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最初の犠牲者

跡形村・湖周辺。

村で知り合ったジョンに奴の隠れていそうな場所を案内してもらう。


ガサガサ

ガサガサ

湖の周りにある生い茂った草むらから何かが動いた気がした。

まさか…… ついに人喰いオオカミが現れた? 

ただ仮にそうだとしても村に逃げ込んでない以上問題ない。

ここは跡形村の外れの湖周辺。だから人がいるとしたら旅行者ぐらいなもの。

村が全滅する事態にはならないだろうさ。だからって余裕ってことはないが。

とは言え退治するのが僕たちの役目。それが人喰いオオカミ捜索隊だろう。

でもどうやって? 猟銃も銀の弾丸もない。


「かかって来い! 」

ハイもゾークも立ち向かう気満々。冷静なウッド爺だけは後退した。

ジョンは表情一つ変えずに見守っている。

僕はと言うとフォレーセスが腕を絡めるから動きが取れない。

これではもしもの時には僕たち二人が格好の餌食になってしまう。

だから離れろと言うが絡みついたまま。


「姿を現せ! 」

本当はそのまま隠れていて欲しいが言ったからには立ち向かうしかない。

皆の力を合わせれば人喰いオオカミの一匹や二匹どうにかなるだろうさ。

ただの願望だけどね。


ガサガサ

ガサガサ

まずい。挑発に乗って姿を見せる気だ? 無理しないで自分のペースでいい。

飛べない鳥が姿を見せる。鳥なのに飛べないとは不思議。

「通称どぶどぶ鳥。この辺りでは食用だ」

そんな風にジョンが捕まえようとするがギーギーと威嚇する。

ハイがふざけてイーイー言う。何をやってるんだ?

「ハイ! ダメだってば! 」

「ははは! 悪い悪い」


「ジョン何かあったのか? 血相を変えてどうした? 」

「何でも…… 」

ウッド爺が異変に気づく。

頼れる案内役のジョンの様子がおかしかったが何でもないらしい。

それならいいんだけど…… 何か違和感があるなら早く教えてよね。


ギーギーとかわいくないやかましい鳴き声。

何かを訴えてるようにも見えるが無視。鳥に知り合いはいないからな。

うん卵? 近くには蛇が。そう言うことか!

どうやらどぶどぶ鳥の卵が狙われたよう。

しかも人間にまでとなればパニックにもなるさ。


「見失ったようですね。村に戻りましょう」

ジョンの判断に大人しく従う。

まずいぞ。これは最悪な状況。人喰いオオカミを見失った。

もしかしたら忍び寄って村を襲撃するかもしれない。

ジョンは再び村人の安全を守るために避難を呼びかけるそう。

僕たちも手伝うと言うが一人で充分だと説得されてしまう。

彼には彼の役目があるそう。僕たちは大人しく宿で一泊することにした。


「悪いね。宿は満杯なんだよ。どうしようか…… 」

宿屋が混んでることを理由に宿泊を拒否。こんなこと許されるのか?

「何とかお願いします! 子供たちがいるんです」

ウッド爺が頭を下げるが無理なものは無理だと突っぱねられる。

とりあえずなぜ満杯なのか理由を聞く。

「宿がパンパン。ははは! 盛況盛況! 何でだろう? 」

宿屋の主人はいい加減だ。どう考えても人喰いオオカミのせいだろう?

オオカミ狩りによその村から集まって来たに違いない。


ハンターが人喰いオオカミを狙う。

これがどんな意味を持つのか? あまり考えたくないな。

村人を餌に人喰いオオカミをおびき出そうとしている違いない。

急がないと村人に危害が加わる。


夜になり一匹の村人が姿を現す。こいつこそが人喰いオオカミだ。

村人を逃そうとするが全員いつの間にか眠らされてしまう。

僕たちだけでどうにかするしかない。しかしどうすればいいんだ?

震える手で棒切れを構えるのがやっと。

口から洩れる得体のしれない何か。それが村人たちを眠らせる。

まるで毒霧のようで近づくのは難しい。

こうして犠牲者が。


夢だったらしいが人喰いオオカミが襲ったのは間違いない。


翌朝三名が行方不明となる。どうやら骨までボリボリと頂いたらしい。

おえ…… ダメだ。想像するだけで吐き気がする。

クソ! 一体どうしたらいいんだ? 

奴はきっと村人を食い尽くし村を一つ滅ぼすつもりだろう。


「恐れていたことが…… 本当に申し訳ない」

ジョンが頭を抱える。そして謝罪する。

しかし僕たちに謝られても。どうやら消えた三人は夜中に突然襲われたのだろう。

分かり切ったこと。もうどうにもならない。

全滅まで時間がない。


「あの…… 僕たちそろそろ帰ろうかな」

ウッド爺に誘われ洞窟を超え小さな村までやって来た。

でもまだ僕たちにはこんなヘビーな冒険をするには早過ぎる。

子供なんだから早く帰りなさい! 

母さんがいつも口を酸っぱく言ってること。

今回の件で僕もそのことを充分に実感できた。

残念だけどここで断念。故郷に戻ろうと思う。

それはハイもゾークも納得したところ。フォレーセスも反対はしない。

「そうだな。お前たちにはまだ早過ぎたようだな。さあ帰るぞ! 」

ウッド爺も帰る気満々。三名の消失が相当堪えたのだろう。


本当ならもっと前に帰ればいいのに……

人喰いオオカミ捜索隊を結成したからこんな目に遭う。

これもすべてウッド爺が悪い。全面的に悪い。

アトリエ紹介を条件に人喰いオオカミ狩りに参加させるんだから。

ターゲットを見誤ってこっちが狩られるところだったじゃないか。

跡形村に留まれば明日にでも餌食になるだろう。

だからここで帰るのは当然。勇気ある撤退をすることにする。

拘っていたウッド爺も目を覚ましたから後はアトリエを紹介してもらえばいい。


「分かりました。では参りましょう」

ジョンも見送りについて来てくれるらしい。これは心強い。

こうして帰ることとなった。


しかしそう簡単にはいかないのが旅の醍醐味。ちっとも嬉しくはないが。

洞窟の前では人だかりができている。なぜか誰も前に進もうとしない。

まさか人喰いオオカミを恐れているのか? 

しかし夜でもないならどうにかなるだろう。

何だか凄く凄く嫌な予感がする。


               続く

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