ミスタードラゴンズのカズ
僕たち家族の秘密。もし本当に竜人なら僕はどうすればいい?
「チクショウ! 俺の負けだ! 俺は竜人だ。人と竜の子だと言われ育った。
だからお前も竜人だ! そしてドラコもソラも。残念だが疑いようのない事実。
隠すつもりはなかった。ただいきなり言うのも……
お前が大きくなってきちんと理解できるようになったら言おうと思ってたんだ。
だからドラコには絶対に近づくなと」
一応それらしいことを言うが本当かな? どうも信じられない。
「そう…… だけどどうしても心配でつい…… 」
ドラコだってこうなることは充分理解してるはずなのに止められなかった。
でもそれは仕方ないこと。ドラコを責められない。
責められるのはやっぱり父さんだよ。下手な言い逃ればかりしてふざけてばかり。
「それで母さんはドラコのことを知ってるの? 」
これだけはどうしても知っておきたい。でも実際答えが出てしまっている。
だってドラコを紹介した時に何も反応を示さなかった。
僕の恋人だと勘違いしてたぐらいだから。でも真実は違ったし言えなかった。
「おいカズ! そうじゃねえだろう?
どうしてお前はそっちの方に話を持って行く? 」
どうやらまだ今のところ母さんには気づかれてないらしい。
ドラコにしろ竜人にしろ。意外にも父さんって器用なのかな?
でもこれって悪知恵が働くって言うんだよな?
ドラコにしろ僕たち家族にしろこれからどうなる?
母さんはそこまで鈍感じゃないぞ。本当に気付かれてないのか?
「よし認めてやる! お前は俺の子だ! 俺は竜人だからお前も竜人になる。
それはソラもドラコもそうだ。隠していて済まなかった」
さすがの父さんでもふざけるのは無理か。若干話を逸らしてる気もするが。
「やっぱり…… 僕は普通の人間じゃないんだね? 」
幼い頃から変だなとは思っていたんだ。他の子に比べて体力が抜きに出ていた。
村一の力自慢のハイとライバルになり親友にもなった。
何もしてないのにこれだけの体力と腕力はおかしいとずっと思っていたんだ。
だからこそ元勇者の師匠のきつい修行にも耐えられた訳だ。だって竜人だから。
「カズ! お前はドラゴンの正当な血を引くミスタードラゴンズだ。
いくら最下位で底を這いつくばっていようとドラゴンには違いない。
お前だってドラコだってもう飛べるし竜人として覚醒する頃だ」
ミスタードラゴンズのカズ。それはちょっと前のドラゴンズだ。
今はもう少し迫力と不気味さが増している。
「さあカズよ今こそ飛び立つのだ! 」
まだ覚醒してないのに無茶を言う。どうやったら飛べるんだよ?
飛び方など知るものか。
「よしもう充分だ。この事は絶対母さんには内緒にしろ。俺が追い出されちまう」
酷過ぎるよ父さん。ずっと黙っていたなんて…… これから僕はどうしたらいい?
こうして広場で竜人ファミリーは再会を果たす。
「あの私…… 」
ドラコが何か言いたそう。
「ドラコもこんなに大きくなって。その翼はどうやら覚醒したらしいな。
よし父さんにもっと近くで見せてくれ」
そう言って無理やり抱きしめようとするが拒絶される。可哀想に娘に嫌われたな。
あれだけのことをすれば当然か。何を考えてるんだ?
「それでドラコが隣の家を紹介してくれるんだって。新しいアトリエだよ? 」
「ほお…… それはありがたい。感謝する。だが遠慮させてもらうぜ」
予想通り父さんは断った。まあ当然そうなるよね。でも理由を一応聞く。
「どうして父さん? せっかくドラコが僕たちのために探してくれたのに」
「さすがにまずいだろう? お隣さんがドラコ一家だと何かとやり難い」
父さんはドラコお勧めのアトリエが気に入らないようだ。
「だったらどうするの? もう一か月経つよ? 」
王子暗殺未遂によって一か月以内に村を出て行かなければならない。
その期限が迫ってる。我がまま言えるような立場ではない。早く何とかしないと。
「よしだったらあそこに行ってみるか。大体の目星をつけてたんだ」
どうやら父さんにも引っ越し先の当てがあるようだ。
ならもっと早く言ってよ。
「船で一日かけて大都市ベネットまで行くつもりだ。カズはどうする? 」
大都市ベネットとは話には聞いたことあるが実際行くのは初めて。
ベネットは芸術の街として有名で多くのアーティストが集まる。
そこにならたくさんのアトリエが存在するだろうと。
でもきっと高いんだろうな。それにアトリエ違いな気もするし。
「よし決まりだ! 明後日行くぞ! 」
「悪いけど私は遠慮するわ。二人で行ってきて」
ドラコは戻ると。だったら無理に誘わなくてもいいか。
こうして父さんを加えたいつものメンバーでベネットへ。
「なあ俺たち暇じゃないんだけど…… それに何で親父さんがついて来るの? 」
いつも師匠と慕っているハイが嫌がるとはこれは相当だぞ。
だったら代わりにドラコを連れて来いと。しかしそう言うシステムでもないから。
ドラコは僕たち親子が竜人であることを知らせる大事な役割があった。
「大丈夫。旅の途中できれいな女の子を仲間に加えるつもりだから。
一人なんて言わない。二人は仲間にするからさ」
もちろん適当だが自信満々に言えばハイは文句言わずについて来るさ。
問題はゾークだよな。
「頼むよゾーク! 」
「でもママがカズ君はいいけどあの男とは付き合ってはいけませんだって」
あの男とはきっと父さんのこと。
もう村の疫病神として僕たち一家は嫌われ始めている。特に父さんが。
実際王子にタンサン毒水を飲ませたのは父さんだからな。
「でもゾーク…… 」
無理に誘ってはいけない。ただ父さんが脅す可能性もある。
助手は多い方がいいといつも通り強引に。
「なあゾーク。俺はお前を信じてるぜ! 」
すぐに父さんがゾークを説得に掛かる。
「でも僕…… 」
「分かったよ。今回の旅でお前の夢を一つ叶えてやる。それで文句ないだろ? 」
いい加減で適当な父さん。合成師の頃の格好いい父さんに戻ってくれよ。
「夢…… 本当に? 」
「ああ…… 詳しいことは村を出てからだ」
うわ…… これは絶対嘘だ。ゾークは騙されるぞ。まあいいか。放っておこう。
意外と考えてるかもしれないし。
「よし皆決心したな? だったらさっそく出発! 」
準備を整えて新たなアトリエ探しを始める。
もう時間がない。恐らくこれが最後のチャンス。
今度こそまともなアトリエを探し出すぞ。
続く




