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第52話  皇女の一人だけの夜

美枝とタカシが記念館を訪れた日の夜。


閉館後、時計の針は日付の変更を迎えた。


主照明は落とされ、補助的な間接照明だけが場内を薄暗く照らしていた。


どこからか換気設備の音だけが微かに響いている。


和子は誰もいない観覧室で静かに玉座に腰を下ろしていた。


(そうか…今日はタカシさん…いないんだ…)


皇女は少し物憂げに瞳を細める。



(タカシさんのお母様…面白い方でしたわね…)


昼間の出来事を思い出しておもわず笑みを漏らす。



(それにしても…首がきついわ)


彼女の生誕月で首が胴体に戻されているのが窮屈で仕方が無い。


高くぴっちり留められた大礼服の詰襟に首がしっかり固定されている。


(まぁ明日から月替わりだから…それ迄の我慢ですわ)


金の刺繍に彩られた詰襟を撫でる和子。




こんな日、和子はたかしの言い付けを守って玉座の間の中で大人しくしている。


それはタカシのいない時に変に館内をうろついて臨時で戻ってきた職員などに鉢合わせしたら大変だからである。


しかし今日の皇女はソワソワしていた。


(確かノ―ブルとエリザベスの最新号が出てる筈ですわ)


ノ―ブルは20才代の年齢層をタ―ゲットにした清楚系寄りの女性ファション誌、エリザベスは恋愛物と歴史物系が中心の少女漫画雑誌でどちらも月刊である。


事務室には職員が休憩時に読める様に雑誌類が常備されている。


この中で先の二誌は和子のお気に入りなのである。


いつもはタカシに持って来てもらうか、同伴で事務室に行くのだが、あいにく今日は彼が非番で不在だ。


「ああ…読みたいですわ…」


皇女は思わず一人言が漏れた。





観覧室はしんと静けさを保っている。


(…ちょっとぐらい…いいんじゃないかしら)


ふと…いけない考えが頭をよぎる。


『そうだ!行っちゃいなよ和子!』


黒ボンデ―ジにコウモリの羽を生やしたサキュバスのミニ和子が現れた。


『誰もいやしないわ!今がチャンスよ!』


先端が尖った尻尾をフリフリしながら和子を焚き付ける。


「そ、そうかな…今ならいいかな…」


ふらふらとうなずきかける和子。



『なりません!あなたはタカシさんの言いつけをお忘れになったのですか!』


今度は白い天使の羽を生やしたシスター姿のミニ和子が現れ和子を強くたしなめる。


『雑誌などタカシさんが出勤したらいくらでも読めます。それより万一見つかった時の事が想像出来ないのですか!』


「う…ぐ…確かに…」


ぐっとなる和子。



しかし反対側からサキュバス和子がささやく。


『自分の感情に素直におなりよ。あんたは自由よ。好きにすればいい』


『誘惑はお止めなさい!この悪魔!』


『大丈夫。誰も見ちゃいないわ。迷う事無いから』


『和子!耳を貸しちゃ駄目!』


『ふん!うるさい奴ねえ…こうしてやる』


サキュバス和子が槍で突くとシスター和子が悲鳴を上げて消えた。


「うふふふ…」


和子は低く笑った。


「ようし!行きますわよ―」


和子は颯爽と立ち上がた。


「これも!えい!」


そう言うと両手で自分の首を持ち上げて外し、右脇に抱えた。


桜の花弁装飾とピンクのダイヤが組み合わされた耳飾りが揺れ、漆黒のロングヘアーの先端が床に触れた。


「ふう!窮屈だったのよ…」


そう言って顎の下を撫でると、ヒ―ルの音を鳴らしながら玉座の間の出入口まで歩きドアノブをひねった。


そこで開けるのを一瞬ためらう和子。


しかし自分に言い聞かせる様にコクンと頷くとゆっくりドアを押して開いた。




『行ってらっしゃい』


玉座に足を組んで座っているサキュバス和子が、牙を覗かせながら笑顔で手を振っていた。





次回  皇女は夜の館内を愉しむ

 

「これ…高橋さんの制服…やだ!わたくし何考えてるの!」














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