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第九十二話:オケウェーの覚悟

……………………………

同日の木曜日の2月4日、11:30時午後、【静寂の霊群森】にて:


「ジュディ……良くきてくれた。……その顔をみれば、どうやら気づかれずに抜け出してこられたようだな?」


「……はい、…です。あ、あの……」


「うん。大事な話があるから、他に聞こえないように【ここまで】来てもらったんだけど……」


「………」


予想通りの反応だな。緊張しているのか、ジュディの暗い表情を一目みれば分かる程に彼女は本当の意味で緊張していて、今からでも逃げ出していきそうな辛い面持ちになっている。


やはり今までの元気そうな態度が演技か、もしくは自分の本心を隠すための【建前】だったな!


「……【不潔なる醜顔悪臭クエラドリアス】」


「嫌あああああぁ!!そ、そんな名前ーーー!き、聞きたくないですよーーーー!!」


耳を塞ぎながらいきなり取り乱したジュディ。


だが、それでも俺とも約束を必死に守ろうとするのか、ここから逃げ出すのを堪えてそこで蹲り出して両耳を塞いでるだけ。克服しようと皆の前ではあれほど気合を見せてきたのに、いざという時に核心を突く話題をすれば【その有様】とは前途多難そうだな………


「《そもそも、……ジュディが先に昔話について語ってくれたんだろう?あの日のジュディの私室で。……どうしてその時にジュディが自らその名前を口にしても動揺したりせず、普通に話せたのに、今は改まって俺から何かを聞こうとしたら、そんなに……………》」


強引に【短距集団許可中念話】という半径1キロメートルだけ指定した人物達と脳内で会話ができる【物理的無視魔術】で以って伝えるとー


「《嫌あぁ………私と話がしたいなら……、念話を切って下さいよ!そんなのズルいです!》」


それもそうかぁ……焦りのあまり、彼女の許可なく俺の膨大な聖魔力で以って、両者の許可なく魔術が通らなかったはずのこれだったけど、俺の力を駆使して強引にでも頭の中へ侵入できちゃうように【短距集団許可中念話】を無理やり使ってしまった!


それがマナー違反だってことは謝ろう。


「《ごめん!じゃ、ジュディが落ち着くまでにいくらでも待ってやるから。念話を切ってあそこで俺が待つからね!じゃ》」


それだけ言って、あそこの大樹の幹へと身を寄り添ってジュディが覚悟を決めるまで待つと、



………………………………………………………


…………………………………


20分後:


「すゥーーはああぁぁ………すゥーーはああぁぁ…………」


「もう俺の話を聞く準備ができた?」


「………今なら、大丈夫……だと思います。……ごめんね、オケウエーさん…。自分の過去を話した時はそんなに気にしなかったのに、今回はオケウエーさんからその名前を聞いてしまうと、………なんでかいきなり形容しがたい不安感と恐怖感を感じてしまったんです…………」


「あぁ……みんなまで言う必要はない。辛かったんだろう?あの時は?」


「……はいです。……じ、自分の醜くなった姿をもしも、【憧れ】のオケウエーさんに見られたらと思うと…………」


「ん?…いま、なんて言った?」


小さな声で何か言ってくれたジュディだったから聞こえなかったんだ。なので、聞き返すと、


「はーッ!?い、いいえ、いいえ、何でもないですー!さっきのはただ自分が仲良くなった、……【友達】になってくれたオケウエーさんの前で醜くなった姿を見られたくないだけであって、それ以外なことはないです!はい!あ、あはははは……」


なんか困惑したような乾いた小声な微妙な笑いしながら慌ててそんなことをスラスラと口から出したジュディだったが、


「……そんな心配は要らないんだけど?………別に、俺が検証のためにお前とキスをするために人気のないここまで呼んだ訳じゃないけど?」


確かにキスを交わすと発動する呪いだったとジュディから聞いたので、彼女の懸念を払拭させるべくこう伝えた。事実だからな。


俺は本当にそんなことをするためにお前を呼んだ訳じゃなくて、純真にとあることを訊ねるために、相談するために呼んできただけなんだよ。


だって、なるべく早くジュディのそんな理不尽な呪いを取り除くためになんとかしてやりたいんだもん!


「……そ、そう……ですかぁ……」


ん?なんか落胆したような、複雑そうな顔になっているジュディなんだけど、どうしてー!?

そこは喜ぶべきだろう!?友達とはいえ彼氏でもない俺と接吻をしなくて済むってことを!


「……覚悟が決まったなら俺も話すことにしたいんだけど、じゃ、………どこから話せばいいのやら……」


ヤバい!さっきジュディのことをあれこれ言うけど、いざ自分の番で【あれ】について話すとなると、なんか自分でも緊張してきた!………だって!しょうがないだろうー!


【あれ】について話してしまったら、自分が本当は【死霊魔術使い】であるということを自らジュディにばらすようなものだし!


でも、話すかどうかもう覚悟を決めてきたのに肝心な場面に臨んだら尻ごみしちゃうとか情けない限りだな、俺という男は!


どうやら覚悟が要るのは俺も同じなので、すうはすうはと深く息を吸い込んでは吐き出すのを繰り返すと、


「ジュディ………お前は、【人の魂】を人工的な………器へと移植させる……【魔術】があることを知ってるのか?」


まずは、ジュディが【あれ】についてどこまで知ってるのか、探りを入れるためにこう聞いたんだけど、


「……えっ?そんなこと、……可能にできる魔術がありますかー!?」


俺の言葉を聞いて意外そうな反応を見せたジュディなので、どうやら【死霊魔術】における【あれ】のことを知らないっぽいようだな。そんな調子だと【死霊魔術】についても知らなさそう...なら!


「ジュディのその呪い……、古の魔神であるクエラドリアスが関係するんだってな?……でも、大体その呪いって、遥か昔に生きた彼が現代の今に生きてるジュディと直接に対面したり遠距離呪術なんかによってかけたわけじゃないだろう?」


実際にもう死んでいたようなもんだったからな、クエラドリアスって。死んだのに、なお彼由来の呪いがずっと解除されずにジュディの中で健在って現象は凄いとは思うけど。


「はいです……昔、マックミュレーンさんに調べてもらった結果、……どうやら私の身体にかかっている呪いは遺伝子的に受け継がれてきた【呪痕】の一種で、私の父の家系であるトンプソン家から代々と継承されてきた呪いらしいです。私の血液の中で流れてるものです……それも、子孫である私の番だけで後天性に呪いが活発化され、幾星霜な長い時間を経て何世代か続いてきた今、私と【前に何人かのトンプソン家な人間】だけが運も悪くこんな酷い、…………姿が変貌する、……【あれ】になっちゃうんです!」


ふむ。大体想像した通りのことだな、お前のその呪いの本質って。


元凶である魔神がもう死んだというのに、尚も彼を発生源に何世代も前からかけられた呪いがこうも現代に生きる子孫のジュディにまで被害が及ぶとか、理不尽この上ないぞ、こん畜生な魔神めーー!


アフォロ―メロといい、クエラドリアスといい、魔神ってのはクズばかりしかいねえのかよーー!?


あ!ヤバイ!怒りでついつい脳内の言葉遣いが悪くなってしまった、まるでゴロツキみたいに!反省反省!


まあ、一応は真摯的な良心ある魔神もいたからね、その、……ジュディが話してくれたシェリアっていう【蛇人族】のご始祖であるミカゼーという男は…


ミカゼーという例もあったので、全ての魔神が極悪人って訳じゃないことは明白だな!


なら!


「じゃ、その呪いっていうのは、遺伝子にかけた呪いであって、それによって形成された【身体】にまで影響を及ぼしていて、呪いが発動する際はその遺伝子で創生された【身体】が変貌したという仕組みなんだが、………実際には、つまり、………なんと言えば分かりやすくなるのかな………つまり!所詮は、それは遺伝子にかけた呪いであって、別にジュディ個人の魂にかけた呪いという訳ではないだろうー?つまり、何が言いたいのかというと、その呪われた遺伝子のある【身体】からジュディの魂だけを抜き取り、別の【白紙の状態】で生成された新規なる遺伝子がついている【人体的な器】へとお前の魂を移植させることが出来れば、ジュディの呪いも自然となくなり、新しい生命体として再誕生させられるんだろうー?」


「……………そ、そんなこと…………そんな奇跡的なデタラメ過ぎることって、本当に出来ちゃうとんでもない魔術があるっていうんですかーー!?」


俺の明かした事実をまだ信じられない顔してるジュディが驚愕とも興奮ともつかない表情を浮かべなら俺の近くまで寄ってきて両手を俺の両腕へ添えてきたら、


「ああ、そうだよ。【とある魔術】なら、それが出来るんだが……」


「【とある魔術】?それって何なんですか教えて下さいよー!?わ、わわ私、もうこんな呪いなんて吹き飛んじゃえばいいのにー!って常々思ってきたんですからーー!!」


希望を見出した顔してるジュディが縋るような切実な思いで俺の身体を強く揺すって聞いてきた。


いよいよだな、こんな時が!


あの胡散臭いな危ないオーラ出してるぜナテスの野郎はともかく、学院関係者限りだと、イリーズカ先生以外にも、ついに俺の秘密を知ってもらう時がこんな短期間で出来てしまうなんて………

しかも、同じチームメイトのジュディにー!

どうするんだよ、俺ーーーー!?

本当に、ジュディに対して【死霊魔術】について話すのかよーーーー!?

彼女の呪いを直したいのは山々なんだが、後からの立ち回りも考えねばならんとなると、慎重に動かざるを得ないな、こんな場面になっていてもー!


というか、もし俺からの覚悟が決まっていても、呪いから解放されるかもと聞いたジュディがそんなに必死になっているようだが、それでも怖くないのかー!?


だって、【魂】を移植させるようなもんなんだぞー!?


一般的に言えば、つまり、たとえ俺の魔術を通して痛みが一切感じなくなるような昏睡状態の元で発動できても、一度は死んでもらってからは別の【人工的身体】へとジュディの魂を転生させるような仕組みになってるぞー!


それでも、いいんだな!?


.......だって、呪いが発動するのはキスされる条件だけだし。

そして、変貌した姿といっても24時間後は元通りに自動的に直るし。


つまり、もしジュディが強く望めば、呪いを直さなくてもこのまま一生すれば、未知なる怖い魔術に思えるはずのこれを使ってまでジュディを一度死なせるような魔術で魂を移植させる必要ないんだもんね。


他に何かがあって、ジュディをそんなに切羽詰まった心境にさせてるのー!?


もしかしたら、恋愛が出来ない身体より、魂を移植させた方が一度死する価値があるんだろうな!

だったら、ジュディの意志を組んで上げるべく、俺もジュディの呪いを完全に取り除いてやろうー!


別の身体へ、俺の【死霊魔術】を通しての特製【ホムンクルス】へと魂を移植させることでな!


前のイリナ戦でもイリナがあんなバケモノ姿になる前に、俺が斬首した後は彼女の魂を抜き取ろうと魂を移植させることで救うことも考えたことあったっけ?


イリナを自分のゾンビーとして変えてみようって冗談半分で言ったこともあった場面だったな、あははは....


でも、最後のイリナは、彼女の魂があの首輪?だったっけ、によって別の小さな霊体的の器へと強制的に移植させられ巨大化されたんだったな!【聖体正義戦獣】として!


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