮してるのが分かった。
「どうしたんだよハイ? 真面目にやる気あるのか? 」
「悪い悪い。あそこにとんでもなくかわいい女の子がいるからさ…… 」
ハイはませてるからきれいなお姉さんにもそんな失礼な言い方をする。
こんな夜に女の子が一人でいるはずないだろう?
僕たちだって三人だから何とかなってる訳で。
一人ならハイはどうか知らないけどゾークは間違いなくちびってるだろう。
ジャックの相手はハイに任せるのがいい。
そうすれば僕が酷い目に遭うこともないさ。
ガキが何の用だとキレられるのが目に見えるからな。
「ゾークも何か言ってくれよ」
「ほらカズ君も見てごらん。本当にきれいな女の人だよ」
ゾークまで何を言ってやがる。ここにそんな子がいる訳ないだろう。
マローンおばさんによればこんなところにいるのはロクでなしの酔っ払いだと。
だから僕も二人にはそんな風に言ってる。でも父さんは別にしないと。
僕たちまでろくでなしになってしまうのは困る。
「おい何を言ってるんだよゾーク? 」
「ホラ見て。こっちに向かって来る」
振り返ってゾークの視線の先を何となく見る。確かに女の子。
でも派手な格好でかわいいと言うよりきれいで大人っぽいが正しい。
こいつらはきれいも素敵も大人っぽいも全部かわいいにするからな。
実際に素敵な女の子がこっちに向かって来る。何の用があるんだろう?
続く




