七夕と花火
「じゃーな、ゆっこ。今日ありがとなー」
「うん、私の方こそ誘ってくれてありがとう。楽しかった」
「おやすみゆっこさん」
「おやすみなさい」
「今日の写真送るね」
「うん、ありがとう、ハル君」
「あ、俺、やっぱり玄関まで送ってくる、荷物多いし。木綿子ちゃんが嫌じゃなければだけど」
「うん、もちろん」
アパートの前まで送ってもらい、お土産を抱えて車から降りるとハル君が荷物持ちを買って出てくれた。
なぜ両手がふさがっているのかというと、このどでかい二枚貝のぬいぐるみのせいだった。
淡いグレーの貝はぱっと見お洒落に見えるが、貝殻の間からはファンシーな顔が覗いている。
手触りがすべすべでもちっとした大きなぬいぐるみは、クッション代わりに丁度いいらしい。
私が買ったんじゃない、帰り際になってから急になっちゃんが買ったものだ。
地べたに座ったら、クッションを抱いていたいらしく、けれどソファにあるのはクッションが二つ。
普通のクッションだから、抱きかかえるのには心地が少々悪いらしい。
最初に選ばれたのはつぶらな瞳のウミガメのぬいぐるみだったが、あまりにもインテリアから浮くそれは却下してもらった。
妥協して許したのは、薄い水色のイルカと淡いグレーの二枚貝で、二枚貝が選ばれたのだ。
この二枚貝のぬいぐるみを抱いて、明日会う侑斗と遊香ちゃんへのお土産と会社用に買ったお菓子の袋を両手にぶら下げたら足元は全く見えなかったからハル君の申し出は正直助かった。
なっちゃんはハル君が言い出すまで待ってくれただけのような気がした。
どこまで話が通っているのか分からないが、あからさまでないにしろ出会いを繋げてくれたようだ。
「今度……」
「ん?」
「ええと、来週、空いてたら出かけない?その、二人で」
「二人で」
「うん。……どうかな?」
玄関の扉の前で誘われて、なんだかこちらまで恥ずかしくなってしまった。
さらっと誘うわけじゃなくて、なんだか照れながら誘ってくるからだ。
こんなキラキラしたタイプど真ん中の男性から誘われて嬉しくないわけない。
それも、今日一日一緒にいて居心地はかなり良かった。
これが二人でだとどうだろうか、と思う気持ちもある。
私の答えは最初から決まっていた。
「うん。来週、楽しみにしてるね」
「良かった。連絡するね」
「うん。おやすみなさい」
「おやすみ」
ああも正直にほっとした顔をされると、こちらも期待してしまうではないか。
玄関の扉が閉まり、ふと、この感覚はとても久しいことに気が付く。
恋愛対象となる男女でデートする=ちょっと面倒だ、という気持ちにならないのだ。
や、誘ってくれた相手に大変失礼なことを言っているのは分かる。
誘われて頷いた時点で、行くと決めたのは自分だ。
けれど、自分が全く異性として惹かれていないのにオッケーした時、ちょっと面倒だなって思う気持ちというのは毎回嫌でも訪れるのだ。
それは、自分に今現在全くその気がないのに、相手の気を持たせるような行動しているから、だろう。
知らないと好きになれない、というのも分かる。
分かるけれど、でも。
最初が駄目なら駄目ってことはあっても、良いとなったことが私にはなかった。
自分が惹かれている相手から誘われたのは、本当に久しぶりで、なんだか学生時代の頃のような甘酸っぱい気持ちになってしまった。
「どうだった?」
「どうって……楽しかったよ?」
「付き合えそうかって聞いてんの」
「それはまだ分からないよ。でも、そうなれたら楽しいだろうな」
土曜日にハル君と一緒にデートをした次の日、なっちゃんが昼過ぎに押し掛けてきた。
開口一番に『どうだった?』と聞かれたら、昨日のハル君とのデートのことだと直ぐに分かった。
昨日は楽しかった。
天気が心配だったが、晴れ間のある薄曇りで、出歩くには丁度よかった。
七夕ということもあって浴衣姿だとサービスする場所が多く、お互い浴衣を着て出かけた。
昨日もとても綺麗に撮ってくれたし、場所が鎌倉なこともあって、風景にも撮りがいがあったようだ。
楽しそうにカメラを構える姿を見られて、その写真のどれもがとてもキラキラしていた。
キラキラした彼が撮る写真は、とてもキラキラしている。
彼の目に映るものは、同じでも違うのだと知ることが出来ると、なんだかとても興味深い。
写真が好きだと言っても、ハル君は、カメラの機材がどうとか、技術がどうとか、撮り方やカメラのウンチクを殆ど話さない。
それよりも写真におさめた対象物に焦点を当てて話をしてくれたから、それが楽しいと思えた要因の一つだろう。
気を遣っていると言うよりも、それが話したい内容だと思えたし、海ほたるに行った時もそうだったわけだから、あれが彼の素なはずだ。
「絶対ゆっこのタイプだと思うんだよ」
「うん、ど真ん中ね」
「良い奴だし」
「うん」
「ぶっちゃけ体の相性はすげー合うと思うんだよなー。小さいのが悩みなハルと狭いのが悩みなゆっことで」
「え?そういうアレで取り持ってくれたの?」
「それだけじゃないけどさー、大事じゃんそこ」
昼間からなんてことを言うんだと思ったが、たしかに大事なことだ。
大事なことだが。
「ねえ、ハル君それ知ってるの?最初から」
「うん」
「怜司君も?」
「あーうん……駄目だったか?」
「駄目じゃないけど、恥ずかしいよ」
「悪い。でも、何でって話になるだろ?俺とゆっこが遊んでも大丈夫な相手だけってわけじゃないってこと言いたかったし、見た目がドストライクって言うより良いと思って」
「確かにね」
「だろ?」
「ありがと」
満面の笑みで頷かれると、『ありがと』としか言えなくなる。
や、実際『ありがとう』で、『ご縁に感謝』なのだけれど。
でもそうか。
小さいことで悩んでるなら、確かに私と合うかもしれない。
「マジな話、整形まで考えて怜司に相談してたくらいだからさ」
「えー?そこまで?」
「それが理由で振られ続けたら同情もするじゃん。『いっそ、恋愛対象が男だったらよかったのかも』とかまで言い出すしさ。
あ、あと、ゆっこ自分の子供は欲しいと思ってないって言ってたじゃん?そこも良いと思ったから。あいつ種少ないっつってたからさ」
「ねえちょっと、それ私先知って良かったの?」
大きさより、デリケートな話だと思ってしまう。
「あ……あ゛ー悪い!聞かなかったことにして、一応本人が言うまで。付き合う前にちゃんと言うやつだと思うからっ!」
「もー」
両手を合わせて全力で謝れると、許してしまうし怒れないではないか。
しかたないな、という返事をしつつも、脳内は萌えている。
言葉にしないが、美味しい。
「でも、そっか。なら、最初から引け目感じずに考えられるかな」
身体の相性を知っていても、ハル君からの下心は見えなかった。
下心というか、なんていうか。
相手がどう見ているのかというのは伝わってくるものだ。
出来るって思う男というのは、態度じゃなくて、目に現れる。
押したらワンチャン行けるかもという考えだとよりあからさまだが、そうでなくても『どうやら体の相性はいいらしい』と聞いたらそっちに気を取られてそういう目で見られてもしかたないではないか。
けれども、そういう目にはならなかったし、話題にもならなかった。
酒を入れても、だ。
だとしたら、ますます好感が持てる。
「ハルの趣味聞いても引かなかったって聞いた」
「え?別に引くような趣味じゃないでしょ?」
「そう思えるのが凄いところだと思うぜ、俺は」
ハル君の趣味、というのは、写真だけじゃなかった。
綺麗なものが好き、という彼は、ヘアメイクの趣味もあった。
てっきり自分にするのかと思ったがそうじゃない。
人にするのが好きらしい。
だが、言うと引かれ、バレると引かれ、だからそれからは隠してきたと聞いた。
その相手はお姉さんを相手にしかしたことがないようだ。
男性が可愛く綺麗なメイク用品を持っていても良いではないか。
寧ろ自分に使っていても引きはしない。
TPO的に問題が無ければ良いと思うし、それが似合っていれば尚良しである。
ただ、ハル君の趣味というのは、自分の手で綺麗にする、というその過程と瞬間が好きらしい。
自分が着飾りたいわけじゃない、というのも聞いていた。
彼自体がキラキラしているので、メンズのメイクも似合いそうだがそこは特に興味がわかないようだ。
そこを仕事にしなかったのは度胸が足りなかった、と聞いたけれど、趣味だからこそ楽しんでいられる、とも言っていた。
「そうかな?来月の花火大会でヘアメイクしてくれるって」
「言ってたなー。あ、浴衣もうちで着ればいいよ……てか、ほんと会場行かなくて良かったのか?」
「うん、屋上なんて贅沢。楽しみ」
実は同日花火大会のチケットが当たったのだが、なっちゃんが誘ってくれた日とかぶったのだ。
かなり前から応募していた無料観覧チケットは、遊香ちゃんが貰ってくれた。
遊香ちゃん家族と母と侑斗たちと私、全員分の名前を書いて出したが、同行者が数名来られなくなっても入れるらしい。
因みに、侑斗はもちろんそっちには行かない。
怜司君に誘われて、こっちで一緒に参加するからだ。
こっちで、というのは、なっちゃんのマンションの屋上である。
毎年、なっちゃんのマンションの屋上で、花火大会を楽しむようだ。
地元の花火大会と、少し距離が離れているが幕張で上がる花火大会とが同日開催でどちらも綺麗に見えるのだとか。
もちろん貸切だ。
や、貸切というか、元々彼のものなのだけれども。
下と隣の住人も誘っているらしくて、どちらも老夫婦であり、穏やかで品のいい方々らしい。
どちらも、時々お惣菜をおすそ分けしてくれるし、旅行のお土産もくれるらしくて、そのお礼だそうだ。
とても贅沢過ぎる空間にお呼ばれしてしまった。
バーベキューは鉄板じゃなくてプレートらしいが、そのための野外延長コードまであるんだとか。
多分、鉄板は防災的にアウトだろう。
隣接しているのは、二階建てと三階建てのアパートと幼稚園だから迷惑行為にはならないようだ。
マンション全員に開放しないのは屋上の出入りがなっちゃんの住んでる部屋からしか上がれないからだろう。
外階段からは繋がっていなかった。
屋上はなっちゃんの持ち物だ。
揉めそうになったが、屋上の出入りができないのは予め規約に入っている。
そりゃそうだ、人様の家を解放しろと言っているのと同じだ、到底無理な話なのだ。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
「え……誰」
「私も自分で鏡見てそう思ったよ」
「化けたね」
「でしょ」
私の浴衣姿を見て開口一番失礼な言葉をたて続けに発したのは我が弟の侑斗だ。
でもまあ、自分でもそう思った。
今日の私は、かなりの美人さんだ。
そう、きっと他人から見ても美人さんと思えるだろう。
あまりの違いに、侑斗は本当に驚きの顔をしていた。
髪もメイクもハル君がしてくれたのだが、これがまた素晴らしい出来栄えだった。
そんなに濃くしていない、と言っていた。
だが、凹凸が少なくぼんやりした二重の極々平凡な顔が、まるでお人形さんみたいな顔になったのだ。
自然なハイライトとシャドウはパーツを細かく入れてくれているからかとても自然な仕上がりだし、二重を書き足すような薄茶のラインと、目尻を中心に増殖されたポイントのつけまつげで目がより大きくぱっちりになった。
だがこれも不自然でない程度に収まっている。
私は怖くてまつエクなどしたことがないが、やったら最後、ずっと続ける一択だと言っていたのが何となくわかった。
目元も頬も唇もピンク系で自然な艶がある。
平凡な特徴のあまりない顔でもメイクでこれだけ変わるのだ。
寧ろ、平凡だからこそ変化が激しいのかもしれない。
動画によくあがっている、『美人は作れる』のは、フィルターかけてるからだろうと思っていたが、そんなものかけずとも本当に作れるものらしい。
髪もコテで巻いてくれた後に、ヘアピンを使って綺麗にアップにしてくれた。
まるで美容院に行った後のような仕上がりだ。
趣味だと言っていたが、これはもう趣味の域を抜いている。
今日は待ちに待った花火大会の日で、なっちゃん家に集まっていた。
お天気には、恵まれた。
寧ろ恵まれすぎて、炎天下の中、四時過ぎからテーブルやイスを運び、会場の準備をするだけで皆汗だくになっていた。
とは言え、会場を準備したのは、怜司君となっちゃん、それからハル君と侑斗の四人で、私と一縁君はクーラーの効いている涼しいダイニングキッチンで食材の準備やおつまみを作っていたので楽をさせて貰っていた。
火も油も使ったが、贅沢な空間にいられたと思う。
プレート三台で肉や魚介、野菜を焼き、〆に焼きそばを作るというので、基本は魚介の下処理と野菜や肉を切って盛るだけだった。
きちんと作ったと言えるのは、大量の唐揚げくらいだ。
枝豆は冷凍だったから洗っただけですんでしまったし、冷やしキュウリは切って串にさして終了である。
デザートにはスイカで、これも切り分けただけで終わった。
因みにプレートの三つのうち二つは借り物で、お隣と下の階の方から一つずつ借りるらしい。
なっちゃんの家のもだが、ファミリーサイズの大きいものだというから、かなり本格的だ。
本格的なのはプレートだけじゃない。
会場そのものが本格的だった。
折り畳みの椅子もテーブルも人数分が揃っていたし、作りがしっかりしていた。
もっと簡易的なものかと思ったのに、グランピングのような設置で、ラグやハンモックも置かれていてお洒落な空間になっていたので本当に驚いた。
セッティング組は交互にシャワーを浴びたくらい一仕事だったが、おかげさまでとても素晴らしい空間だ。
「ハル君ありがとう。ほんとに魔法みたいだね」
「そこまで弄ってないけど、どういたしまして」
時刻は六時半。
花火の打ち上げまであと三十分あるが、お隣と下の階の方もいらして先にビールで乾杯だ。
皆浴衣姿だ。
お隣も下の階の方もとても上品に着こなしていて、私もこんな綺麗な年の取り方をしたい、と思ってしまった。
少しお話ししたが、体型キープの秘訣は、朝はご夫人同士で、夜は旦那さんとそれぞれウォーキングをしていることと、普段は和食中心の食生活を心がけていることだと聞いた。
そして、二、三ヶ月に一度は旅行に行き、贅沢をするという。
とっても羨ましい生活だが、心も懐事情も豊かなのだろう。
なんというか、仕草や喋り方などからしてそれらがにじみ出ていた。
この辺では珍しいような方々だが、旦那さんのお一人は大手の元役員で、もうお一人は会社を経営していた方らしい。
なるほど、だからこんなにも、上品なのか。
滲み出るその品の良さは、真似できないものがある。
「ゆっこー、唐揚げめっちゃ美味い!」
「そう?なら良かった」
「ハルも写真ばっか撮ってないで、ちゃんと食って飲め。ほら」
「もー強引だなあ」
強引だ、なんて言いながらもなっちゃんの手から素直に受け取るハル君は嬉しそうだし楽しそうだ。
「ビール足んねーかも」
「うちにたくさん冷えてあるから足りなかったらあとで持ってこよう」
「え?マジで?すげー嬉しい!」
「いやあ、ははは」
うん、なっちゃんはお隣のお爺さんからとても好かれているらしい。
平気でタメ口をかましているが、相手が許しているだけじゃなく、にこにこデレデレしてるのを見ると、かなりのものだ。
だがそこに、疚しさはいっさい感じない。
なんていうか、孫娘的な位置にあるかもしれない。
そう、息子ではなく娘、だ。
「相変わらず人たらしだよねえ、結城君って」
「激しく同意しちゃう」
「木綿子ちゃん今日は食べる方に回ってね、焼くのは俺と怜司と侑斗君に任せて」
「ありがと」
普段料理は一縁君に任せきりの侑斗でも、キャンプ飯は慣れているのを私は知っている。
大学生のサークルで身につけたわけじゃなく、高校の山岳部で身につけたものだ。
ボルダリングがやりたくて入ったのに、基本がガチの山登りでテントをはって泊りも定期的にあり、飯盒でご飯を炊いたりと本格的なキャンプをしていた。
なんというか、あの体質で、よくまあ川や山に行けたもんだと思ったが、体力も付き、それなりに楽しんでいたようだ。
因みに一縁君は天文部で、年に一度山岳部との合同キャンプがあったと聞いていた。
バーベキューやらキャンプ飯やらは、社会人になっても発揮できる場があるらしい。
基本何でも器用にこなす侑斗は、体質的なことが無ければより社会で生きやすかっただろう。
「何でも器用にこなすな」
「焼くだけだし、それに怜司サンほどじゃないです」
「でも確かにねー、料理なんて全くしなさそうなのに」
「普段任せきりで殆どしないですね。でも高校の時山岳部だったんで。まあ二年の終わりで辞めましたけど」
「え?意外ー」
「バンド組んでたんじゃなかったのか?新入社員の余興でベース弾いていたろ?」
「ああ、バンドもしてましたよ」
「そっちの方が、ぽいよねえ」
「引き出し持ってんな、色々」
「怜司は良い後輩引いたよねー」
話しながらも三人とも手慣れていて、この三人は会社でもモテるだろうなとふと思う。
一縁君をちらりと見ると、彼は視線を侑斗に向けて可愛らしい顔をしていた。
惚れ直しているらしい。
や、いつも惚れているようだから、惚れ直した、という言葉は正確ではないかもしれない。
でも、とても可愛い顔をしている。
今日も今日とて、なっちゃんだけじゃなく、一縁君も安定して私に萌えを提供してくれるようだ。
ハル君も二人に劣らずキラキラしている。
社会人一年目から一人暮らしだというハル君は、最初の頃は料理にはまったこともあったと聞いていた。
あぶなげない手つきでトングを操っている。
私と一縁君となっちゃんのお皿に、焼かれた海老とホタテが盛られた。
食欲さそうその香りに、自然と三人して笑顔になった。
「ホタテ美味しいです!」
「ふるさと納税のだからちょっと良いやつだしなー、エビも生でも食えるデカいの選んだんだけど、正解だったな!」
「贅沢だねー」
外で食べるのが、また格別に美味しい気がした。
こんなに夏気分を味わう年は久しぶりかもしれない。
それこそ、社会人になってリアルでは初めてだ。
リアルでは、というのは、なりきりチャットという架空の場所でのイベントはことごとく参加していたからだ。
あれはあれで、季節の行事をこれでもかと体験し、あの時はとても充実していたのだ。
けれど、今ほどじゃない。
日が落ちてすぐ、最初の一発目が上がった。
これだけ近いと地元の花火とて迫力がある。
同時に、空の奥、幕張方面でも花火が上がった。
そっちは確かに距離があるが、もともとここの土地が高台なのと、前方に高い建物がないのとが合わさって打ちあがった花火は綺麗に見えた。
「凄……」
「こんな近くで見るの初めてです」
「いーだろ」
「うん。誘ってくれてありがと」
「どーいたしまして」
花火を背に綺麗な笑みを浮かべるなっちゃんは、とてつもなく美しく可愛かった。
勿論、目の奥にしっかりと焼き付け、脳内のフォルダーにちゃんと仕舞い込んでおきましたとも。




