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跡形村

さっきからウッド爺はまるで犬のように嗅ぎ回っている。

放っておくとフォレーセスの匂いまで嗅ぎかねない勢い。

人間性も含めまだ完全には信頼できない。会ったばかりなのだから当然。


臭いが鮮明になったのか一直線に歩き出したウッド爺。

それにしてもこの爺さんどこまで信用したらいいんだ?

仮にこの臭いが人喰いオオカミのものだとして運よく狩れたとしよう。

それで新しい工房だかアトリエを本気で紹介してくれるだろうか?

すごく不安。子供だから適当にごまかせばいいと思ってそうで怖い。

あれだけはっきり紹介すると言われると逆に疑いたくなる。

ウッド爺はいまいち信用がないんだよな。

 

「気を付けろ! 近いぞ! 」

そう言って後ろからノロノロついて来る僕たちに注意喚起。

確かに…… このヒシヒシと伝わってくる殺気。間違いないだろう。

こうしてついに人喰いオオカミと遭遇。


「これがターゲット? どうするんだよウッド爺? 」

すべてはウッド爺の判断。行くと言えば行くし逃げろと言われれば逃げる。

新しく結成された人喰いオオカミ捜索隊は隊長のウッド爺が指揮を執る。

僕たちはただ言われた通りに動けばいい。余計な手出しはしない。

ただ奴だって本気だろうから何をしてくることか。

まずは落ち着いて冷静に対応するとしよう。

冷静さを失えばすぐにパニックになる。そうなれば相手の思う壺。

「本物の人喰いオオカミかどうか実験したい。誰か囮になってくれんか? 」

とんでもないこと言いだすイカレタ爺さん。生け捕りにでもするつもりか?

しかし誰も行きたがらない。当然だよな。


ううう…… 

唸り声を上げる人喰いオオカミ。これは絶体絶命の大ピンチ。

だが逃げようにも足が言うことを利かない。まずいぞ…… まずい!

なぜか鉛のように重い。もはやこれではただの足手まとい。格好の餌食だろう。

「どうしたんだよカズ! 早く逃げないと食われるぞ! 」

「分かってるってでも足が…… 」


「これでも喰らえ! 」

ゾークが汚物の入った袋。通称臭い袋を投げつける。

その中には多くの生き物のフンが混じっていてとてつもない悪臭になっている。

よくこんな臭いものを持ってられるよな。信じられない。

「ぎゃあああ! 」

臭い袋で鼻をやられた人喰いオオカミは何もせずに逃げて行った。

逃走人喰いオオカミは鍵を落として行った。


「おーい。大丈夫か? 」

一番に逃げたハイが戻って確認。

「ありがとうゾーク。お前のお陰で助かったよ」

「へへへ…… つい反射的に投げつけたんだ。あー怖かったな」

絶体絶命のピンチを乗り切る。


「ねえウッド爺。まさかあいつがそう? 」

「その通り! 急げ! 後を追うぞ! 」

何だかよく分からないが人喰いオオカミの後を追うことに。

でもこれって危なくないのか? 誘われている気がしてならない。


後を追いかけているといつの間にか洞窟の出口が見えた。

どうやら僕たちが泊まったこの洞窟は通り道だったようだ。

すると人喰いオオカミは外へ脱出した?

しかし目の前には村が広がっている。まさか紛れ込んだ?

これはとんでもなく危険な状況。何とかしなくてはいけない。

一刻も早くこのことを知らせないと。


人喰いオオカミを追って村へたどり着いた。

「ウッド爺。これからどうする? 」

「そうだな。急いで探し出さないと村の者が全滅だぞ」

恐ろしいことを。まさか本気なのか? 確かに追い詰めたのは僕たちだ。

そのせいで無関係な村人が全滅するなんて見てられない。

目をつぶって耳を塞ぎたい気分だ。それができるならな……

ただのアトリエ探しがウッド爺の誘いに乗ったせいでこんな最悪な事態になった。

僕たちの力ではもう手に負えないだろう?


「やめようよ皆…… 」

ゾークが震える。

「いいのか? オオカミのフンは高価だぞ。狼煙に使うんだ」

ウッド爺の悪魔の囁きに傾けてしまうゾーク。いけない! 聞いてはダメだ!

「俺は嫌だぜ! 」

ハイまでが恐れている。そう言えば奴の爺さんはマタギだったっけか?

「好きにしろ。ただし一人で帰ってもらうぞ。洞窟を抜けたって鬱蒼とした森だ。

いつどこで迷っても知らない。当然襲われることもあるだろうさ。

これはお前ら全員に言っている。大人しくついて来るんだな」

ウッド爺の隠されていた汚い大人の部分が見え始めてる。


「僕は…… アトリエさえ紹介してくれたらそれでいい」

「私はカズにただついて行く」

フォレーセスも諦めてる様子。

「よし決まったな? 村に入るぞ。慎重にな」

ウッド爺の後に続く。


オオカミに喰われて全滅した村があると聞いたことがある。

今僕たちが立ち向かわなければ目の前の村も同じ目に遭うだろう。

仕方ない。冒険には危険は付きもの。ここで逃げる訳にはいかない。

もし襲われそうになったらきっとウッド爺が何とかしてくれるさ。


跡形村。

「跡形だってよ。縁起悪いよね」

「それならパパが。近くに昔王朝がありその遺跡が遺ってるとか出土したとか。

でもほとんどが盗掘された後らしい。もう何年前の話。

ここに残ってる村人は発掘調査に来た者と家族。それから近くの鉱山の従事者。

後は流れて来た者。ウッド爺もよそから来たでしょう? 」

聞きにくいことをズバズバと。

気の強いところがあるよくお手伝いするいい子。それがフォレーセスの評判。

それに対してウッド爺はどことなく薄気味悪い。


「では改めて跡形村へ! 」

ウッド爺に先導され跡形村に入る。

入ったはいいが人っ子一人いない。ただ風がむなしく吹いているだけ。

どこが村なんだろう? 静か過ぎる。


「おいそこの子供! 危ないだろう? うろついてるんじゃない! 」

いきなり後ろから大声で怒鳴られれば驚くのが当然。

跡形村第一村人を発見。彼がオオカミの変装でないならの話だが。


                 続く

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