人喰いオオカミの最期【後編】
ハアハア
ハアハア
何かおかしい。まるで誘導されているかのよう。
奴らなぜ手を出してこない? まさか……
ついに追い詰められた。猟銃を持った男たちが構える。
これではさすがに逃げ切れない。絶体絶命のピンチ。
「もういいだろう? 見逃してくれよ! 俺はもうこの村を諦めたんだぜ? 」
懇願するオオカミは的になるかのように動きを止める。
だからって許されるはずもなく撃ての合図でハチの巣に。
「当たったか? 」
真っ暗とは言え追い込まれたところには光が。その光に導かれたらしい。
オオカミ狩りは大成功。人喰いオオカミはあっけなくやられてしまう。
こうして人喰いオオカミと村人たちの壮絶な死闘は決着。
村人たちの団結の勝利で幕を閉じた。
バンバンと何度も発射される弾を見て恐怖で縮こまるハイ。
どうやら思った以上の迫力だったよう。
「へへへ…… 大したことはない」
そんな風にもう自分が震えているのを忘れてるらしい。
「ははは! どうだった? お前たち? 」
辛くも勝利を得たオオカミ討伐部隊。ただの爺さんなのに格好よく見える不思議。
「つい興奮して! 」
ハイは相変わらず嘘ばっかり。怖くて仕方ないくせに。強情だな。
「僕はもう吐きそう…… 」
「ははは! 子供には見せていいものじゃねえな。後処理はどうする? 」
「それはこっちに任せてくれ! 」
人喰いオオカミを追いかけここまでやって来たウッド爺が責任を持って弔うと。
村長の許可を得てウッド爺は正式に任せられる。
出口の土砂を取り除き三日後にようやくこの村を離れる。
「ふう…… 長い旅だったな」
相変わらず格好つけるハンター気取りのハイ。
一番の攻撃型も人喰いオオカミの前では手も足も出ない情けなさ。
「それでは皆さん。またお会いしましょう」
別れの言葉を残して久しぶりの我が家を目指す。
レベルアップ!
カズたちはレベルが3になった。
強さと速さがそれぞれ2上がった。
判断力が3上がった。
カズの背中に透明な翼が現れた。
洞窟を抜けて隣村へ。
ウッド爺とフォレーセスとはここでお別れ。
戦利品を手に満足そうにしているウッド爺は上機嫌。
この後とんでもない目に遭うとも知らずに。
「フォレーセス! フォレーセス! 」
どこからか声が。娘を心配して血相を変えた女性が駆けて来る。
ウッド爺を追いかけ姿を消したフォレーセスを心配し村中で探し回ったそう。
僕たちとウッド爺の五人で旅をしたところまで判明したとか。
「お母さん…… 」
「もう心配したんだから! こんな人たちと遊んではいけません! 」
洞窟の出口が塞がって戻れなかった。それはあの人喰いオオカミが仕組んだこと。
跡形村での話をすれば卒倒しかねないとウッド爺が適当な話をでっち上げる。
「もう大丈夫だって! 」
「大丈夫なものですか! この変態爺さんの毒牙に掛かったかと思ったよ」
とんでもないことを。でも確かに初めはそんな感じだったよな。
結局ただのしつこい人喰いオオカミハンターだった。
「酷いな。信用してくださいよ」
ウッド爺の願いを聞き入れられることはなかった。
日頃の行いのせいか見た目によるものか疑いが晴れることはない。
「近寄らないで! 娘をたぶらかしたくせに! 」
可哀想に誤解されたまま。でも僕たちは関係ない。後はウッド爺次第。
もはや頑張ってと応援するぐらいしかできない。
「カズ…… 」
どうも寂しそうなフォレーセス。別れるのが辛いんだろうな。
「フォレーセス。よかったな。じゃあまた」
挨拶を済ませてあっさり帰ろうするが許してくれない。
「それはちょっと酷くない? メインヒロインだよ? 」
勝手に決めつける強引なフォレーセス。気持ちは痛いほど。でも僕にどうしろと?
「ごめんごめん」
握手を交わす。これくらいでいいだろう。もちろん凄く感謝している。
きっとフォレーセスがいなかったら僕たちオオカミにやられていただろう。
当然感謝以上の気持ちはある。でもこれ以上は僕には何も思いつかない。
するとふざけるなとビンタをしようとする。これは相当怒ってるな。
どうしたんだろう? 笑顔のないフォレーセスはただ怖いだけの女の子だ。
でもそのまま言ったら怒られるからな。どうしよう?
「ほら早く! 」
どうやら別れのキスを望んでるよう。
何だよ。早く言えばいいのに。ハイに任せる。
ギャン!
ハイは可哀想にビンタではなくグーで殴られる。しかもダブルパンチ。
親子揃ってハイを叩く異常ぶり。仕方ないか。代わりにゾークを……
ダメだ。震えが止まらないよと泣き出した。どうなってるんだよ。
ここは儂に任せろとウッド爺が。これで収まる?
ハイ以上の地獄を見せられるウッド爺。何発喰らったことか。
どうやら呪われてるのだろう。これはお祓いしないとな。
仕方なくお別れのキスをすることに。最初からやれよと怒りの炎が見える。
ほら落ち着いて。なぜそこまでこだわる? 確かに二人はいい仲だったけどさ。
僕はただのお世話係だったはず。ハイの格好よさに気づかないとは。
ゾークの異常性に…… これはもう気づいてるか。
最後に頬に軽く別れのキス。やったことないので相当緊張する。
だから素直に緊張すると言うと満足顔。しかし頬ではなく唇にしろと要求する。
そんなんヒロインいないと思うけどな。
お別れのキス。
「またねフォレーセス。ドラゴン探しの旅にはぜひ一緒に! 」
「うん。ありがとうカズ」
こうしてどうにか別れた。
「おっと忘れていた。この地図のところがお前たちが探してるアトリエだ。
落ち着いたら訪ねるといい」
ウッド爺が約束通りアトリエを紹介。地図通りならさほど遠くないな。
ではそろそろ僕たちも戻りますか
こうして僕たちは故郷の村に戻る。
続く




