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第63話  ゲルマニアの首なし麗人

梅雨明けで日差しが強くなりつつある時節。


閉館後、皇女記念館の特別展示室は来週から始まる企画展の準備で追われていた。


入口には《ゲルマニアの和子~ヴィクトリア・フォン・ローゼンベルク将軍展》の看板が掲げられる。


「じゃあ!タカシ君、いっせーので持ち上げるよ」


「はい!」


タカシと館長は声を合わせて装飾が施されている大きな椅子を特設の舞台に持ち上げた。


「ふう!重たかったね」


「ハァハァ!館長…凄い豪華な玉座ですね」


「ああ。ゲルマニア帝国時代の王宮の玉座を再現したものらしい。協催のゲルマニア共和国も気合いが入っているよ」


「へえ…ここにヴィクトリア将軍がお座りになるんですね」


「そうだ。一旦休憩して、22時から研修会だから遅れないでね」


「観覧室集合ですね。分かりました!」


研修会とは特別企画展の次の内容についての勉強会である。


記念館で特別展示が入れ替わる時は職員全員が集合して内容の水平展開を行う。


『全員が案内係!』がスローガンである。


昼間は各自の業務があるので閉館後の夜間に実施されることが多い。


今回は第二回目で前回のおさらいである。


タカシがトイレで用を足した後観覧室に入ると、パイプ椅子が並べられ職員の大半が集合していた。


時間になり、田端は白板の前でレジメを見ながら説明を始める。


「今回来日されるヴィクトリア将軍はかつてのゲルマニア帝国、現在はゲルマニア共和国となっておりますが、その名門ローゼンベルク侯爵家の御長女にあたります。幼き頃より頭脳明晰で知られ、その IQ は300を超えていたと伝えられます。又我が国に10才から5年間留学され、大の親礼家としても知られます。先の大戦時には二十才の若さにしてゲルマニア帝国軍の総司令官を務められました」


「館長!」


「はい。何でしょう?」


「ゲルマニアは何で戦争したんや?」


「…脱糞さん。それは前回もお話したでしょう!」


「歳やから1回では覚えきらんさかい…頼んます」


「分かりました…もう1回説明します。よく聞いておいて下さい。大洋戦争開戦の前年、和子皇女様は久仁海皇陛下に提言しゲルマニア帝国と軍事同盟が締結されました。その時は遠い欧州の一国家との同盟の意味が理解されませんでした。しかし大洋戦争が勃発した時アメリアナ合衆国はグレートブリテン王国、フランク共和国と同盟を結び三国で礼和国に侵攻する計画を立てました」


「なんや!《みんなでいてもうたる》ちゅうやつか!アメリアナもえげつないな…」


「そういうことです。しかしそこで 軍事同盟が発動しゲルマニア帝国はフランク共和国に参戦をします。ヴィクトリア将軍の軍略によりフランク共和国が危機に陥りグレートブリテン王国は救援の兵を出さざるを得なくなります。両国はゲルマニアとの戦いで精一杯となったため、アメリアナは単独で礼和国と戦わざるを得なくなりました」


「ゲルマニアはんも義理固いな」


「それが同盟というものです。しかし礼和国の敗戦と同時に北方のロ―デシア連邦がゲルマニアとの不可侵条約を破り突如参戦します。ゲルマニアは背後を突かれた形となり敗戦しました。結果ゲルマニアは王制が廃止され西ゲルマニアと東ゲルマニアに分割されることとなります」


「ほんで、ヴィクトリアはんはどないなったんや?」


「それも前回お話ししたでしょう!」


「おさらいやで。堪忍してや。」


「む…ぐ…今回が最後ですよ!戦勝国、特にグレートブリテン王国は軍事被害が大きく、戦を指揮したヴィクトリアさんに深い恨みを抱いていました。戦後ベルリン裁判が行われ、彼女は第一級戦犯として死刑判決が下されます。しかしこの時の処刑方法は当時大きな議論を巻き起こしました。かつてフランク共和国で使用されていたギロチンが持ち出されたのです」


「なんやて!なんでそんなもん出してきたんや?」

 

「…戦勝国側は苦痛を与えぬ人道的処刑方法と説明しましたが、民衆の前で公開で行われ、明らかに見せしめの為であったと現在では批判されています。しかしこの後ヴィクトリアさんの遺体は数奇な運命を辿ることとなります」


「早よ!続きを教えてや!」


「だ・か・ら!なぜ 覚えてらっしゃらないんですか!ご遺体は首と胴体を別々にして処刑広場に晒されていましたが、翌日忽然と消えたのです。犯人は《背徳の科学者》と呼ばれたニコライ・テ―スラ―でした。彼は同盟国である礼和の魔導士と交流を深め、人工的に魔導法を再現する《テ―スラ―装置》の開発に成功します。それは人間の命と巨大なエネルギーとを引き換えに人体を蘇生し不死に出来る強力なものでした」


(まるで《龍命替術》だ!)


タカシは息を飲んだ。


「狂気の科学者テ―スラ―は自身とヴィクトリアさんの体を装置にセッティングして発動させました。その夜首都ベルリンが全て停電したと云われています。そしてヴィクトリアさんは蘇りました。首と胴体が離れたままで…」


「それ…皇女はんと同じパターンやないか!」


「ただ…皇女様と違ったのは御意識も完全に戻った事でした。ゲルマニア国民は歓喜し大々的に報道されます。しかしこの事がブリテンとフランクの大きな顰蹙ひんしゅくを買います」


「せっかく処刑したのに生き返らせやがった!てなるわな、そら」


「その通りです。ブリテンはただちにヴィクトリアさんの身柄引渡しを要求しました。彼女の能力と人望が脅威だった事も背景に有りました。ゲルマニアは敗戦国の為、泣く泣く要求を呑みます。ヴィクトリアさんは手錠をはめられ、生首に囚人仮面を被せられブリテンに護送されていきました。この後彼女にはつらい運命が待ち構えていました」






次回   


ブリテンでヴィクトリアは《戦犯展示》される。



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