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ドラコを信じて

ドラコは妖精だからこんな高さなど苦にしない。

一飛びで安全な元の場所へ。

しかし僕たちはただの人間だから取り残されるだけ。

だから手を繋いでドラコと…… 二人が限界で僕が残ることに。

ハイとゾークを送り届け僕の番になり一安心したのも束の間。

巨大グモが目を覚ます。


タイムアップでゲームオーバーの最悪な展開。

シャア!

まるで猫のように威嚇をする巨大グモ。

これは叫びなのかただ糸を出す時の音なのか? 擦れただけにも聞こえる。

「大丈夫カズ君? 」

ゾークは自分が助かったものだから余裕。心配してないでロープ垂らせっての。

確かハイの七つ道具にあったはずだ。しかしまったくその様子はない。

叫べば相手を刺激してしまう。もう何でこうなるんだよ?

こんな時に役に立たないんだから。でも仕方ないか。


「まずいよカズ君。クモが怒ってるよ」

それは見れば。怒りが最高潮に達したのは分かる。僕だって似たようなもの。

「何年ぶりの獲物だと思ってるんだとさ」

ハイがいい加減なことを抜かす。

「うん。そんな感じ。でもそれよりも何か変だとも言ってる。怖い…… 

ああ! 僕まで何だか怖くなっちゃった」

いい加減な通訳だ。ただゾークが動物と話してるのを知ってる。

でもクモに通じるのか? しかもただのクモじゃない。

巨大グモのモンスターだ。動物とは訳が違う。


「本当かよゾーク? ははは! 」

余裕のハイ。笑い声まで漏れる始末。緊張感のない奴め。

それは自分が関係ないから楽だろうけどこっちは二人の囮で犠牲になったんだぞ?

少しは緊張して真面目にやってくれよ。今すぐロープを垂らせっての。

だが願っても無理のよう。

「信じてよ。このクモさんお腹が空いて限界だって」

あれ? いつも適当に言ってると思ったがどうやらそうでもなさそうだ。

だったら交渉してくれ。僕のために話し合ってくれ。

ただ食わない選択肢はないだろう。それにゾークは言葉は分かっても話せない。

機能的にはそれでも充分凄いが特殊能力としてはもう少し優れたものでないと。

とにかく今はこの化け物をどうにかするしかない。


「囮になって! 私を信じて! 」

そんな風に言うドラコ。正気か? 冗談じゃない。

今日洞窟で会ったばかりに得体の知れない女の子を信じろと言うのか?

うーん。嫌に決まってる。囮ならドラコの方が適任だろう?

だがもうそれしか二人が助かる道はなさそうだ。相手ももう本気のようだし。

口から何か吐き出したぞ。まさか糸? それで僕たちは動けなくする気か?

うーん。ここは仕方ない。大人しくドラコに従うとしよう。


「こっちだ! 受けて立つ! 」

やはりどうであれ格好つけたいよな。もうリーダーは僕でいい。

逃げてばかりで口だけの奴らより僕の方が断然相応しい。

もうこんなんことはこれっきりにしてもらいたい。

ドラコが動き出したタイミングでタンサン毒水を撒く。

威嚇だ。これ以上近づくなと相手に警告を発する。

そうしなければ距離を縮められて食われちまうから。


うぎゃああ!

どうやら意外にも臆病な性格らしい。ここはもっと強く出るか。

その時だった。足を滑らせて勢いよく転倒。

危うく奴の目の前に餌として飛び出すところだった。

タンサン毒水はその名の通りタンサンであり水。滑りやすい。

ただの水よりも滑りやすくなっている。

そのことに気づかずにボケをかましてしまった。情けなくて恥ずかしい。


うぎゃあああ!

「カズ君。大笑いしてる今の内に逃げて! 」

ゾークによると巨大グモは笑いが止まらいらしい。

これはラッキー! でも思いっきり恥ずかしいな。

これでは勇者と言うよりただの村人だ。情けなさ過ぎる。


「ほら手を! 」

ドラコに抱きかかえられてどうにか元の階へ。

底の抜けた箇所を避けどうにか皆の元へ無事生還。


「うおおお! カズ! 」

勢いに任せて抱き着いて来るハイ。重いし暑苦しい。

「ハイ。お前楽しんでいただろう? 」

「ははは! 大親友のピンチにそんな訳ないだろう? 

ずっと祈ってたさ。なあゾーク? 」

「そうそう。カズ君は考え過ぎなんだって。それに結果脱出できた訳だしさ」

「そう…… 何にしても今回はゾークのお陰だよ。ありがとうリーダー! 」

一応はリーダーはゾークのままで。意外にも役に立ったのでそのまま。


「もう私には? 」

ドラコは羽を閉じ元の姿に戻る。

てっきり妖精は嘘だと思っていたがどうやらそうでもなさそうだ。

ただ羽と言うより翼な気もする。果たしてドラコの正体は?

かわいらしい妖精ではなく凶暴な何か……


「ありがとうドラコ。でもこれはドラコの…… 」

余計なことは言わない方がいいか。怪しげな誘いを受けて洞窟の奥に入った。

彼女があの巨大グモと繋がってるとは思えないが何かあってもおかしくない。

「つまらないことはどうでもいい。それよりあの化け物はどうする? 」

始末する気満々のハイ。どうするつもりだ?

それよりも獲物を失い狂ってここまで襲って来ないよな?

奴が待ち伏せしてるのは間抜けな冒険者が引っ掛かるから。

でも獲物が逃げたら執念で追いかけてきても全然おかしくない。

だからここも危ない。すぐに立ち去った方がいいのでは?


「待って! 私に任せて! 」

「どうする? 」

「そのままで…… 処分に困ったらここに落とそう」

ドラコはとんでもないことを言い出した。あのクモの化け物を放置するのか?

それではここを通る冒険者が危険な目に遭うことになる。

「大丈夫。ここは封印しましょう。それですべてうまく行く」

どうやらドラコには考えがあるらしい。

まあいいか。壁で塞いで看板もあれば大丈夫だろう。それで進む奴はそれまで。

僕がいくら反対しても二人が賛成ならひっくり返る。


こうして後のことはドラコに任せて先に進むことに。

さあ奥に何があるのかな?

そう言えば僕たちはどうしてこんな危険な洞窟に入ったんだろう?

いまいち覚えてない。うーん。まあいいか。


                 続く

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