第20話:シフト終わりのメデューサと、重力無視のショートカット
【前書き:ルルの冒険記】
(新人e-Tuber・ルルの視点)
さっきまで石化ビームを振りまいていたメデューサさんが、深夜さんに解放された直後。彼女は懐からスッとサングラスを取り出してかけると、「お疲れ様でしたー」と、どこか気だるげな声を漏らして壁の中にスッと吸い込まれていきました。
「……えっ。今、完全に『仕事終わりのバイトの人』のオーラだったよね?」
あまりに生々しい光景。ここは本当に、管理が行き届いた「職場」なんだな、と私は妙に納得してしまいました。
「……うん。これは配信に載せちゃダメなやつだ。夢が壊れるっていうか、リアリティが強すぎるもん……」
私はそっとドローンのレンズを布で拭いながら、このダンジョンの「裏側」の深淵に、一歩足を踏み入れてしまったことを実感するのでした。
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【本編:引きこもり剣士のダンジョン経営】
(深夜・魔王の視点)
「おっと、忘れてた。次の三階層目は『魔法・魔道具禁止』のエリアだったな」
深夜は、ふと思い出したように足を止めた。
「ルル、ちょっとその鞄を貸してくれ。動作を確認しておきたい」
ルルから受け取ったマジックバッグは、幸いにも「当たり」の個体だった。魔法が遮断されるエリアに入ると、中身が取り出せなくなり、容量も普通の鞄サイズに固定されるタイプだ。
「よし、中身をぶちまけるタイプじゃなくてよかった。最悪、入ってる家電が全部飛び出して一階層が埋まるところだったからな」
深夜は手近な板に『この先、魔道具無効。必要な荷物は出しておけ』と手早く立て札を書き、地面に突き刺した。
「さて、三階層目。ここは足場が悪くてモンスターを捌くのが面倒なんだが、今日は手持ちのアイテムが少ないからな。少し手荒な方法で行くぞ」
深夜は上空を旋回するワイバーンを完全に無視し、地面から生えている人食い植物の蔓を強引に引き抜いた。
「この蔓の先に、その辺の石を二つくくりつけて……よし、即席のボルボーラだ。これを振り回して、ワイバーンに引っかける」
深夜がぶん回した石付きの蔓が、空飛ぶワイバーンの脚に絡みつく。
「あとは、あそこに見える光ってるワープ罠めがけて、この蔓に掴まって飛べば……はい、ショートカット完了。ね、簡単だろ?」
深夜は風を切ってワープホールに消え、数秒後、何事もなかったかのように戻ってきた。
「さて。一度戻って、他の連中も……ルルのバッグに……いや、俺が運んだほうが早いか」
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【あとがき:ナハトの最高なギルド創世記】
(ナハト・真昼の視点)
「………………はぁ?」
私は、開いた口が塞がらなかった。今の、何?
人食い植物の蔓で、飛んでるワイバーンを釣って、その勢いでワープホールに飛び込む?
「深夜さん、さっき『手荒な方法』って言いましたよね!? それ、手荒どころか、物理法則への反逆ですよ!」
「……ワイバーンの飛行速度と、蔓の強度、そして遠心力を計算してワープ罠に自分を叩きつけるなんて……。あんなの、計算だけでできることじゃない。狂ってる……」
曙が頭を抱えて座り込んでいる。
「しかも、何が『戻って運ぶ』ですか! 私たちは荷物じゃないんですからね!」
でも、深夜さんの目には「効率的な物流」のルートしか見えていないようだった。このままだと、これから始まる「人間ロープウェイ」の恐怖に震えるしかなかった。




