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二十一話:仲間と共に

クリスタルの大洞窟ルネヨー・フラックシスの第一階層、とある一画にて:


「わあーー!思ってたより綺麗な洞窟なのよねー、シルヴィアー?」


「ええ、本当に素敵なところですよね、ここ。お陰でもっと可愛くて頼りになりそうな精霊と契約したくて仕方ないんです」


「二人とも、舞い上がってるとこ悪いんだけど、慎重に気を付けながら歩いて下さいね!ここは確かに『第一階層』で強力な『世界獣』と出くわす可能性がゼロに等しいけれど、たまには【最弱級】だけじゃなくて【闘志級】までもが出現すると先生が言ってるんだよー?」


クリスタルの大洞窟に足を踏み入れた3人の女子学院生は、目にした壁や天井に無数のクリスタルが生えている光景に驚嘆していたんだ。


だからなのか、それぞれが周囲の現実離れした神秘的な光景に対して、気分が高揚しているので口々に感嘆な言葉を漏らし合っている。


壁面には大小さまざまなクリスタルが密集しており、それぞれの極小なる『聖魔力気』の封着した影響でまばゆい輝きを放っていた。


それぞれのクリスタルは透明度の高い氷のような輝きを持ち、洞窟内を煌めかせる光の柱となっていた。光がクリスタルに反射し、周囲にキラキラとした光の粒が舞い踊り、まるで魔法のような幻想的な雰囲気を演出していた。


洞窟の天井からも巨大なクリスタルが垂れ下がっており、一つ一つが儚く透明な輝きを放ちながら、やわらかな光を周囲に広げていた。


まるで星々が天空から降り注いできたかのような幻想的な景観に、その3人の女子学院生は次の会話に移行した:


「でも………本当にここの区域で精霊がいると思う?扉を通ってきてこんな綺麗な景色ばかり40分以上も見ながら歩いてきたんだけど、一向に精霊の姿は一体も見えてないじゃない~。一体いつまで探してたら見つけられるのよー!?」


「まあ、まあ、焦っていては駄目ですよ、レヴィアさん!先生も言いましたよね、今日は一日中ここでの『精霊狩り』に勤しんでいてもいいって。だから、今はただ地道に前へ進んで、精霊の気配を探りながら歩き回るしかないですよ」


「シルヴィアのいう通りだ。なので、逸る気持ちを抑えていてねー?いつでも異常を察知する途端に戦闘態勢ができるよう注意した方がいい、逆に『世界獣』の方の『餌』になりたくなければなー!」


光がクリスタルに反射し、洞窟内に広がる美しい色彩も印象的なので、気を付けないと我を失いそうになってるんだが、ここはれきっとした『ダンジョン』だ。


見えざる【樹界脈】も流れるし、精霊だけじゃなくて『世界獣』も出る。


だからなのか、警戒を怠らない一番で生真面目なジェニファーの恐れる通りに、


「グラオオオオーーーーー!!」


さっそくおいでなすったと言わんばかりに、ここの広場のようなクリスタル一色の壁がある通り道に、唯一ある向こうの左曲がりの角から爆音のような咆哮が轟いたかと思うと、いきなり普通よりも3倍以上の大きさを誇る紅色の狼が角から曲がってきて真っ直ぐと3人の方に向かっていく!


「きゃ、きゃあああああーーーーーーー!!なにあれー!?」


「おい、レヴィアー!落ち着け―!『世界獣』の襲撃だから戦闘態勢をーー!」


それを見て恐怖と驚愕が混じっての悲鳴を上げるレヴィアーを鼓舞するようにジェニファーが彼女を後ろから退かして前へと庇うように、巨大狼に向かってとある『火炎魔術』を放とうとした!


「『我が敵を滅さんがため声に応じるべし!小炎なりても我の元ー』」


「グラオオアアアーーーーー!!」

間に合いそうにない詠唱を近くまで接近してきた狼の『世界獣』に襲われそうになったジェニファ―に、


「やああーー!!させないよーー!」

ガチャ―――――ング!!!


素早く異空間収納から【魔道武器】である一本の斧を取り出しながらジェニファ―の横から通り過ぎていくシルヴィアは、狼に向かって斜め上一閃の振りをかまそうとした、がー!


頬に攻撃を受けたその狼の皮膚が堅固すぎるか、斧が当たっていてもさほどの切り傷も発生せずに、逆に、


「グラオオアアアアアアーーーーー!!!」


世も終わるような至近距離からの咆哮に、心臓が止まるかのような恐怖を覚える二人。


ジェニファ―の火炎魔術の詠唱が終わったばかりだけど、こんな至近距離でしかも隣の前方にシルヴィアもいる状況では発動することも躊躇われ、その一瞬の隙が如何に致命的だったかを物語るように、


バコ―――!バコオ――――!!

「痛い――!「うぐっ!」」


ジェニファ―もシルヴィアも両方がその巨大な狼によって地面に押し倒され、二人そろって狼の大きく開かれた口の顎を血も滲み出ている両手で押し返そうとしたら、


「も、もうっー無理っ!これ以上押し返せないです!」

「あ、諦めるなシルヴィア!最後まで抗えー!死にたくないんだろうがあー!」


「ううぅう……うぅう……」

ジェニファ―とシルヴィアの命の危機に、ただびくびく、がくがくと全身を震わせながら小さく呻くことしかできない臆病者らしきレヴィアー。


どう見ても状況が緊迫しており、3人全員が成すすべもないまま大型狼の『世界獣』によって喰われることになる間違いなしの苦境だ。

その時にーー!


「出でよー!我が愛熊ベネフォーロッスよー!」


グチャアアーーーーー!!!グチュウーーー!!

「グ~!?グラオオオオ~ウオグーオオッ!!グゴググゴオー……」


大型狼の『世界獣』の後ろから噛みついてきた子熊が見えてきて、その小さい身体に似合わない刃のような鋭さを持つ牙で狼を背中から深々と噛り付きまくり、その度に発生した氷の塊が徐々に毛皮と頑丈な皮膚すべての表面全体を氷漬けにした。



…………………………



……………



オケウェーの視点に戻った:


「大丈夫だったかしら、あんた達ーー!?」

自分の子熊の契約精霊を放った後、タタタタっとあちらへ走っていったオードリーを追いかける俺達は角を曲がり、前に起こった光景を目にすると、


「あぁあぁぁ………お、おーど、おーどりーさまぁー?」


「ふうぅ………さ…さ!…さっきの事は本当に助かりました!助けて頂き誠にありがとうございました、オードリー様!!」


頑丈な青色ガラスみたいな物質でできた床にはオードリーのベネフォーロッスが氷漬けにした狼型の世界獣があり、その凍った姿が脆く見えていて、破壊しようとしたら直ぐに破壊出来ちゃいそうな気がする。


「別にいいわよ、そんなの。たまたまあたくし達が運よく助けが必要そうなあんた達と遭遇しただけよ。別に、あんた達がこの程度の世界獣に手こずるようなことを知ったから駆けつけてきたわけじゃないしー!」


ふんっと鼻を鳴らしたオードリーにそう言われているのは二人の女子生徒のようで、凍った狼の下から立ち上がったその子達にはそれぞれ見覚えのある茶髪ショートや銀髪ポニーテールをしている。


ああ!あの子達は、確かにー!

「オードリー!その子達、うちのB組の生徒だよねー?」


「ええ、そうよ。『クリームゾン・ヴォールフ』一匹に襲われて苦戦してたそうだから、ギリギリ間に合えて助けられたわ」

彼女の側に近づくと、目の前の二人の女子生徒が俺の姿を見るなり、


「オケウェー・ガランクレッド………」


「………………」


どうしたらいいか、分からないといったふうな表情してる二人。まあ、当然だよなぁ……。


なにせ、俺は『呪われた大地』からの新入生だし…。


魔術や精霊が一切がっさい使用できない『あれを除いて、だけど』大陸が出身地だし。

なので、俺みたいな疫病神が近くに寄れば望まないって思ってても不思議じゃない。


タタタタ!

「お、オケウェーさん!無事ですか、みんな!?」


「うん、大丈夫みたいだ、あの二人がな」


「僕達の方に世界獣が襲ってこないのに、いきなりこちらになったとは運が悪いにもほどがあるっすよねー?」

他のチームメンバーも俺達の側につくと、


「いい~?あんた達!」


「はーは~いっ!」


「な、何でしょう、オードリー様?」


「この男、オケウェーはもうあたくしのとと…とも!『友達』になったんだから、あんた達も彼に対してまるであたくしに向かって接するようにして頂戴ー。異論は認めないわよー?」


「……お、オードリー様がそう仰るなら……」

「………ん…っ、分かりました、オードリー様。『彼ら』に対して『も』先に自己紹介致しますね?」


「そうするといいわ」


「では、わたしはジェニファーです。ジェニファー・フォン・アルベリッヒと言って、子爵家の者です」

そう名乗ったのは銀髪ポニーテールの子。心なしか、俺をまたも目にすると直ぐに会釈して、なるべく俺と視線を合わせないようにしてるっぽい?

「あたしの事はシルヴィアと申します。ベールンシュトゥング家の長女で、 ジェニファーさんと同じく、子爵家の出ですよ」


茶髪ショートも自分の名前を乗ると、彼女もジェニファー同様に俺をその視界が捉えると、すぐに目を逸らして極力俺の顔を見ようとしない様子だ。


「じゃ、そこで気絶してる子はー?」

オードリーに指摘されてやっと思い出したかのように後ろを振り向いたジェニファーとシルヴィアがようやくお連れの子の現状を確認できたようだ。


「レヴィアーさんー!」

慌てて駆けつけていったシルヴィアだったけど、


「も、申し訳ありませんね、オードリーさん!そこのレヴィアーがもっとしっかりしていれば貴女様のお手を煩わせるまでもなく3人の連携プレイでなんとかなりましたし、本当に残念です」

弁解するようにオードリーにそう言ってきたジェニファー。


「だから、そんなの気にしないって言ってるわよー。さあ、異例な熟成した『クリームゾン・ヴォールフ』の襲撃でトラウマになっていてもおかしくないから、今のところは先生のところに戻って、精神面でのカウンセリングと気持ちの切り替えが出来てからまたも『精霊狩り』を挑んで頂戴ー!」


「はいです!「分かりましたオードリー様」


気絶してるレヴィアーっていう子を二人で運んでいく彼女達を見ながら、クレアリスが俺の側までやってきて、こういう、


「…気分はどう、オケウェー君?あの二人に冷たくされたこと」


「クレアリス……。…まあ、慣れてると言えば、なんか泣けてくる話なんだが、まあ、そういうものなんだよ、『俺』っていうフェクモからの『呪われた南蛮人』は………みんなと違うこと。そして、当たり前のように魔術ができるここの人達とは別に、その力の恵みを一切享受できない南の大陸にいる『俺達』。さ、差別されても、偏見な目で見られたりとか恐れられる存在として映っていても仕方がない………だからー」


すうー


「ー!?」

真剣に聞き入ってるかと思えば、いきなりその真っ白い人差し指を伸ばして俺の唇へと当ててきたクレアリス。


「もう何もいう必要はないわ。 オケウェー君のお事情は分かるし、置かれた状況の不遇さもよく想像できるわ。だから、あまり『彼女達』からの評価や意見を気にしなくていいは。だって、オケウェー君はー」


ここ、『チームオケウェー』の皆へと見回しているクレアリスは、

「オケウェー君は、うちらの大事な仲間だわ。そうよね、オードリー?」


「この男とは『友達の契約』をしている仲だから、一応私あたくしがサポートしてあげてもいい間柄にはなったわよー。だから、他の有象無象なんてどうでもいいわよ。そうなのよね、オケウェー?」


「オードリー……うん!正にその通りだ!」


「僕もそのつもりでお前の味方やっていくつもりっす!」


「私も忘れてもらっては困りますよ、オケウェーさん!」


「あら、わたくしもですわ。まあ、わたくしのオールズティニア侯爵家は元々、あちらのドレンフィールド家と同じく武芸の家系であり、『実力主義至上』の家訓を心掛けてきた伝統ある古き貴族家なのですから、迷信や信仰心による『心理的思考』や『表面上だけの評価』といった『固定概念』に惑わされない者達ばかりいましてよー?ですから、オケウェーサンがどの出身者であろうとも、それだけで評価する事はナンセンスですわー!お、ほほほほ~~!なので、分かっているなら、早くここで契約精霊を獲得して、わたくしと決闘して下さいなー!そうすれば、貴方に対する『正確な評価』もできるようになりましてよー!おほほほほー!」


「ヒルドレッドまで………」


「ね、見て、オケウェーさん!あなたの事をこんなに分け隔てなく接することができる素敵な子ばかりこんなに近くにいますよ?ですから、他の生徒から何を思われようと、何言われたっていいじゃないですかー!?ほっとけばいいですよね、ね?」


「ジュデイも………」


そうだ。俺はここで3年生まで『精霊術』を習ってマスターするためにここへと入学してきたんだ。


遠路はるばるフェクモの【シンドレム森林地帯】にある我が家を開けてまで、おじちゃんをおいてきたまでに、おじちゃんの不治の病を直すために『死霊魔術使い』であることを隠しながらここに通ってるんだ。


覚悟が決まれば、そしてこんなに素敵な仲間までと知り合ったことが出来れば、後に望むもんは何もない―!よし!


「じゃ、みんな!もっと奥へ進めー!第二階層へ向かうぞー!」


「もちろんです!「うっす!「何偉そうに仕切ってるのよー!?言われなくても分かるわ、ふん!「ふふ、そうね「おほほ~!わたくしに任せればよくてよー?先頭にこの【オールズティニアの若き鋼の撲殺女】さえいればそこのオードリーの力も必要ありませんわね、おほほほ~~!」


和んで和気藹々と友情を育み合う俺達は洞窟の奥へと目指すべく歩き出していったが、最後のヒルドレッドの余計な発言の所為で、


「なんですってーー!?こらそこの無能駄鋼の連敗中ヒルドレ、そこへ直りなさいー!あたくしが今度こそあんたを喋らせないような身体にしてやるわよーー!」


「おほー!できるならやってみて下さいなー!貴女との再戦に臨むために学院に編入してきましたし!」


と、このように、まずはチーム内の仲間割れとかチームメイトによる喧嘩を鎮める方が先決だけどな、まったく!



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