第32話:言葉の真意と、導き手の資質
【前書き:ルルの冒険記】
(新人e-Tuber・ルルの視点)
「皆さん、こんにちは! 今日はリザードマンの巣窟、『蛇蝎の如く忌み嫌うは蛇の夢』に挑戦します!」
最近の私は、自分でも怖いくらいにツいています。横穴ダンジョンの家電が驚くような高値で売れたり、前回のゴブリンダンジョンでは金貨を見つけたり。おかげで今日はお財布がホクホクです。
私はショップで、念願の「属性染まり」が良い弾丸を大量に買い込みました。
この弾丸、それ自体に属性があるわけではなく、銃のスロットにセットした魔法石の力を増幅して染まるという、ちょっとお高い代物なんです。
「よし、リザードマン対策はバッチリ!」
気合を入れていると、隣で魔法石を吟味していた黒魔法使いのお姉さんに声をかけられました。大人な雰囲気を纏った凄腕のオーラが漂っています。
「ねぇもし?新人さん?あまりみない顔ねぇ。あら、装備のセンスがいいのね。……ねえ、もしよかったら私とパーティを組まない? あなたのその銃、私の黒魔法と相性が良さそうなの…わたしは、ララ」
ええっ!? 黒魔法使いさんとコラボ配信!?
「はいっ! ぜひお願いします!」
私は期待に胸を膨らませ、新しい戦場へと駆け出しました。
【本編:引きこもり剣士のダンジョン経営】
(深夜・魔王の視点)
「……真昼、そんなにイライラするな。受付カウンターの温度がマイナスまで下がってるぞ」
俺は、不機嫌を隠そうともしない真昼に声をかけました。
軟弱な冒険者への苛立ちと、小鳥さんへのモヤモヤ。彼女の「正義感」が悪い方向へ働いています。
「だったらさ、ただ受付をするんじゃなくて『アドバイザー』をやってみたらどうだ?」
「アドバイザー……?」
「ただ追い返すんじゃなくて、君の戦術眼で足りない部分を指摘してやるんだ。例えば、慎重すぎて攻めきれないチームと、攻撃力はあるけど注意力散漫なチームをくっつけて、パーティの斡旋をしてやるのさ」
俺はデスクに資料を広げる
「くっつけるだけじゃなくて、なぜその組み合わせにしたのか、論理的に説明してやるんだ。一流のヒーラーだった君なら、それができるはずだろ?」
真昼は驚いたように目を見開きました。自分の「力」が、力のない冒険者たちを導くために使える。その事実に、彼女の瞳に少しだけ前向きな光が宿ったのを見て、俺はホッと胸を撫でおろしました。
【後書き:ナハトの戦況分析会】
(ナハト・メンバーの視点)
第4層、モンスター商店街。
警備の合間に、曙は隣に立つ魔王に、以前から抱いていた素朴な疑問をぶつけてみました。
「魔王さん……前から不思議だったんだが、なんであんたが骨だけなのに、笑ってるって分かるんだろうな?」
2メートルを超す漆黒の骸骨は、満足そうに「フフ」と意図を漏らしました。
『それはね、この第4層に特別な魔法がかかっているからだ』
『「真言伝達」。
声という振動ではなく、意図した「意味」そのものが相手に伝わる魔法だ。
だから皮肉も、喜びも、そのまま相手の心に届く。私が生前、一番大好きだった魔法だ』
「……意味がそのまま、か。いい魔法だな」
曙が感心したように頷くと、魔王はどこか懐かしむように遠くを見つめました。
『ええ。……実はね、私は1000年前、ある山奥でひっそりと魔物の研究をしていた魔女だったのだ。人付き合いが苦手で、封印されているうちに肉体が朽ちて、こんな姿になってしまいましたがね』
「えっ、魔王さん……女だったのか!?」
驚く曙(男)に対し、魔王(元・女)は楽しそうに笑っています。骨しかないはずの顔が、確かに優しく微笑んでいるのが「意味」として伝わってきました。




