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二十二話:大広場の大規模戦闘

「グラアオオオオオーーーーーーーー!!!」


「オケウェー、そっちの方は任せたわよ!」

「望むところだ!」


さっきより狭い廊下を通っていたら、またも【闘志級】の世界獣である『クリームゾン・ヴォールフ』が襲ってきた、今度は他の女学院性を狙ってではなく【チームオケウェー】の俺達に。


前方何十メートルからこちらに向かって走ってくるのは2体なので、右側を俺に委ねたオードリー。


こいつらー!俺の元居た【シンドレム森林地帯】にて死霊魔術を最初に使えるようになった『あの日』と同じような狼の【世界獣】だけど、以前見たものより2倍と大きくなったー!


あの時は【ボーヌソード】で迎え撃ったけど、今は【死霊魔術】のことはみんなに隠さなければならない能力なので、『オードリーの考えた戦術』の一環として、またもクレアリスからあの『精練魔剣』を貸してもらって大洞窟にやってきたから、【轟炎雷刃(ロアーリングフレームズ・オブ・ライトニングブレイド) 】で迎撃してもいいー!


だが、

「『切り裂け、【翔刃烈風斬ウィンド・ブレイド】』ー!」

入学試験で使ったことある始めて使用できた『風の四元素魔術』を先に敵に放った。


距離が開いてるから、なるべく『魔剣技』の使用における『聖魔力の消費』を温存したくて負担の小さい第一階梯魔術の【翔刃烈風斬ウィンド・ブレイド】を攻撃手段にした。


あの大きさとここから感知できた【反人力】の強烈なオーラだと、こんな第一階梯の【翔刃烈風斬ウィンド・ブレイド】の一撃では到底、倒すことができないことは予想できた。


でも、俺が使おうとするこれは何も一回だけの発動ではないぞー?


「【翔刃烈風斬】!【翔刃烈風斬】!【翔刃烈風斬】!【翔刃烈風斬】!【翔刃烈風斬】!そして、【詠唱破棄、10回】ーー!!」


「グラオオオーオググウゥ~!?」


先に放った【翔刃烈風斬】を受けて、浅い切り傷だけをその顔に受けて、左目が切られて見えなくなったようだが、それでも向かってくるのを止めないように走行を続けてるようだから、15回まで追加攻撃として既に放った【翔刃烈風斬】が追撃とばかりにまたもあっちへと飛翔していった。


バサーー!バサーー!バサーー!! バサーー!バサーー!バサーー!! バサーー!バサーー!バサーー!!


「グラ―オオオーグクゥ!?~……」

流石に連発した甲斐があって、俺の担当した『クリームゾン・ヴォールフ』一体の撃滅を確認した。


15回の【翔刃烈風斬】による切り傷で全身が何線もの長くて交差してる裂傷ができて、そこから世界獣特有の緑色の血が流れ出てる。


でも、最も悲惨なのは頭部の方。

何故なら、胴体に走っていった何回の【翔刃烈風斬】に頭部を貫いたものもあるので、頭の方がぐちゃぐちゃになって、ちょっとグロイ。


「あはは……女の子に絶対見せたくないな、それ。やっぱりここでは大勢が使ってる方の『火炎魔術』を選択するべきだったか…」

と、そんなことを考えてる中、


「こちらもターゲット撃滅を完了したわ!」

オードリーの声につられて、俺もあっちの方を見ると、


「お疲れさん、オードリー」

どうやら、またもあの子熊の精霊を使って氷漬けにしたようだ。労いの言葉をかけてやったが、


「ふーん!この程度の雑魚なら『お疲れ』も汗も出ないんだけどねー!」


「分かってる。ただ、何となく片方を片付けたオードリーを労いたいだけ」


「好きにして頂戴。さて、前へ進むためにちょっとみんなと話したいことあるんだけど、いい?」

オードリーからの要求に、俺達全員が彼女の近くへ歩み寄った。


「ちょっと変すぎない?ここは第一階層なのに、これ程うじゃうじゃと【闘志級】の『クリームゾン・ヴォールフ』が何体も現れるなんて……」


「わたくしもそう思いますわね。だって、ジェニファー達を襲った1体も、そこに事切れて転がってる2体も普段より何倍も大きいようですけれど、熟成体であってもそこまでの大きさにはならないはずですわ!」


オードリーとヒルドレッドの意見に、俺も心の中で賛成した。


確かに、これら『クリームゾン・ヴォールフ』の世界獣は、前にフェクモの森にいた11歳の頃の俺が最初に倒すことができた部類だ。だが、その時は確かに、これほどのサイズではなかったと記憶している。


「も、もしかして、ここ、【クリスタルの大洞窟ルネヨー・フラックシス】の様態に、異常が発生してるってことなんですか?ほら、【世界樹ワールドツリー】から流れてきたここの【樹界脈】がなにかの原因で変容し、それで空気中に漂う【聖魔力気】が増えて強力な熟成体を呼び寄せたってなりませんか?」


ジュデイの疑問も的を射てるんだ。


確かに、授業で学んできた通りに、ここ北大陸の【ギャラールホルーツ 】にはこの世界の中心部とも言える【世界樹ワールドツリー】から流れてきた【樹界脈】が特段に多い。


このクリスタルが一杯ある洞窟へ流れてきた【樹界脈】が変容し【世界獣】の出現率を変えたと言うのなら、つまり、起源である【世界樹ワールドツリー】に何か異変が生じると仮定してもいいはず。


「まあ、でもそんなことをいつまでも考えていても仕方ないわ。先に進んだ方がいいわね」

みんなの議論を脇に置いて、先に進むべきだというクレアリスに、


「僕も同感っす!分からないことをいつまでもグダグダ論じてる意味や時間ないっすよねー?」


「………でも、【樹界脈】が本当に変容して世界獣の出現率が高まったなら、一応気をつけた方がいいわよ。そして、他に引っかかる点も残ってるけど、今はそうするしかなさそうわね。じゃ、またも戦術通りにあたくしとオケウェーが隊列の先頭に立って進むわー!行こうー!」


「「「「「はい!」」」」」

オードリーの催促に一陣の洗練された部隊にでもなった要領で一斉に同じ了承の言葉を上げた、俺達『チームオケウェー』。



………………………………………



…………………



『ね~ね~【契約人間】がまたくるよ~?』


『これで何万人目になるか分かんないね~。だってあたし数えたことないもん~。面倒~~』


『きゃはははー!あのチョコレート色の男の子、始めて見た~!【契約人間】でもそんな色してる個体いるなんて可笑しい~!きゃはは~っ!」


『ふしし~!あたいはここが好きで離れたくないから、【契約人間】なんてお断りよー!』


いきなり、どこからともなくヒソヒソの小さい金属的な話し声が聞こえてきた。左右をクリスタルいっぱいの壁に挟まれてるこんな狭くなった通路にそんな声が聞こえたということはー!


「確か、『精霊の囁き(ネルン・フェーズ)』というんっすね?この現象は……」


「ええ。精霊が認めてくれる人間にしか見せない態度よ。まあ、こんな才能満ち溢れる集団を見てしまったら、【下級精霊】はいつもこんな反応見せることになるわ」


ジェームズとクレアリスの会話に、オードリーも続いて俺に、


「オケウェー、さっそくお誘いがくるみたいわね?まあ、あんたの実力に見合える固体はもっと奥に潜んでるけど」


「うん!『彼ら』には悪いかもしれないけど、俺が欲しいのはもっと奥にいるからね」


「私もオケウェーさんみたく【第三階層】までに、とはいかないまでも【第二階層】での精霊と契約したいです」


「僕もジュデイのようにしたいっすね」


そうこなくちゃなー!


この階層に住んでいる『弱っちの彼ら』には悪いけど、短期間訓練であの氷竜と互角以上に渡り合えるのは【第三階層】の奥に眠る【愛の大聖霊】だけだ。


まあ、『弱っち』、なんていう言葉は絶対に口に出して言えないけど。精霊達に失礼だし。


ちなみに、『精霊の囁き(ネルン・フェーズ)』っていう精霊界の決めたマナーというか作法に則って、彼らの声に対して返事みたいなのを返してたら、契約してくれる個体が姿を現わすって授業で教わったことがある。


普段、契約を交わした人間にしか聞かせてくれない自身達の発する『人間の言葉』が唯一、聞かせてくれる儀式みたいなものだ。



………………………………………



……………………


「ここはー?」

あの通路を抜けて、今の俺達が目にするのは何箇所で床と天井から垂れ下がったり生え出たりしてる様々な大きさの美しいクリスタル達がある大広場。


そう言えば、イリーズカ先生に言われたんだっけ?ここ、ルネヨー・フラックシスっていうのは神話時代からもあった『ダンジョン』の一つで、聖神達による手入れがずっと施されてきた場所だ。


カチャ――ン!!バコ――!!キー―ン!ガンガンガン!グラグラ!ズシューーーーーーーズシャーーーー!!!


ーー!?


いきなり様々な騒がしい音が聞こえてきたから音のした方向へ見回してみれば、案の定!


「あれをみろ、皆ー!!戦闘が始まってるみたいー!」


俺の一声につられるように、皆があちらへ視線を向けた先には、


「グラオオーーーーー!!」「グヲオオオオオーーーー!!」

「嫌、助けてーー!!」

「こっちに来るな!虎の形してるバケモノがっ!」

「やあー!これでも喰らいなさいー!」

「まったく!この程度の相手で苦戦してるとは魔術士が聞いて飽きれるわ!」


どうやら、この大空間のあっちこっちに様々な戦闘が繰り広げられていて、うちの【聖エレオノール精霊術学院】の学院生たちが複数のチームを形成してそれぞれ各方面から襲ってきた何十体の『クリームゾン・ヴォールフ』と、………ありゃ、まだ見たことない世界獣だから何ていえばいいか分からんけどオレンジ色の巨大ゴリラの形をしている【世界獣】。


「うそ!ここはまだ『第二階層』へと続く【第一階層の最後の広場】だけなのに、なんて数の【闘志級】だわー!」


「オードリー!あそこを見て!一人だけ複数の『レイジ・エイプ』に囲まれる生徒がいるのよ!」


ここから一番近いあそこで起きてる切迫した光景をオードリーに知らせたクレアリスなので、


「分かった、助けに行くわよー!みんな、準備はもういいー?」


「いつでも動けるよ、オードリー!さあ、時間が惜しいから確認は後!俺、先に行くねー!」


「ああ、ちょっと!戦術通りに隊列から離れー」

んなこと言ってられる状況かよー!


今、あそこで、3体のゴリラからの包囲網が徐々にきつく小さくなってくだろうー!


中にいる子の命が危ない!恐らく身長5メートルも越えるであろうあの巨大ゴリラ3体からの撲撃に合っていてはひとたまりもないだろう!


「ひっ~!た、助けぇ……」

「グヲオオオオー!!」

「グググ……」

「グオオオォォォーー!」


今でも、1体の…『レイジ・エイプ』?なんだっけー?がその大きくて長くて太い腕を上げてその子に振り下ろそうとする動作が見えたので、早く盾になってやらないとー!


「おおーーー!間に合えーー!【身体能力強化】ー!!」


身体能力が爆発的に上がるこの【物理法則無視魔術】を発動した俺はここからあそこまでの距離―100メートルぐらいだろうか?を一瞬で駆けていけるよう全神経を研ぎ澄まして、前の決闘にオードリーが見せてくれたあの『瞬発力』の完璧さを真似るように、全身を屈んでから跳躍していくーー!!


シュウウウウウウウウウゥゥーーーーーーーーーーーーーー!!!


「グワオオオオオオオーーーーーー!!」

「いやあーーー!!!」

バコオオオォーーーーーー!!


……………


「……え?」


「大丈夫か、おい!早くここから逃げろー!」


「…!は、はいっ!あ、ありがとうございした!」

間に合ってよかった。


このバケモノが腕を振り下ろす動作があまりにも遅すぎたので、途中でクレアリスから借りてる『精練魔剣』である【轟炎雷刃(ロアーリングフレームズ・オブ・ライトニングブレイド) 】を異空間収納から取り出しながら、その後すぐに【近距離転移術エルノイーナゼフット】までを使って一瞬でここへ着くことができたから運よく剣でバケモノの腕を受け止められた!


タタタタ………

「グワオオオオオーーーーー!!」


包囲網が完成される前に隙間から逃げ出していった彼女が見えたが、一体だけ『レイジ・エイプ』がこちらから抜け出して彼女の方を追いかけようとするを横目で確認できた!


大丈夫ー!オードリーもつい昨日の日曜日の一日中の訓練でずっと苦手としている【近距離転移術エルノイーナゼフット】を習得したばかりなのですぐに彼女の位置まで追いつくだろう……そうじゃなくてもあの子熊の精霊もいるしな!


「さて、まずはあんたからだなー!うっりゃーー!!」

バアサアーーーーー!!!


「グワヨオオオオオオオーーークキギ!?」


『身体能力強化』の魔術を解除しないまま腕を受け止めたままにしているので、その増幅された腕力と『聖魔力』の爆発的組み合わせで【轟炎雷刃】を力強く振り上げ、堅くて太すぎる腕を両断までとはいかなくても、深々と切り裂けて衝撃で後ろへと少しだけ後退させたことに成功できた!

次にー!


「【何線の雷に伴われて刀身に紅蓮の炎を纏う】ー!」


炎と複数の何線もの短い雷が同時に刀身に纏われたっていうあれをまた発動して、こいつへと斜め上一閃の振り上げで切りつけようとしたが、


「それー!」


バチャアアーーーーーーー!!

「グワオオオオオオーーーーーオオ!!!?」


後ろから襲い掛かってきたまたの1体の動きを感知したので、素早く身体を回転させ向けを変えた俺はこっちからも飛び出して、虚を突こうとしてきたあそこの方の1体を逆にこの剣で下から斜め上切りの斬撃を喰らわせた! 


「ググククグ……….」

堅い毛皮と皮膚を切り裂かれ、緑色の鮮血がその切り裂かれた胴体から飛び散っている様子を確認。


「オケウェーーー!」

オードリーも直ぐに側へくるようだ。


あの感じだと、さっきの子を追いかけていった1体を既に片付けたようだな、あの子熊の氷性精霊ベネフォーロッスを使って。マジで何でもありのアイシーなベイビーベアで心強いな!


「オードリー!あの子はどうしたー!?」


「後ろのみんなが追いついて保護下においてるはずだわ」


「良かった、じゃこいつら、一気に殲滅するからどっちの方をお前にやったらいい?」


「まあ、あたくし達の実力なら誰か一人でもこんな【闘志級の中での最強クラス】の『レイジ・エイプ』2体でもまとめて掃滅できると思うわよねー。でも敢えて『役割分担』を選択し、先生から『チームワークの高さ』での追加点数の成績評価をもらいたいなら、あっちの胴体に長い切り傷ができた方をあたくしに任せて頂戴」


「おう!その方がいいと思うぜ。なにせー」


「グワオオオオオオオーーーーーー!!

シュウウゥーーーー!

ぶっとい腕が深々と切られた正面にいるこいつが逆側の腕を振り降ろしてきたので身体を横にずらして避けると、


「俺もこっちを最初の獲物にしようとしたら、後ろから邪魔が入ったからな!初撃の後始末を先にやるのが俺達の戦術のうちだしーなっ!」

グチャアアーーーーー!!!


「クグ……ーーーー」


魔剣技、【炎撃斬雷波(アタックフレームズ・オブ・カッティーング=ライトニングウェーブ)】にて、こっちの方の『レイジ・エイプ』を炎と雷が燃やしながら斜め一閃の強力な斬撃波で両断した。


ちなみに、前にオードリーと戦った時に、もしもこの『魔剣技』が彼女に当たっていたとしても、このバケモノみたいに両断といったような物騒な実害にはなり得なかったんだろう。


何故なら、事前にクレアリスに教えてもらった通りに、【契約精霊】を持つ者は強靭な身体を持つようになり、特に魔術や魔剣技といった非物理的な攻撃には並々ならぬ耐性を発揮すること。


それに、後から分かるようになったことなんだが、あの時の決闘の最中にも学院長からの【物理と魔術全類耐性万丈】っていう万能級の【物理法則無視魔術】を発動してたから、もし当たったとしても更に耐性効力がアップされてくばかりで万が一にも深々と切り裂かれることはないだろう。


まあ、あの時に、契約精霊のご加護を一切受けられない俺の方がもしあの【災弾五円陣撃】の倍増された氷撃の効果を持つ複数弾による着弾が結成できたであろう【大氷太巨柱】にて、俺が何十倍もの氷の柱の増幅された完全氷結にあって死にかかっていても不思議じゃない。


でも、どうしてか、たとえその状態になってても、学院長なら……

そして、撃ってきた主と射手であるオードリーでさえ、なんとか俺をその氷結の大地獄棺桶から解放した後、完全回復させることも出来る気がしたぜー!



…………………………



…………


「さっきは見事です!オケウェーさんにオードリーさん!」


「まあ、あたくし達にかかればゴミも同然の【世界獣】だったわよ」


「いや~!本当にすごすぎるっすよーー!僕も早く精霊と契約して、ああもガンー!って、そしてグちゃーー!ってバケモン共をやっつけてみたくなったっす!」


「ふふ、オケウェーの活躍を見て同じ男性として嫉妬しちゃうの?」


「へえー!?そんなのってないっすよ、クレアリス譲さん!人聞きの悪いこと言わないでくれ!」

と、場の雰囲気に似合わず仲間からそんな呑気な会話が交わされると、


「あんた、もう大丈夫ー?怪我はないー?」

俺はそこでヒルドレッドの側に立ってるさっき助けた子に聞くと


「ー!あ、は、はい!あ……あの……」

「ん?」


なんかモジモジして、茶髪セミロングを揺らしながら肩を小さくびくびくしてる様子なんだが…


「あ、あたし!ニナって言います!そ、その……」


「あら、言いたい事があればはっきり声に出して相手に伝えないといけませんわよ、…ニナサン。貴族令嬢に生まれた者として当たり前のことですわ!おほほほ~!」

……いやいや。そもそも平民の身でもそういうのが推奨されてるし。


後、状況と場合によっては例え言いたかったことがあっても言えないシチュエーションがあるだろうが。


「……その、あたし!さっきオケウェーさんに助けてもらったこと!……ほ、本当に心から感謝の気持ちでいっぱいですっ!さ、最初は…….オケウェーさんってもっと怖い人かと思ってたけど、でもでも!助けてくれた時のオケウェーさん………本当にかっこよかったですっ!」


「ニナ…….」

まさか、『チームオケウェー』のメンバー以外にもこういうふうに感謝される時がくるとは……


「あ、あたしー!そ、そのう……『南大陸フェクモ』にあったこと……どうして『呪われた大地』って呼ばなきゃいけないのって……ずっと前から疑問に思ったことってあるん……ですよね、あたし!だからっ!たとえオケウェーさんがそこからの出身者でも……そんなので周りに酷い目と言葉を向けられてもいいの?ーって………ずっと変だなって思っちゃったりもしました……」


ほう?貴族の肩書に変に人格を影響されないままで、周りの意見に惑わされず、自分でものを考えて話が分かる常識人もいるもんだな、この学院って!


「だからー!こ、これからも、微力ながらも遠くから見守って、応援していきたいですねっ!オケウェーさんもオードリー様も!そしてチームメイトのみんなも!」


「ありがとうな、ニナ。あんたのような理解のある人が自分達のと同じクラスにいてくれて」

こればかりは本心だ。本当に助かった、ニナみたいな味方をこちら側につけることができて。


ん?よくよく思い出せば、確かにニナの発してる声って、あの『人生でもっとも恥ずかしかった日』にて、つまり、……おー、オードリーの奴に股間を触られた日に:


「でも、でも、彼のその恥じらってた顔、ちょっと可愛くないー?最初は顔がダークチョコで暗すぎると思ったことあるけど、ああいう肌にも羞恥を現わす朱が差したなんて、ちょっと意外かも~?」


…………………


確かに、そんな発言をしてた子がいることをこの耳がはっきりと聞き取れた。


その声が、正に今、俺の目の前で俺に向かって敬語で話し合ってるニナとそっくりそのままだ!


そうか、あの時は他のみんなに同調するような意見を下手くそに発したんだけど、あまりきつくなくてむしろポジティブで親近感が湧くようなそんな可愛いこと言ってくれたことは内なる心の秘められた葛藤によるものだったんだねー!


「お~ほほほほ!入学してきて一週間しか経ってないと聞きましたのに、もうこんなにファンができてしまうとは、オケウェーサンも隅に置けない男ですわね、お~~ほほほほほほー!!」


チームメンバー以外のクラスメイトからも理解者ができたことはありがたいが限りなんだが、まずはそこで高笑いしながら俺達の芽生えた関係を面白がる薄い金髪ツインテールのヒルドレッドをどうにか落ち着かせて静かになってもらう方が先だな、うん!


やっぱ、ヒルドレッドは別のベクトルからオードリー以上にテンションの高いお嬢様でちょっと苦笑したくなった俺だ。


ガン!カチャ―――――ン!!バコーーーーーー!!


そんな場が和むようなことを呑気に考えてると、まだここの大広場であっちこっちで『世界獣』の襲撃にあい、交戦してる生徒の気配が多いことを音や声から確認することができる。


なので!


「あっちこっちで戦闘はまだ続いてる。どうする、オードリー?」


あたくし達は聖人でも、聖神でもないわよ。たまたま目に入ったから助けてやれる子もいるかもだけど、今のあたくし達にとって最も優先すべきことは他にあるわ」


「うちもそう思ってるわ。オケウェー君、うちらの成すべきこと、使命とは何か、見失わずに敢行しててー。『漆黒の魔王』の名に違わずに」


「まあ、そうなりますわよね。だって、わたくし達は伝統と歴史ある【聖エレオノール精霊術学院】の生徒でしてよー?己の信念と自己責任で以って、どんな【世界獣】とでも戦える立派な『精霊術使い』になるためにどんな試練も乗り越えて、精進していく必要がありますわよー?こんな異例の【闘志級】の大襲撃でも対処することが出来なければ、卒業まで通っていけるというのも夢のまた夢ですわー!」


「……酷ですけど、私達も『チームオケウェー』を結成したばかりなのに、無闇に他所を助けるばかりみたいな事をしているようでは先生に単位を落とされちゃうかもね」


「ま、まあ、僕達じゃなくても、他に強くて頼れるような契約精霊持ちの子もそこら中にいると確認できたしー?精霊持ってない子の援護には彼女達に任せればいいんじゃないっすかなー!」


「みんな……分かった!他の生徒は自分達で責任を持って、戦うか逃げるかといった各自の判断と対処法を彼女ら自身に任せて、ほっとくことにするぞ!じゃ、行こう!あそこへー!」


一応、ルネヨー・フラックシスに入ってきたのは全3組からなる97人の一年生全員だ。


この大広場にて大規模戦闘に巻き込まれる生徒の何十人に、少なくと30人、40人ほどか既に契約精霊を持ってる令嬢がいてもおかしくないはず(たとえ大半が下級精霊であろうとも)。


勇者でも英雄でも神様でもない俺達『チームオケウェー』6人なので、他の聖霊術使いである彼女達に戦局の好転を任せてみても罰が当たらないだろう。


今の俺達が目指すべき目標は、『第二階層』へと続くであろうあのもっと遠くの前方方面にある下降形式の螺旋状の青色通路を下っていくことだ!



…………………………………………………




…………………



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