新たな旅
ウッド爺とフォレーセスと別れて数時間後ようやく故郷の村が見えてきた。
久し振りの帰郷に胸が一杯。何だか緊張している。
振り返ればいろいろあった。
アトリエ探しで知り合ったウッド爺に唆され人喰いオオカミが逃げた跡形村へ。
人喰いオオカミを退治し今ようやく故郷に戻って来れた。
もう一度体験したいかと言えばそんなことはない。
ハラハラドキドキの冒険だったけどもう二度とあんな思いしたくない。
「カズ! 」
大声で呼ばれてはさすがに恥ずかしい。もう子供じゃないんだけどな。
僕たちが行方不明になってどれくらい経ったんだろう?
人喰いオオカミ騒動があったんだから大丈夫だよとは言えないよな。
両親以外にもハイとゾークの家族が。それから心配したたくさんの人たちが。
今回の騒動でもしかしたら僕たちはこの村から出て行かずに済むかもしれない。
それでも工房と言うかアトリエを奪われていては意味がないんだけどね。
「カズ! 心配したんだからね! 」
「母さん…… ただいま! 」
間があったのはもしかしたら怒られるかもと思ったから。
でも両親とも心配はするが怒ってる感じはしない。
「それでカズはどこに行って来たの? 」
「二人と隣の村の子たちとで冒険に出掛けたんだ」
ウッド爺に従う訳ではないが余計なこと言って心配させないようにしようと思う。
隣ではハイが下を向いて懸命に堪えている。
どうやら相当ネチネチ言われたんだろうな。僕と違って思いっきり叱られている。
笑ってはいけないがらしくない。いつもの堂々とした格好いいハイはどこ行った?
本気では思ってないが頼りにはしている。
そんなハイは今度は抱きしめられる。
恥ずかしさからすぐやめるように言うが聞いてない。
ゾークの方は悲惨だ。兄弟はいるが親がいない。
可哀想におじさんが駆け付けたが冷たい。
仕方ないよな。ゾークの両親は子供を置いてどこかに行ってしまったから。
まだゾークが小さい頃だったからな。それが今もずっと。
弟たちも兄に負けず劣らず暗い感じだ。
それがゾークたちにとっては普通なのかもしれないが。
ゾークの両親から先月手紙が届いた。
それによると元気していると。おじさんのところでもう少し我慢してと無責任。
兄であるゾークは肩の狭い思いをしてるそう。弟たちはそうでもないよう。
ゾークがおかしな収集癖があるのは恐らくその影響があるんだろうな。
可哀想に。僕にはどうしてあげることもできない。
「ほら帰るよカズ! 」
「うん…… そうだ。新しいアトリエを見つけた」
ウッド博士からもらった地図と詳細が入ったメモを渡す。
これが今回の真の目的。
それからもう一つ。レアアイテムだ。
オオカミの皮と妖精のポエムに村長がお礼にとくれた耳鳥の卵。
ゾークは耳鳥の卵の殻のところだけでいいと捨てようとしたので代わりに僕が。
レアアイテムを使って新たな回復アイテム作りに。
翌日。さっそくレアアイテムを使っての合成。
「おおやってるなお前たち。関心関心」
いつも通りいい加減な父さん。しかしここはアトリエではない。
青空の中合成を繰り返す。作れるかな?
さっそく合成に取り掛かる。
もう目標のドラゴンアイランドまで一年もないぞ。なるべく急がなければ。
こうして回復系アイテムを少しずつ増やしていく。
スーパードープの完成。
スーパードープは反則級の回復アイテム。
ただ使い過ぎると体に異変が起きるので一日一回が限度。
それ以上やればスーパードープの力が体を巡り内側から筋肉と細胞を壊していく。
長期になれば依存症まで引き起こす超危険なアイテム。
使用上の注意を読んで用量を守るのがいいだろう。
スーパードープは合成師なら誰でも作れるが危険が伴うので合成師一級の資格が。
それよりも危険度が低いものについては合成師二級あるいは三級が取り扱える。
もちろん僕は三級さえないが母さんたちの指導を受け小さい頃から実験していた。
本当はよくないが父さんがついてるので問題ない。何かあれば近くに母さんも。
母さんは一級の資格を持ってるが父さんはどうやら三級しか持ってないらしい。
自分にはいまいちよく分からない。ただ合成師は基本だけができても意味がない。
僕みたいに幼い頃から合成に興味を示しアイテムを探す研究熱心の方が向いてる。
一週間後。
無断で出掛けて危ない目に遭ったものだから外出禁止令が出た。
だけど父さんがいい加減だから次の日にはお使いさせた。もう意味が分からない。
そう言えばハイも似たようなこと言ってたっけ。問題はゾーク。
どこをほっつき歩いていたとおじさんから追及を受け黙ってしまうゾーク。
仕方ないよな。少しは反省したほうがいい。
「カズ君どうだった? 」
相変わらずおかしな収集と研究を続けてるゾーク。
どうやらスーパードープを完成させたか気になったらしい。
「試してみる? たぶん完成したと思うよ」
ゾークが望むなら実験台にしてもいいと思っている。
「カズ君がやってみてよ。僕はちょっと難しいかな」
「だったらハイにでも任せるか」
ほぼ何も考えてないハイだがさすが不気味な茶色の液体だから遠慮するそう。
これでは実験できなくなってしまう。せっかく作ったのに。
失敗作じゃないんだけどな。
でもこれを元に安全で回復力のある回復系アイテムを作ればいいのさ。
ドラゴンアイランドに行くまでにできるだけたくさん作れたら。
いや作らなければ。
「よしさっそくアトリエ探しに行こう! 」
ハイはどうやらまだ懲りてない。あれだけのことがあったから諦めていたが。
「おいおいハイ…… 」
「いいのかよカズ? 新たなアトリエ探さなくてよ」
青空の元で作るのも悪くないが天候と気温管理が重要だからたくさんは無理。
一日でも早く新たなアトリエを探す必要がある。
もし見つからなければ最悪合成師をやめるかもしれない。
「とりあえず行くだけ行ってみようぜ」
ハイは持ち前の明るさといい加減さで引っ張ろうとする。
これはリーダーに最適。僕はただついて行けばいいさ。無理はしないに限る。
「僕はいいけどゾークが…… 」
「大丈夫。行こう! 」
「よし行くぞ! 」
「おう! 」
こうして新たなアトリエ旅が始まる。
続く




