人喰いオオカミ対老赤ずきんちゃん
赤ずきんを被ってお洒落をしているお婆さん。
彼女こそこの村の名物お婆さんコンビの一人。
お隣さんで仲が悪く顔を合わせればいつも喧嘩ばかり。
それがなぜか…… おかしいな。この情報は古いのか?
お婆さんばかり食べてるのも変なので一個取って来てもらうことに。
「これでいいかい? 」
そう言って手にしたのは野菜。別にいいが肉食わせろよ。俺が持ってきたんだぞ。
もし食わしていたら襲わなかったかもしれないのに残念だよ。
もちろん保証はできないがそれでも気持ちの問題だ。
驚かさずにスマートに一瞬で楽にしてやることもできた。
「うーん。どうもいつもと違うんだよね。その耳はどうしたんだい? 」
イチイチ気になる老いた赤ずきん。
「耳? ああ大きい方がよく聞こえるんだよ。あんたもそうだろう? 」
これはきっと同意してくれるはずだ。お婆さんにとって耳は大切。
小さいより大きい方が聞こえがいいに決まってる。人にもよるがそんなものさ。
「そうかい。人の考えってのは幾通りもあるから。理解してあげなきゃね」
どうもこの婆さんと合わないな。老人って普通そうじゃないのか?
「細かいことはいいだろう? 」
これで誤魔化す。うまいやり方だ。
「そう言えばそのずきんはどうした? 防災ずきんか何かか?
それとも防犯ずきん? だったら役に立たないぞそれ…… 」
つい余計な一言で正体がバレそうになる。
まあ最終的にはバレていいんだが今はまずい。
「お洒落だからと洞窟守が買ってくれたんだ。あんたも一緒だったろ? 」
「へえ…… 最近は物忘れが酷くて…… 」
おかしいな。どうして二人は一緒に買い物を? 洞窟守が何か関係あるのか?
「そうそうあのジョンって信用ならないね。どうも私らを観察してるみたいでさ。
昔はあんな子じゃなかったのにねえ。あんたもそう思うだろう? 」
チキンをうまそうにかぶりついて興奮して人の悪口。
言われる方の身にもなってやれよな。捕食者のセリフじゃないが。
ジョンってどこかで? うわ…… ジョンって俺が変身した奴のことじゃないか。
オオカミが来たぞと騒ぎ立てて疑われないようにしてたのに完全にバレてる。
やはり老人の目は侮れない。長年の勘と言うか年の功だろう。嫌になるぜ。
「何だと! 」
つい声を荒げてしまう。まずい。冷静さを失って興奮しちまった。
「何を寝ぼけてるのかね。まるで獣のようだよ。それにしても今の声……
それにあんたどうしてそんなにお鼻が長いの? 」
今度は全然関係ないことぶち込んで来た。これはもう放っておけない。次が限界。
ここが山場ってところだろう。どう切り抜けるか? お互いの運に懸かっている。
「それは我が村がゾウの一族の末裔だからさ」
適当に返す。もう合ってるかどうか関係ない。返せるだけ返すのが俺のやり方さ。
「どうしてそんなにお口が大きいの? 」
言ったな? 俺が一番気に掛けてることを。許されることじゃない。
仕方ない。もうこれまでさ。正直に告白するか。
「それはね…… あんたを喰うためだよ! ガオー! 」
我慢できずについに正体を晒す。醜い人喰いオオカミの姿となる。
これで変身には少なくても一時間は掛かる。
「はいはい。それでそれで…… 」
ダメだ。ちっとも気づいてない。泣き喚く姿は別にいい。ここは一気に。
ついに人喰いオオカミが姿を現すクレイジーな展開。
果たしてお婆さんの運命は?
その頃。
「おい! 聞こえるか? 」
「ダメです! 」
どうやら人喰いオオカミ騒動は間もなく解決する模様。
洞窟守がすべてを懸けて自分たちを犠牲にしてでもオオカミ確保に動きだした。
「あそこにオオカミが。今仲間が必死になって戦っています。突入しましょう」
村長に進言。これ以上の猶予はないと懸命な説得。果たして聞き入れてくれるか?
「どうするパオ? 」
「俺はこいつらを信じるぜ。でもあいつが犯人とは今でも信じられない」
「よし分かった。勇気と度胸のある者はついて来るがいい! 」
そう言って村長はお婆さんの家に向かう。
僕たちは迷ったがハイと僕とでウッド爺について行くことに。
ただし絶対に騒がないことと興奮させないことを約束させられた。
ふふふ…… そんな甘く見ないでよね。もう子供じゃないのさ。
これさえ解決してオオカミが捕まればすべて丸く収まる。
そしてウッド爺にアトリエを紹介してもらうんだ。絶対に失敗しないぞ。
「おいお前たち急がんか! 」
どうやら余裕がないウッド爺。焦ってるのか? それではオオカミにやられるぞ。
こっちにはハイがいる。それに助っ人が。
猟銃を抱えたハンターが配置に着く。
これで表に逃げたところでハチの巣に。
指揮は村長に。ナンバーツーの村長代理のパオは少々震えているよう。
突入に緊張してるらしい。
「では突入班は一気に中へ! 」
と言ってもその構成員は宿屋の夫婦と客。それから僅かな村人だけ。
もう人はほとんどいない。村人だけなら十人ぐらいしかいないのでは。
そんな中でも皆勢いよく入って行く。何て勇敢なのだろう?
「お婆さん大丈夫ですか? 」
ここの家主。今隣の婆さんとオオカミが中にいると。
では僕たちも邪魔しないように一番最後に入るとしよう。
こうして人喰いオオカミと人間の壮絶な戦いは終わりを迎えようとしている。
中に入るとオオカミがお婆さんに襲い掛かろうと牙を剝いていた。
「うぎゃああ! 」
ダメだ。オオカミの叫び声かお婆さんの断末魔か区別つかない。
「何だお前たちは? 邪魔をするな! 」
オオカミは慌てて人質に取る。
「彼女は人間ではない。だから食っても腹の足しにはならんぞ」
洞窟守が衝撃の事実を語る。
これはどう言うことだろう? 信じられない。
信じられないと言えばこのオオカミがあのジョンだと言うこと。
ジョンは村にオオカミが来ると知らせていた嘘つき男のはず。
そんなジョンの振りをしていたとはとても信じられない。
どうしてそんなことをしたのだろう?
「うるさい嘘を吐くな! 喰ってやる! 」
そう言って忠告を無視してお婆さんを喰おうとするがうまく行かない。
不思議そうに辺りを見回すオオカミ。
一体何が起きた? お婆さんの正体とは?
続く




