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追い詰められた洞窟守

洞窟を出てようやく安心したのか洞窟守はほっと一息。

よし今は何も気にせずウッド爺のところへ戻ろう。

余計なことをすれば仲間が危険だし僕の予想が外れたら終わるからな。

「あの…… あなたは人間ではないでしょう? 」

うわ…… 抑えよう抑えようとしたのに体が勝手に。

どうなってるんだこれは? 自分で自分が信じられないよ。

あえて危険な展開に持って行こうとしている。 

絶対に大人たちがいる時の方が安全なのに。

調子に乗って勢いで言ってしまった。


「そうなのかカズ? 」

ただの洞窟案内人だと思ってるハイ。そんなんだからすぐに騙されるんだ。

でも今は気にする時じゃない。何も考えずに笑って村に帰るのがいい。

でもそうは行かないんだろうな。だから僕がどうにかしないと。

「ああどう見ても普通の人間じゃない。そうですよね?

特にあなたはスライムを切り刻まれるところを見ないようにしていた。

僕も嫌だったから皆の様子を見てたんだ」

いきなり突きつけられて洞窟守も何も言えずにいる。

あの時のスライムの無残な姿がどうしても目に焼き付いている。

それだけでなく皆楽しそうに…… フォレーセスまで。


「ははは…… 大人をからかっちゃいけない。すると君も人間じゃないのかい?」

「いや人間です! 」

あれ…… なぜか自信がない。そんな当然のことを今まで考えもしなかった。

だからって人間だとは言えない。もちろんこれは洞窟守の苦し紛れの言いがかり。

でもどこかおかしいと思っている。ただ今は関係ないさ。

「だったら俺だって人間さ」

「子供と大人の違いがある。大体洞窟守ならよく見るでしょう? 」

「見過ぎた結果とも考えられるだろう? 」

どうも僕たちが子供だと思って言い逃れできると本気で考えてるらしい。

どこまで舐めてるのか? しかし僕たちはそんな甘くないぞ。

感情的になってるハイとフォレーセス。冷静でも決して止めようとしないゾーク。


「悪いなおっさん! 消えてもらうぜ! 」

そう言ってハイは金属バットを向ける。

おいおい能力は洞窟守の方が格段に上。いくら四人掛かりでも倒せるはずがない。

ここは冷静に。一旦落ち着いて考えるべきだ。


「ダメだってハイ。話し合わなくちゃ」

「ゴチャゴチャうるさい! 俺はこうしたいんだからよ」

ハイが暴走。これはまずいな。

「待ってくれ! 違うんだ! 違う! 」

そう何度も繰り返す洞窟守。それは僕だって気づいていた。

だからハイの前に立って動きを止める。

「おい邪魔するなよカズ! 奴は人喰いオオカミなんだろう? 」

単純な奴だから苦労する。そんなこと誰も言ってないのに。

やっぱりきちんと話しておくんだった。仕方ない。ここは正体を暴くとするか。


「あなたが人間ではない。そうですね? 」

「ああそうだよ。ああ人間じゃないさ! 」

怒ったかな? さっきまで仲間だった者から裏切り者扱いでは無理もないか。

でもそれは結局隠しごとをしていたから悪いのであって正直に話してくれればな。

今更遅いけど。やはりやり方を間違えたか? 興奮してたから仕方ないさ。

「そしてもちろん人喰いオオカミでもない。違いますか? 」

「ああそうだよ。人間じゃ…… あれ何でそこまで知ってるの? 」

驚いた様子。教えてないと言うがもちろん当然だろう。

何も人喰いオオカミだとまでは言ってない。そこになぜ気づかないんだろう?


「あなたはたぶんこの洞窟で大人しく暮らしていた何かだ? 」

何かだと言ったがそれでは断定したことにはならない。

だからってたまたま来た僕が知るはずもない。そもそも村人でもないし。

ここはきちんと彼の方から正体を教えてもらわないと。


「俺は洞窟に住み着いた精霊だよ。人間とも仲良くしたくて変身している。

しかしこの変身術を悪用された。仲間が人喰いオオカミに騙され教えてしまった」

突然の告白に全員が驚いている。急展開だから僕だって実際は追いついてない。

問題はその人喰いオオカミが誰に変身してるかだ。

「そうなの? この人が人喰いオオカミじゃないのか? 」

ハイが疑いの目を向ける。それは僕だって最初はそう思ったさ。

でも違うものは違う。今洞窟守を疑ってはいけない。


「あなたはどう思うの? 」

フォレーセスが冷静になる。

「言った通り。だからすぐにも村に戻って人喰いオオカミを探し出そう」

それがすべて。急いでウッド爺の元へ戻ろうとするが……

「分かりました。私の疑いが晴れることはないでしょう。

しかし一つ仲間を紹介しましょうね」

どうもいつもよりも言葉が丁寧な気がする。

これが本来の洞窟守。いや妖精か?


「教えてよ。誰が仲間だって言うの? 」

ゾークは震えるがそれでも興味を示す。

オオカミかそうでないかは生き残る上では重要。非情に大事になって来る。

「いいから教えろって! 前置きはこの際なしにしてくれよ。

俺たちはこれでも忙しいんだからよ」

話の邪魔をするから…… 自分のせいだとは思わないんだろうな。


「ではお教えします。一人目は…… 」

「冗談だろう? だって普通に村で生活してるじゃないか。おかしくないか? 」

「それでそれでもう一人は? 」

「当然そこにもう一人いるさ」

どうも思っていたのと違った。どうして変装などしてるのか聞きたい。

もう暗くなって来た。急いで村に戻るとしよう。

どうやら今晩で決着がつきそう。そんな予感がする。


「ちょっと待ってよ! これはフンだ…… 」

わーいとゾークが大喜び。今急げと命令したのにまだおかしなものを探してるよ。

もう本当にどうしようもない。ゾークには呆れる。

でもこれが価値のあるアイテムなら応援するが。どうだろう?

「もう最低! 」

フォレーセスも呆れる。いつものことだから。慣れないとそう誤解されかねない。

こうして暗くなる前に村に戻る。


「お帰り。どうだった? 」

ウッド爺も色々と聞き回っていたらしい。

それでも疑わしい者を具体的には見つけられなかったと悔しそう。

でも大丈夫。もう随分絞られた。後は正体を現すかにかかっている。


コソコソ

コソコソ

夜遅く。日付が変更した頃に人喰いオオカミが動き出した。

ついに最終決着か?


                 続く

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