第17話:家電量販店ルルと、深夜の爆速チュートリアル
【前書き:ルルの冒険記】
(新人e-Tuber・ルルの視点)
「……はぁ、はぁ。皆さん、見てください。私の背後の荷物……。もう弾薬より荷物の方が重いよー!」
ハンドガンの弾も残りわずか。なのに、私の手元には扇風機、ノートパソコン、冷蔵庫、そして最新のスマートフォンまで揃っています。
「ねえ、なんで!? なんでファンタジーなダンジョンのドロップ品が、最新の電子機器ばっかりなの!? おじさん(露天商)、これ絶対設定ミスってるって!」
視聴者からは『ルル、家電芸人に転向か?』『岐阜の山奥でこれだけの在庫抱えるの草』と、応援なんだか煽りなんだかわからないコメントが流れていきます。
そんな時、目の前に一つ、古びた宝箱が現れました。
「……またミミックかな。あ、でも、こいつ襲ってこない。当たり……?」
慎重に蓋を開けると、中には一見何の変哲もない小さな革袋が入っていました。
「鑑定してみるね。えーと……【マジックバッグ(極)】? 容量は……マンション150戸分!? お値段……いち、じゅう、ひゃく……一億円!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
一気に血の気が引きました。
「……これ、生きて帰れるかなぁ。絶対に誰にも教えないでね! 今すぐこれに全部家電を詰め込んで、速攻で逃げ帰るからー!」
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【本編:引きこもり剣士のダンジョン経営】
(深夜・魔王の視点)
「……よし。じゃあ、お手本がてら一階層だけ掃除してくる。黄昏、ちゃんと撮ってるか?」
再生した右腕の感覚を確かめながら、深夜は淡々とダンジョンへと足を踏み入れました。背後では黄昏が「はい! 瞬き一つせず撮影します!」と最新の魔導カメラを構えています。
「まず、キラービーの群れだ。こいつらは針を警戒するより、松明で炙るのが一番効率がいい。火に弱いからな。殲滅できるんで、余裕がある人はやりましょう」
深夜は手に持った松明を一振りし、一瞬で蜂の群れを灰に変えました。
「次、ガラスゴーレム。刃物で斬ると刃こぼれするから、ガラスとガラスの継ぎ目に剣の柄を叩きつけろ。こうだ。……な、砕けるだろ?」
「次は石灰岩ゴーレム。こいつは硬いけど脆い。まともに打ち合うと面倒だから、関節を極めて投げる。……ほら、地面に叩きつければ粉々だ」
淀みない動き。一切の無駄がありません。
「最後、アイアンゴーレム。こいつは力押しじゃ勝てないから、継ぎ目が脆くなるまで適当に回避しながら動かしてやる。……だいたい三分くらいで金属疲労が起きる。そこを……こうして、もぐ。簡単だろ? 隙間から手を入れてコアを引き抜けば終わりだ」
深夜は、もぎ取ったゴーレムの腕を放り出し、空いた穴からコアを掴み出しました。
「これでこの階層はクリアだ。……まあ、基本中の基本だな」
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【あとがき:ナハトの最高なギルド創世記】
(ナハト・真昼の視点)
「……ああ、あるあるよねー。深夜さんの戦い方って、いつもこうだったわ……」
私は懐かしさのあまり、深いため息をつきました。
キラービーを松明で炙り、ゴーレムを「投げて」壊し、アイアンゴーレムを「三分待ってから」解体する。
深夜さんにとっては「効率」の結果なんだろうけど、常人には不可能な精度でそれをやってのける姿は、まさに芸術そのものです。
「これ、配信したら凄いことになりますよ……!」
撮影を終えた黄昏が、興奮で鼻息を荒くしています。
「深夜さんの動きは、初心者にとっても無駄がなくて最高のお手本になります。視聴者も『これこそ求めていたレクチャー動画だ!』って納得するはずです!」
「……深夜さんは『基本』って言ってたけど、アイアンゴーレムの腕を素手でもぎ取るのは基本じゃないと思うんだけどな」
丑三つが苦笑いしながらツッコミを入れますが、そんなことは些細な問題でした。
かつての英雄が、管理人の傍らで見せる「初心者向け(?)動画」。
それが世界中の冒険者のバイブルになる日は、そう遠くありません。




