表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
24/74

お婆さん逃走! 新たなお婆さん登場

跡形村。

人喰いオオカミが迷い込んだ家は迷惑隣人トラブルお婆さん。

一筋縄では行かない。長期戦の予感。


「あんた見かけない顔だが村の者じゃないだろう?

私もね昔はよそ者よそ者って散々言われ続けたんだから。

頑張んなよ。気を落とすんじゃないよ! 」

「ありがとうございます。それでは届けましたのでこここにサインと許諾書を」

「ああハイハイ。サインね。うん? 許諾書って何だい? 」

聞いたことないと笑うがそれはそうだろう。本物じゃないからな。


「新たな取り組みです。どうぞこれに目を通してください」

そう言って紙を渡す。

「ふむふむ。何だか十枚以上あるがこれに全部名前を書けばいいのかい? 」

メガネを取ってよく見えるように紙を上下に動かす。

それでも一つも理解したようには思えない。

「はい。罪悪感を少しでも軽減するためだとか本部が取って来いと」

「それは大変だ。はい書いたよ。それで悪いんだけどあんたも食べてくれるかい?

この量ではさすがに一人じゃ食べきれないよ」

当然量は多め。残すぐらいでないと言う謎の思い込みで残飯が増えるばかり。

思い込みと言えばこの俺がただの配達員だと。笑えるぜ。

まさかそんなはずないだろう? 俺様はただの人喰いオオカミ。


「しかしお客様…… 」

「頼むよ。食べておくれよ。食べきれないと言ってるだろう」

「申し訳ありませんがこれは規則ですから」

「本当に頼むよ。残すのがもったいないんだよ。ねえ! 」

必死な願いについ心が動きそうになる。でもこんなものを食べてる暇はない。

俺が喰らいつきたいのは…… 俺が心から欲してるのはお前の肉だ!

いくら婆さんでも人間の肉は格別。これは喰ったら他は喰えないさ。

もう限界。ここで正直に白状して互いに楽になろう。ではそろそろと。


「ねえ頼むよ」

「ですが私…… 俺はお前が喰いたいんだ! うごおおお! 」

ついに本性が出てしまう。これでいい。もう演技をする必要はない。

後は震えて立ちすくむ婆さんを美味しく頂けばいいのさ。

「ぎゃあああ! お助け! 」

「逃がすか! 婆さんには悪いが食わせてもらうぜ! あははは! 」

「あああ! 」

「おい何を…… 」

無我夢中の婆さんは俺を突き飛ばして外へ逃亡。

何て馬鹿力。年の割には元気で若々しくていい。これは美味しく頂けるかな。


「待て! お前は俺様に喰われる運命なんだ! いい加減諦めろ! 」

「お助け! 」 

ふふふ…… それで逃げた気でいるとはおめでたい。

では追いかけるとしますか。どうせ明日には村の者を食い尽くすんだ。

派手に騒いでももうどうにもならない。この村は全滅さ。

しかし想定外のことが起きるのがこの世界の面白いところ。

それを楽しめるかが素敵なウルフライフを送るコツ。


ドンドン

ドンドン

ノック音が響き渡る。

ドアを叩くだと? なぜだ? 逃げた者が戻ってくるはずもない。

何と言っても相手は人喰いオオカミ。振り返らずに一目散に逃げるのが生きる道。

それでも逃げ切れずに喰われるのが運命。


どうする? 怪しげな訪問者? だが婆さんが人を連れ戻って来たとも思えない。

ではただの間抜けか? いやそうとも限らない。村中で警戒されているはず。

気を抜かずに慎重に獲物を捕らえるんだ。


「おい何かあったのかい? 何だかいい匂いがするね」

そっと外を覗くと赤い頭巾をかぶったお婆さんの姿が。

どうやら隣のお婆さんだ。二人はいつもいがみ合って仲が悪いはず。

心配するのは少しおかしいがお隣の異常に反応するのは何ら不思議はない。

では少し誘ってみますか。どうせ次はこの婆さん。手間が省けたと言うもの。


「悪いね。今調子が悪くて寝てるんだよ。開いてるから勝手に入っておいで」

あの婆さんが開けて行ったから当然鍵は掛かってない。

もちろん夜とは言え寝る時までは基本鍵を掛けないのがこの村での慣習。

だから深夜でも侵入し放題。人間の格好していれば怪しまれず中へ。

今回はウルーバーイーツをかたったので許可を取ったが本来はいらない。


隣人の婆さんは遠慮なく中へ。少しは遠慮したらしいがお見舞いがてらだと。

でかい声を張り上げる。どうやらまだこの家主は誰にも伝えられてないな。

それならば大ごとになる前に急いで済まそう。

「ああんどうしたんだい? 布団など被って」

「ゴホゴホ……  」

「声が野太くなった気がするよ。お互い年を取りたくないものだね」

「それで何の用? この通り風邪をこじらせて。あんまり近寄らない方がいい」

一応は警告した。今回は許諾書を取らない。罪悪感よりも手っ取り早さを優先。


「それでこれは何だい? 」

まだ温かいウルーバーイーツの品々。匂いが堪らない。

「孫たちが届けてくれたんだろうさ。ゴホゴホ…… 」

「大丈夫かい? それにしてもあんたに孫っていたかい? 」

「隣の村にね。言ってなかった? 」

「聞いてないよ。それよりさっきから声がおかしいけどどうしたんだい? 」

どうやら不審に思われてるらしいな。だがそれでもまだ疑ってまではいない。

「それはね…… 私が風邪を引いたからだよ! 」

「確かに。それは悪かった」

そんな風に言いながら勝手にチキンをかぶりついてる。

婆さんだと言うのに物凄い食欲だ。本当に人間か? 

オオカミの俺が言うことでもないか。


「好きなだけ食べて行きな。それで私にも一つ」

確か婆さんたちは長年いがみ合ってきたはず。なぜこんなに親しい?

夜中に訪問する仲でもないだろう? 

叫び声がしたとしても問題なければすぐに帰ればいいのに。

どうもよく分からない。だが余計なことは言わない方がいい。それが隣人関係。


おっと…… 婆さんにばっかり食べさせては悪いよな。

俺もそろそろ晩餐の準備と行きますか。

何と言っても家主の婆さんがいつ村人を連れ戻って来るかも分からないんだから。

早いところケリをつけるのがいい。


                  続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ