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引きこもり元剣士のダンジョン経営  作者: 姫宮代


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22/27

第12話「新人e-Tuberと、食い違う聖者像」

作者より

0話より前に-1〜-7話まで連載中です

もしよければそちらもご一読下さいm(_ _)m

【前書き:ルルの冒険記】

(新人e-Tuber・ルルの視点)


皆さん、初めまして!本日e-Tuberデビューしました、ルルです!

地元の高校を卒業して、ここ岐阜でトップストリーマーを目指して活動を開始しました。


今回見つけたのは、実家のすぐ裏山にオープンしたばかりの『深夜の裏山ダンジョン』。

看板には「初心者大歓迎(教育的指導付き)」って書いてあったし、入場料も安かったので「ラッキー!」と思って入ってみたんですが……。


見てください、この内装!壁がピカピカの石灰岩で、配信映えが凄いです!

あと驚いたのが、Wi-Fiがめちゃくちゃ速いこと。山奥なのにアンテナがバリ5ですよ。ドローンの映像も4Kで全然ラグがありません。これ、配信者へのホスピタリティ高すぎませんか?


ただ、ちょっと気になるのが天井に……えっと、あれ蜂の巣ですよね?

それも、見たことないくらい禍々しい色の。

「後戻り禁止」ってプレートが貼ってありますけど、これって……もしかして、演出ですよね……?


あ、奥から鏡みたいに透き通ったゴーレムが歩いてきました。

よし、初配信、いってきます!



【本編:引きこもり剣士のダンジョン経営】

(深夜・魔王の視点)


「……よし、魔王さん。インフラは整ったな」


深夜しんやは役所から届いた一通の封筒を、満足げにパチンと叩いた。

『地域活性化・新設ダンジョン通信環境整備補助金交付決定通知書』。

小難しい名前だが、要するに「山奥の通信環境を良くするなら金を出してやる」という行政からの慈悲だ。


「ナハトの連中が潜っていない以上、トトカルチョでの稼ぎは期待できないからな。今回は堅実に補助金で行こう」


深夜は支給された予算を握りしめ、かつて現役時代にパーティで使っていた機材と同ランクの「高性能配信用ドローン」「業務用無線ルーター」、そして各階層を網羅する光回線と電源ケーブルを爆買いした。


「ノームさん、頼めるか?」

深夜が声をかけると、土妖精ノームたちが手際よく壁の裏側に配線を通していく。

「電源はダンジョンコアから溢れる魔素を変換して使おう。これなら停電の心配もないし、エコだろ?」


「素晴らしい。冒険者が快適に地獄……もとい、試練の様子を配信できる。これこそが現代のホスピタリティですな、深夜殿」


魔王と深夜は、ピカピカに整備された通信環境に満足し、自分たちが設置した「殺人ミツバチ」や「超硬度ガラスゴーレム」が、いかに高画質で世界に中継されるかを想像してワクワクしていた。


「あ、魔王さん。一人目の客が来たぞ。高校生くらいの女の子だ」

「おお! 記念すべき第一号! 我らなりの『最高のおもてなし』で歓迎しましょうぞ!」

【あとがき:ナハトのギルド創世記】

(ナハト・小鳥の視点)


岐阜県・村営ダンジョン『鉱夫達の晩晩歌』のギルド会議室。

ナハトのリーダー・真昼まひるは、小鳥ことりという受付嬢がもたらした新情報に、これまでにない衝撃を受けていた。


「……裏山に、ダンジョンを創った? 深夜さんが?」


小鳥は紅茶を一口すすり、穏やかに頷く。

「ええ。亡くなられた叔父様から遺産として家を受け継がれたそうで、その裏山を開拓してダンジョン経営を始められたんです。つい先日も『役所の補助金でWi-Fiを飛ばすんだ』と、楽しそうに機材を選んでいらっしゃいましたよ」


「……家を受け継ぎ、地道に経営を……」

真昼の隣で、鉄壁の盾・あけぼのが考え込むように唸った。

「あの深夜さんが、剣を捨てて隠居するどころか、自ら迷宮を支配する側に回ったというのか。……いや、待て。小鳥さん、あんたが話しているのは本当に、あの『聖人』深夜さんなんだな?」


小鳥はふふっと笑い、決定的な証拠を口にする。


「間違いありませんよ。先日も初心者の指導をされていた際、左手の『手刀』一本で衝撃波を放ち、巨大なマッチョキノコを真っ二つに裂いておられましたから。あれを間近で見せられたら、誰だって彼がタダモノではないと分かります」


その瞬間、真昼と曙の脳裏に、かつて伝説の魔竜の鱗を、折れた剣の「柄」で叩き割ったあの男の背中が、鮮烈に蘇った。


「……手刀で、斬撃波」

真昼が震える声で呟く。

「そんなデタラメな芸当ができる人間、世界に一人しかいない。……深夜さんよ。間違いないわ」


「……叔父の遺産を守りながら、自らのダンジョンで後進を育成する……。なんと高潔で、慈悲深い計画なんだ」

曙も感極まったように拳を握る。


「……行きましょう。彼が作り上げた『聖域』へ。深夜さんがわざわざWi-Fiまで整備してまで、世界に伝えようとしている『真理』がそこにあるはずよ」


ナハトの面々は、小鳥が語る「少し経営に熱心すぎる深夜」の実態を、自分たちの「聖者フィルター」で強引に美化し、真理(深夜)が待つ裏山へと急ぐのだった。


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