閉ざされた洞窟
跡形村・洞窟付近。
ざわざわと騒がしく洞窟の前には人集りが。
何だかおかしいぞ。一体何が起きた? 嫌な予感がする。
「どうしたんです? 」
「おおジョンとそっちは見ない顔だね。あんたらも逃げる気だったのかい? 」
皆考えてることは同じ。いかにして早く人喰いオオカミの狩場から逃れるか。
それしかないよな。当たり前のこと。
彼らは生まれ育った村を捨てる覚悟らしい。
「あの…… 一体何があったんですか? 」
ジョンが恐る恐る聞く。嫌だな。耳を塞ぎたい気分。
「それが洞窟が塞がってるんだ」
村外れに一人で暮らす男が詳しく教えてくれた。
大騒ぎになって皆が脱出を決断した時に真っ先に洞窟に駆け込んだのが彼。
実は彼こそ洞窟守。異変を察知していち早く村人に知らせる役割がある。
何と言ってもここは隣村に繋がる道。この洞窟を通ってしか村の外には出れない。
一応他にも行き方はあるみたいだけど。安全にと言ったらここしかないそう。
僕たちも昨日人喰いオオカミを追いかけてここを通った。
「洞窟が? どう言うことです? 」
「ほら…… 入口は問題ないんだ。しかし出口が土で塞がってしまっている。
だから諦めて引き返して来たのさ。こんなことは村始まって以来だ」
そんな風に震えるが未だ原因がよく分からず洞窟前では混乱が収まりそうにない。
「だからこんなに? 」
「そうだ。出口が塞がってるからもう入るなと言ってある。
オオカミの罠かもしれないからな。いやきっとそうに違いないさ」
こうして脱出は不可能となった。とりあえず戻ることに。
緊急の対策会議を提案したウッド爺。ジョンも専門家の一人として。
ついでに僕たちも特別に参加させてもらう。
「なあ他に脱出法はないのか? 」
ハイも限界らしい。震えている。もうアトリエがどうとか言ってる時ではない。
急いでここを脱出する方法を考えなくちゃ。
「それが。湖をぐるっと回ったところに隣村に繋がる登山道があるんですが……」
ジョンはあまり乗り気じゃない。
地元の人でも迷う危険な道で上りよりも下りが危険だとされている。
そこに行くぐらいならここで大人しく待つ方がいいと考えてる村人は多い。
「よしもう一日待とう。それでも悪化するならその登山道から脱出しよう」
村長の提案に反対する者はいない。
こうして取り除く作業が続く中で僕たちは間もなく不安な夜を迎えることに。
宿屋。
嫌な予感…… 土の塊は昨日見た時にはどこにもなかった。
すると奴が昨夜の内に行動を起こしたと考えるのが自然だろう。
だとすれば奴は僕たちを村に閉じ込めて全滅させるに違いない。
とにかく集団行動を心掛けるようにとウッド爺が。
一人で動くと人喰いオオカミの格好の餌食となるだろうと。ここは固まる。
ただ襲われた行方不明の三人は集団で固まっていた時に狙われた。
もし人喰いオオカミが本気ならどう策を練ろうと僕たちは捕食されるだけ。
その恐怖と戦いながら時が流れるのをただじっと待つ。
もう何も起こらないと信じるしかない。
「とんだ旅になったな? 」
ハイが格好つけるが足が震えてるぞ。大丈夫。夜にならなければ凶暴化しない。
それに恐らく奴は村人に変装してるはずだ。そして隙を突いて夜に襲うはず。
だったら団結するのが一番。しかし狙いは何だろう?
村の全滅だとしてもただ食いたいだけなら一気に襲い掛かればいいのに。
そうしないのは何らかの意図がある。でもそれが何だか分からない。
今は一刻も早くここを脱出すること。それがすべて。一致団結するしかない。
震えてお菓子が喉を通らない。どうしよう?
「ほらカズ。こぼしてるよ」
ずっと引っ付いて離れないフォレーセスは意外にも落ち着いている。まさかね……
「済まない…… 俺が悪かった! 」
素直に謝ろうとするウッド爺。気持ちは分かるけど今更謝られても……
もっと前にいくらでも逃げられたのに。捕まえることしか頭になかったから。
僕たちの心配などほぼしてなかったじゃないか。
昨日オオカミに遭遇した時に引き返せばこんな事態にはなってない。
ウッド爺の判断ミスだけどハイもゾークも面白そうだと賛成してたからな。
やっぱり僕が正しかった。でもそれを蒸し返しても意味がない。
「巻き込んでしまった! すべてはこのウッド爺の責任だ! 」
後悔してるらしい。随分と性格が変わった気がする。閉ざされて本性が現れたか?
ただ悪い人でないのは確か。人喰いオオカにばかり気を取られ安全を疎かにした。
「だったら早くアトリエを紹介してくれよ爺さん」
図々しくもハイが。今はそんなこと言ってる時じゃない。
「ああ…… 人喰いオオカミを捕まえたらと思ったがもういい。
ここを無事に脱出したらお前たちの望みを叶えてやる。
ただし相手に断られても責任は持てない。いや多分問題ないさ。念のためだ」
「あの…… 」
ゾークが何か言いたそうにしてる。まさか気持ち悪くなったか?
だったら早く吐いて来た方がいいぞ。余計に悪化するだけ。
「大丈夫だって! 」
僕だって震えてるのだから当然か。ゾークにはさすがにまだきついよな。
ウッド爺のせいにしてるけどアトリエ探しに無理やり誘ったのは僕だからな。
忘れてるだろうが連れて来たのは結局は僕だしここは皆無事に送り届けなければ。
それが僕に託された使命。もう合成アイテムがどうとか言ってられない。
言ってられないがあればもちろん全部もらうさ。
どうやらゾークはウッド爺がいなくなってから話したいそう。
「どうやら考えがあるらしい。よしもう一度洞窟の方を見てくる」
「でも一人では危ないよ」
「気にするな。奴に会えたら一発お見舞いしてやる」
村人から借りた猟銃を手に外へ。
遠慮したウッド爺。おかしいな。完全に人が変わったみたいだ。
ゾークを落ち着かせてから誰もいないことを確認して話してもらう。
恐らく仲間以外誰にも聞かれたくないことなのだろう。ウッド爺さえも。
続く




