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引きこもり元オレツエー剣士の無茶苦茶ダンジョン経営  作者: 姫宮代


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第23話:お嬢様精霊の加入と、申し訳なさすぎるスカウト


【前書き】

「あの、そこのお方。少しよろしいかしら?」

第5層の宴会場の隅。配信ドローンのカメラチェックをしていた私の前に、ふわりと緑色の光が舞い降りた。

背中に半透明の羽を生やした、手のひらサイズの可愛らしい少女。風の精霊、シルフだ。

「えっ、精霊さん? 私に何か用?」

「わたくし、今日ずっと貴女の『配信』というものを見ておりましたの。人間界には、あのような動く絵のテレビや、冷たくて美味しそうな飲み物(冷蔵庫の中身)が溢れているんですのね!」

シルフは目をキラキラと輝かせながら、私の顔の周りを飛び回る。

「わたくし、人間の世界を見てみたいですわ! 貴女の仲間にしていただけるなら、その飛んでいる機械ドローンよりも、ずっと素晴らしいアングルで空撮して差し上げますわよ!」

「いいよ!これからよろしく!!」

こうして、私のパーティ(?)に、好奇心旺盛でお嬢様気質の風の精霊が加わることになったのだった。


【本編】

第5層・煉獄の宴会場。

伝説級のモンスターたちが酒飲んで大騒ぎする中、俺はナハトの面々の前に立ち、気まずさのあまり視線を彷徨わせていた。

「あのさ……お前ら、もし良かったらなんだけど」

恐る恐る口を開くと、人類最強と名高い彼らがビクッと肩を揺らす。俺なんかに声をかけられて警戒しているのだろうか。申し訳ない。

「うちのダンジョンで受付とか用心棒のバイト、手伝ってくれないかな。こんな田舎だし、俺みたいな奴の下で働くなんて嫌かもしれないけど……給料は一般企業並みに出すし、ドロップする家電も使い放題にするから……」

引退したロートルからの、あまりに情けないお願い。

断られても仕方ないと思っていたが、真昼や丑三つたちは、まるで神の啓示でも受けたかのように目を見開き、プルプルと震えて固まってしまった。あれ、やっぱり条件が悪かったかな?

沈黙を破ったのは、俺が引退した後にパーティへ加入したという青年、黄昏だった。

「深夜さん……俺は、深夜さんに憧れてこのパーティに入ったんです」

「えっ? ああ、そうだったのか。なんかごめんな」

「俺たちが必死で獲ってきたダンジョンコアで、深夜さんの右腕は治った。だから……お願いです! その腕が『飾り』じゃないところを、俺たちに見せてくれませんか!」

黄昏の言葉に、俺は少し戸惑った。

俺は元々右利きで、右腕を失ってからの数年間、左手で生活していて左手でもかつての右手以上の剣が振れるようになった。

そして今、魔王のおかげで、元の右腕が完全な状態でくっついている。

今まで試したことはなかったが、右の手首を回してみると、現役時代と寸分違わぬ感覚が戻ってきているのがわかる。

「……二刀流、か。俺もちょっと気になってたんだよね」

「本当ですか!? じゃあ——」

「うん。ちょうどあそこで手ごたえな良さそうなのが酒飲んで暴れてるし、あいつらの『酒の肴』がてら、新スタイルのテストに付き合ってもらおうかな」

俺が宴会場の中央を見据えて剣の柄に手をかけると、黄昏は顔を真っ赤にして興奮し、他のメンバーはなぜか顔面を蒼白にさせていた。


【後書き】

深夜が新スタイルの準備のために少し離れた直後。

ダンジョンの片隅で、黄昏はパーティメンバー全員から壁際に追い詰められていた。

「……黄昏くん。あなた、あの自己肯定感の底が抜けてるバグモンスターを煽って、どうするつもりだったの?」

真昼が、光の消えた瞳で静かに問い詰める。

「そうよ。深夜さんは『ちょっと試す』なんて言ってるけど、もし慣れない二刀流で手加減を間違えて、剣圧が1ミリでもこっちに逸れてみなさい? 僕たち今頃、10%没収どころか『存在』そのものが消滅するわよ?」

丑三つが、冷や汗をかきながら笑顔で首元にロッドを押し当てる。

「い、いや! でも……!」

絶対絶命の状況下でも、黄昏の目はキラキラと輝き、頬は高揚で赤く染まっていた。

「見たいだろ!? 伝説だったあの人が、両手で剣を持ったらどうなるか……! 俺、そのためなら死んでも(10%没収されても)いい!」

「「「こいつ、ダメだ(手遅れだ)」」」

伝説の剣士を前にした圧倒的恐怖よりも、ファンとしての熱狂が勝ってしまった新入りを見て、真昼たちはこれから始まるであろう「災害」に備え、深く、深くため息をつくのだった。


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