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大都市ベネット

【新章】魅惑の都市・ベネット編。


ついに新たな旅が始まる。

父さんも噂でしか聞かない初めて行く大都市・ベネット。

そこには数多くの芸術家やアーティストが集う煌びやかな世界。

ここからだと南進することになる。

今度の旅は父さんも入れて四人の旅。

恐らくこれが最後のアトリエ探しとなるだろう。


「師匠! 早く行きましょう! 」

ワクワクして眠れなかったと名前通りにハイになっている。

「おい師匠はやめろと何度も言ってるだろう? 俺はそんな柄じゃねえ。

ついでに爺でもねえ。頼むから何とかしてくれ! 」

師匠と呼ばれるのはどうも照れくさいらしい。

「だったらおやっさんで。それでおやっさん今回はどちらに? 」

ハイは張り切っている。あんな無茶な約束したから当然か。

もう忘れてると思ったのにこれはごまかせそうにないぞ。


今度の旅は手ぶらでいいしハイにとっては楽なんだろうな。重い荷物は父さんが。

僕とゾークはバック一つ。好きにしろと言われハイは本当に手ぶらで来やがった。

調子に乗って鼻歌まで。どうせ僕の口からの出任せを信じついて来たんだろうが。

それはゾークも似たようなもので父さんにうまく言い包められた。


二人とも本当にすぐに騙されるから世話が焼ける。

ただそれだけ何も考えてなく純粋なんだろうな。

それに引き換え僕ときたらやってることは父さんと何ら変わらない。

しかも父さんはもしかしたらゾークの願いを本気で叶えるつもりかもしれない。

でも僕にはその能力がない。最低でも一人。できれば二人。

ハイの望むきれいな女の子を仲間にしないとただの嘘つき親子と言われてしまう。

旅の最終日までにはどうにか二人確保しなくちゃ。


人喰いオオカミとドラコと洞窟の旅を経験してすっかり一人前の冒険者になった。

ゾークの方はまだ頼りないが元々少しおかしなところもあるしこんなものだろう。

何と言っても今回は都会見学だから。僕だってワクワクしている。

ハイもゾークも都会に用のある僕ら親子の付き添いとして同行。

最後の情け。だからこそ二人の親は行って来いと送り出した。

前回までの旅も詳しく伝えなかったからできたこと。


都会に行くだけだから前よりも危険に遭遇する確率は少ないだろう。

ただ今度の旅は片道でも二日は掛かる。往復でも最短で四日のハードな旅。

父さん次第だけどきっと一週間はかかるさ。


「それでおやっさんまだですか? もう疲れた」

ハイがさっそく文句を言う。一番体力のある奴が何を言ってるんだか。

僕やゾークなら分かるけどハイはきっと飽きたに違いない。

飽きたからって我がままを言って隊を乱すなよな。

「おやっさんじゃない! キャプテンと呼べ! 」

父さんが合成師で僕が合成師見習。二人はその助手だから身分が違う。

二人の待遇はもちろん一番下。それが僕たちの関係。

「嘘…… ここはアトリエじゃないぜ。それにおやっさんでいいって…… 」

ハイが文句を言うが父さんは厳しい。

僕としてはどっちでもいいけど二人の身分が僕より下ならやり易いのは確か。


「ほら言ってみろ! 」

うわ…… 我が親ながら弱い者にしか威張れない情けなさ。恥ずかしい。

「へいへい。分かりましたよキャプテン! 」

ハイは僕の方を睨む。仕方なく謝る仕草で乗り切る。

父さんは気分屋だから困る。明日にはまたおやっさんに戻せって言うんだろうな。

「ゾークもだぞ」

「分かりましたキャプテン」

ゾークはまったく気にする素振りも見せずにただ従う。

こうして多少不安は残るが四人の新たな旅が始まった。


隣村を超えたところでマーケットが見えて来た。

父さんは大都市ベネットがどこら辺にあるかまでは把握済み。

問題はどうやって行けばいいのか。

それだと僕たちは見知らぬ土地であたふたすることになる。

どこかで船に乗ることまでは突き止めたらしいのだがそれ以上不明。

こうしてマーケットでベネットへの行き方を探ることに。


冒険者にとって情報ほど大切なものはない。

アイテムでも武器でも防具でも度胸でもなく情報こそが成否を決する。

そもそも思いつきで行こうとしたのが間違い。きちんと調べてからでないと。


とりあえず二手に分かれるとしよう。

危なくないように僕は父さんと。ゾークはハイと。

これで万が一危険な目に遭ってもどうにか切り抜けられるだろう。

父さんの考えではすぐに行き方も分かって旅の仲間も増えると。

そんな風に単純に考えていたらしい。そんな簡単なものじゃないのに。

これではいつになったらベネットに着くことか。

地図ぐらい用意すればよかった。すべて父さん任せだから。


ベネット…… 大都市と言うだけあって知っている者もいるはず。

「ああベネットね。だったら…… 」

マーケットでは果物と野菜と魚に土産品等の雑貨が軒を広げている。

喉が渇いたのでココナッツジュースを一杯。

それでも足りずにオレンジとアップルのミックスジュースを追加。

だがそれだけでは詳しく教えないそう。


「呪いの人形を一つ。それとスプーンも」

なるべく荷物にならない役に立つものを選ぶ父さん。

呪いの人形ってなんだ? 興味はあるけど……

「毎度。ベネットなら裏の店の婆さんが出身だって言ってたな」

何だよその程度かよと悪態を吐く父さん。僕も真似することに。

子供は親の背中を見て育つと言うから。


ではさっそくレアアイテム探し…… マーケットならいくらかあるだろう。

金は父さんに払ってもらえばいい。だって僕は子供だから。

「おい一つだけにしろよ。高いんだから。代わりにおもちゃを買ってやるから」

そんな風に子供扱いする。もうそんな年じゃない。

強く言わないときっとあの呪いの人形を手に取るだろう。


「父さん! 」

「分かったって。買ってやるよ。本当にそれでいいんだな? 」

レアアイテムのスッパを手に。

「待って…… セットの方がいいからこっちね」

スッパとカラインを手に入れた。

これはマーケットや村に来る行商人から入手可能なレアアイテム。

本当はもうちょっと変わったのがいいがこれはこれで役に立つ。


もう充分だ。後はお婆さんから話を聞くとしよう。


                 続く

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