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推し活アラサー女子ゆっこのちょっと不思議な日常  作者: 日夏


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13/15

海ほたる

花火を背にした怜司君となっちゃんは、二人してビール缶片手に楽しそうに笑っている姿だった。

視線はカメラに向いているのだが、撮るよ、と言われて撮られた感じがしない。

なんていうか、一連の動作の瞬間を撮ったような写真だ。

そして、友人じゃなくて、ちゃんと恋人同士だとわかる写真だった。

手を繋いでいるわけでもないし、肩が回ってるわけでもない。

もちろん距離は近いのだけれど、なんていうか、自然とそういう空気感が伝わってくる写真だ。

だからといってエロティックでも甘さが伝わってくるわけでもない。

なんて言葉にしたらいいか分からないけれど、とにかく自然だった。


「いる?」

「え?貰えないよ。ただ、これはほんとすごくいい写真だから、とっておいて欲しいな。結婚式とかで使えそうだね」

「確かに」


誰と誰のだ、と言われたら、もちろんなっちゃんと怜司君のだ。

特にそういう予定も何も聞いていないし二人がこれからどうするかなどは知らないが、二人のメモリアルとして残しておいて欲しい。

本当に素敵な写真だからだ。


「だってさー、普段こっちだもんね、これとかこれとか。すっごい残念過ぎだよねえ」

「ははっ楽しそう」

「子供みたいだよねえ、本当。俺の五こも上とか思えないよ」


焼き鳥三本を片手にドヤ顔を晒しているなっちゃんは本当に学生みたいなノリをしているように見えた。

でも、とても楽しそうだ。

写真は好きじゃないと聞いていたが、表に出さず内々に楽しむ程度のものならいいらしい。



「は?何の話してんの?」

「結城君には内緒ー。木綿子ちゃんも、今日撮らせてね?」

「ん?うん」

「……いいの?」

「え?うん、いいよ。こんなに素敵な写真なら、今日の記念になるし」


自分が被写体の写真を撮られるというのは久しぶりだ。

私の友人たちも子供との写真は兎も角、大人同士で撮り合うことをしなかった。

大人になってからじゃこじゃこ撮り合っていたのは、コスプレ時だけだったかもしれない。


最近家族で撮った写真は、父の葬儀のときだけだったかも。

このまま私が亡くなってしまったら、大人になってから写った写真がコスプレなのは非常に困る……等と脳裏をよぎった。


「そっか。ありがとう」

「ん?うん」


お礼の意味がよくわからなかったが、肯定するにとどめたのだった。




アウトレットで時間を潰した私たちは、海ほたるへと予定時間通りに到着した。


アウトレットで私は夏用にと、涼し気な和風のランチョンマットを二枚購入した。

ハル君は白地に赤と青のアクセントが入ったスニーカーを購入し、なっちゃんは白地にベビーピンクのアクセントが効いたカットソーと、レモンイエローと淡いグレーのタンクトップ、それから薄いブルーのジーンズを購入した。

壮絶美人な生き物は、着心地重視で見た目はどうでもいいらしい。

普段からお洒落なのは偏に怜司君の頑張りだ。

それでも最終判断は、今回私にゆだねられた。

責任重大だった。

私自身の服よりも推しの服だ、選ぶのに気合も入る。


『もうこれでいいじゃん、黒ならなんでも合うし』というなっちゃんの面倒そうな言葉に『夏なんだし薄い色にしろ』と白と水色のタンクトップを手にする怜司君。『だったら、こっちのほうがまだいい』と鮮やかな緑のタンクトップを手にしたなっちゃんに対して『これは合わない』と却下をする怜司君。

そして、『ゆっこさん』『ゆっこ』と同時に呼ばれて、私の出番だ。

異素材のレモンイエローと淡いグレーのタンクトップの二枚を重ねて、『これでどうかな?』と聞く。

聞く相手は、なっちゃんにじゃない、怜司君にだ。

一瞬驚かれたけれど、とても良い笑顔で『うん、いいね』と頷き、即決された。

なっちゃんも文句を言わずにそれに決めたのは、私が選んだからじゃなくて怜司君の笑顔が素敵過ぎたからだろう。

因みにハル君のスニーカーも私が選んだものだったりする。

ごついスニーカーの方が流行かもしれないが、細身の方が似合いそうなので、定番型でも色で遊び心があるユニセックスのスニーカーを勧めた。

夏向きだけれどこれから履くのが欲しかったので丁度良かったようだ。


そうしてアウトレットは私にとっても楽しい買い物ができた。

他人から羨ましそうな視線を浴び続けたが、こればかりはしかたない。

『羨ましかろう!』という気持ちでどうどうと楽しんだのだ。

───からの、海ほたる。

女性同士とカップルの多いこの場所では、より嫉妬の視線が突き刺さるがどうとでも思えばいい。

そこを気にしていては三人に悪いではないか。

第一これに慣れないなら、この先も一緒にいられないだろう。

だから、気にしない。

通りすがりに何か言われても、気づかないというふりを決め込む。




「おー、これいいじゃん。すげー綺麗に撮れてる!」

「わ、本当だ。女優みたい」

「やあ、自然なのに綺麗っつーか、うん良いじゃん」


美人に綺麗と言われて嬉しくなる。

わかっている、綺麗に撮れてるんであって、私が綺麗と言ってるわけじゃないことも。

だが、自分が写っている写真に驚いてしまうほどには、綺麗だと思ったのだ。

光の具合と、場所と、服装とが色々と合わさって美人感を増しているし、何より自然に笑っている瞬間が写っている。

カメラの性能もあるだろうけれど、プロが撮ったような写真に仕上がっていた。


「ってか、怜司ヤバくね?足の長さがえげつない!これだから一緒に写りたくねーんだよ」

「わかる、わかるよ結城君!でもね、結城君も大概だよ?頭身は高いからね?木綿子ちゃん顔小さいから並んで遜色ないけれど」


海ほたるについた私たちは、お土産を買ったり写真を撮ったりと楽しんだ。

限定の食べ物をテーブルに並べて、食べるよりも撮った写真を見るのが先だった。

ハル君を真ん中に、左に私、右になっちゃんがカメラを覗き込む。


テーブルを挟んだ先には、呆れ顔の怜司君がコーヒーを飲みながら少々疲れた顔を見せている。

ちなみに疲れたのはここまでの運転が理由ではなかった。

席取りの留守番と買い出しとに順番で席を外していたから、二人になった時や、一人になった時を見計らって数回女性に声をかけられていて、その対応に疲れたらしい。

正確に答えると、女性へ断ることに疲れたわけじゃなく、断った後のなっちゃんへのアフターケアに疲れたようだった。

『ゆっこさんがいてくれて助かるよ』とまでため息まじりに言われてしまえば、このドライブの目的がなんであるにしろ、私の役目はもうこの際『推しが守れて今日という日を楽しんでもらえたら』それだけでなんでもいいと思った。


私の顔が小さい、というのは少々語弊があるかもしれない。

他人から言われたことはあるが、肩幅も人より狭いので、正しく言うと顔が小さいわけじゃないと思う。


「写り慣れてるよね、怜司君」

「な?」


否定も肯定もせずに、横へと流れていく写真を見逃すまいと目にして呟くと、とたんなっちゃんの機嫌が悪くなったのが分かった。

おおう、どうした?

足の長さがえげつないとか言っていたけれど、あれは半分惚気だったはずだ。

どの写真も格好良く写っているし、今の私の言葉の何が刺さってしまったのだろうか?



「こないだなんかさー、メンズじゃなくて女性ファッション誌にでかでかと写っててさあ、恋人役とかやってんの。聞いてねーからマジムカついた」

「あれは急遽頼まれて、だよ。言っただろ?……けど、ちょっと苦手だったな」

「うそつけ、すげー嬉しそうな顔してた」

「NG出しまくって、その後は那智を想像したからだ。相手のモデルには自分を見てないってバレて機嫌悪くされたけど結局それが使われたんだ」

「……あっそ」

「もうしない」

「すんなって言ってねーし」

「うん、でももうしないよ」

「っそーですか」


今日もクソ萌える安定の二人だ。

可愛すぎでしょ。

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