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ハイとゾーク

通称・カズ君のアトリエ。

「おい遊びに来たぜ! 」

王子訪問で大慌てなところに近所のクソガキが…… と言ってもいつもの仲間。

「今日は来るなって言っただろう! 」

朝早くに王子が来ることを伝えに奴らの家にもお邪魔した。

あれほど来るなと言ったのに…… 逆に呼び寄せたみたい。


王子か…… はしゃいでいるだろうから早めに来たいんだろうな。

だけど王子が急いでは笑われますと説得されゆっくりお越しになるさ。

昼前に着けばマシな方でって言うか絶対あり得ない。

どうせ三時過ぎにやって来て日暮れに戻るだろうから。

三時間も相手すればいい。そのためにはこいつらは本来必要なんだけど。

特にハイだけど悪ガキで品がないから王子のお相手には相応しくない。

奴らはとんでもないトラブルメイカー。近づけてはいけない。

アトリエの品をふざけてぶっ壊すし失くすしで怒られるのはいつも僕だ。

だから来てもらいたくなった。そもそもこいつらの親は理解してるのか?

どうしようもないトラブルメイカーで王子の前に出せば責められるのは奴らの親。

絶対に庇ってやらない。だって自分のことで手一杯だから。

王子もそうだがこいつらも何するか分からない。


「なあ聞いてるかカズ? 」

話を理解せずにいつも通りに来やがって。アトリエは遊び場じゃない。無視だ。

「そうだよカズ君」

ダメだ。無視してもずっと続けるだけだった。とんでもない奴ら。

「もう分かったよ。だったら王子の相手はお前らが責任持ってしろよ」

父さんの真似をしてみる。

「やった! 」

二人で大喜びしやがってあいつはただの金持ちの息子じゃないぞ。

この国の王子だ。王子の気分次第で僕たちは追放されてしまう。

そんなの絶対に嫌。ただ他の奴らよりも余裕なのは工房はどこにでも開けるから。

ただ安全で静かな合成場所があればいいだけさ。


工房って言ってるのも父さんだけ。母さんたちは研究所とかラボとか呼んでいる。

僕たちはオシャレにアトリエと呼んでいる。

やっぱり工房よりもアトリエの方が格好いいよな。

それで皆からはカズ君のアトリエで通っている。

その自慢のアトリエが取り壊されると父さんは言う。

でもどうせ嘘だとマローンおばさんは決めつける。

占いならそうだけど何かあったのかもしれないから心配だ。

僕のアトリエを取り壊されたくも追い出されたくもない。


安全と秘密厳守もあって地下にアトリエはある。

自分の家に作ることも考えたが実験で失敗して爆発したら家もそのまま吹っ飛ぶ。

ここは使われなくなった廃屋をきれいにしてアトリエにと母さんが。


「おい王子はまだかよ? 」

生意気なことを言ってるのがハイだ。

すぐ興奮するからハイだって父さんが命名した。

僕も気に入ってからずっとハイ。皆からもハイと呼ばれるようになった。

「だから昼過ぎに来る予定。でもきっと三時頃にならないとやってこないさ」

王子はゆっくり民の前に姿を現す。余裕を見せるのが礼儀。

つまらないことに拘っているだけだと父さんは笑っていた。


「王子ってどんな人? 」

ゾークはいつもハイの影に隠れて怯えている。

「ゾークだって見たことぐらいあるだろう? 祭りの時とか」

年に一度の祭りに国王一家が村にやって来る。

一目見ようと人だかりができる。それでは子供は小さくて見えやしない。

大体前には大人がいて入っていけない。

そもそも危ないから子供は近づいてはダメ。

だから僕だってその時は王子らしき人物がいたな程度。

「見えないし。でも今回はここに来るんでしょう? 」

よく見ればいつもよりおしゃれしているゾーク。

「何だよ。ダサいな」

ふざけてバカにするハイ。

「ああ王子とは友だちだからな」

胸を張る。これは凄い自慢になるもんな。

実際は迷惑してるだけだけど王子と仲良しなのはプラスさ。


「僕たちはカズ君? 」

ゾークは心配そう。

「気にするなって。お前たちだって近所のクソガキだよ」

「それはお前だろうがこのクソガキ! 」

ハイが生意気を言う。いつも失敗ばかりして人のせいにするんだから。

「何だと? いつも後片付けしてるだろうが! 」

「それはお前のアトリエだから当然だろう! 」

「遊び場にしてるくせによく言うよ」

「それはいいから今日本当に来るんだよね」

ゾークってばまだ信じてない。僕だって父さんから聞いたから信じてないけどさ。

疑ってばかりいたらよくない。

何度か王子が訪問したが僕たちは大体外で。僕がいても奴らがいることは珍しい。


「そうだ。例の奴持ってきたぞ」

二人は合成師見習いの助手をやってもらっている。

父さんが面倒だからと押し付けたのを奴らに押し付ける。

でもそれをすると母さんに怒られるのでまだ押し付けたのは数えられる程度。

だから二人には材料を集めてもらっている。

ここには山も川も湖もある。豊富なアイテムの素が転がっている。

この素材を生かして合成を行う。だからアイテム集めは重要になって来る。

二人がアイテムを集めてきて僕が調合する。


父さんがアトリエの端っこで合成を認めてくれた。

それが一年前。そこで僕は合成師見習いとしてアトリエで実験する毎日。

その助手が奴ら。面白そうと付き合ってはくれたがロクなのを拾ってこない。

父さんは笑ってるが遊びなら外でと母さんに言われてしまう。

そうならないためにも急いできちんとしたアイテムを作る。


まずは回復薬から。

きちんと作れるようになってアイテムが充実したら冒険していいと許しが出る。

目標がないとすぐに飽きると父さんが三つの候補地から選ぶようにと。

僕としてはやっぱりドラゴンの国に行きたいな。

ただそれは壮大な冒険になるだろう。


                続く

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