第九十三話:誰しもが【裏の顔】があるもの
「ねえ、オケウエーさん!どうか教えてよ!私、もうこの身体が嫌で嫌で今までみんなに秘密にして隠しているのはもう疲れているんです!あんな姿を万一にチームメイトのみんなに見られてしまうのはもっと怖いんです!ですから、たとえこの身体を捨てて新しいのに生まれ変わってもいいから、どうか、その方法を教えて下さいよ!」
「………」
黙っているままの俺だったので、俺の身体を両手で揺さぶって救いを求めているジュディなのだが、
「ねえ、オケウエーさんー?どうして!?どうして何も言わずにただ私を見つめているだけですか?なんで……だよ.......」
「……ジュディ…、俺……は…」
どうやら、覚悟を決めなければならない時がくるようだ。
胸が締め付けられる思いの潤んだ顔になってるジュディを見かねる俺がやっと決心がついた瞬間だ!
ジュディに、……自分の本当の正体は……実は世に疎まれるようになった、天頂神を崇める一般人の者ならば忌むべき【死霊魔術使い】であると!言おうー!
「ジュディ、実は!俺のことは!………本当はー」
「あいややややああああああーーーーーーーーーーー!!?」
バコオオオ―――――――――――!!!
ゴド―ッ!
「「---!!?」」
俺が言い終える前に、いきなり空から叫び声が聞こえてきたかと思うと、今度は俺達の近くを通って空から落下してきた【誰か】がいるようだ!
何事かと思い、あそこに視線を向けてみると、
「いたたたぁ……これだから、加減を知らないゲンナドーリエルちゃんは困ったものだねぇ。…まったくぅ……」
ん?そこにいるのはー?
エ、エルヴィ―ナ 生徒会長ーーーー!?
茶髪セミロングの髪を横に一つのドリル状に結い上げた彼女は、髪の毛と......大きなお胸を揺らしながら起き上がると、
「えー?……や、やっほぉー!オケウエー君とジュディ君だねぇ!こんなところで二人っきりと遭遇したのって、はてさてはもしかしたら隠れてのデートなのかなぁー?いやあ~ん、オケウエー君も隅に置けない男だねぇー」
俺達がジュディと深刻な話をしている途中で、いきなりこんなタイミングで偶然にも森の中で空から降ってきたように修行していた会長と出くわすなんて……この時だけに限ってご登場とは何事だー!?
「……あの……会長こそ、こんな真夜中になんで一人だけで【静寂の霊群森】 で修行してるのか?しかも、俺とジュディが大事な【対氷竜戦】向けての作戦を議論してる最中にいきなり乱入してくるのは……」
「乱入とは人聞きが悪いィねぇ!ボクはただゲンナドーリエルちゃんから新しい技を学んでいる途中に強烈な練習攻撃に遭い、愛しき雷の豹に突き落とされてきたってだけなのに~~!」
「嘘つけ―!会長って前に見せてくれた【あれ】ー、つまり、【神隠し】の精霊魔術があるじゃないかー!確かに、『自身の姿を隠せるだけじゃなくて、主であるボクの指定した『人物』と『物』を他の人の目に映れないようにできること』って言ってたんだったっけ?そんなので、俺達の会話と訓練を覗き見したり盗み聞きしていた算段だったんだなー!?」
こればかりは忘れようもない!
俺は直接会ったことある人の名前と情報しか簡単に覚えていないので、たとえあのマックミューなんちゃって人の名前を最後まで覚えてなくとも、会ったことあるエルヴィ―ナ 生徒会長なら運よく大半の情報と言われていた言葉だけはっきり覚えているんだぞ!
「オケウエーさん!いくら何でもそんな言いがかりは良くないですよねー!?単純に訓練の最中は偶然に私達の近くへ叩き落されたって会長が言ってただけかもしれませんよー?」
ジュディにそう諭された俺だけど、そんな見え透いた嘘などで俺は騙されん!
だって、落下してくる直前までにしか会長からの聖魔力を感じられなかったんだもん!
同じこの場所にいるはずなのに、近くの空に浮いていたはずの会長の聖魔力を感じ取れないのは明らかにそれを隠蔽できる【神隠し】も使っていたに違いない!
「ノーノーノー!オケウエー君。確かにボクはさっき、【神隠し】を使っていた最中だったんだけどぉ、別にきみ達を気づかれないままで覗き見したりした訳じゃないんだよぉ?偶然にボクの精霊と修行してるところを愛しき雷豹によって突き落とされたんだからぁ~、きみ達が近くにいたことすらボクが集中のあまり認知できてなかったぐらいだよぉー!」
そんなの怪しい!
………怪しいけれど、このまま押し問答を続けていても埒が明かなそうなので、白を切るつもりでいるみたいな顔してる会長の言い訳を無視し、
「はいはい。分かったよ、会長さん。……はああぁぁーー。………まあ、氷竜討伐任務の決戦日まではう少し残りの時間があるし、興をそがれた気分なので、ジュディに話の続きは改めて別の日で話すけど、分かったな、ジュディ?」
「……あ、はい、……です。……大事な話だから二人っきりの方がいい、…ですよね?」
どうやら、ジュディも自分の【顔が醜くなる呪い】について隠し通したい一心なので、俺と話を合わせたみたいでほっとした!
「そういう訳だから、修行中で叩き落された会長さんは気を付けて修行を続けるなり寮へ戻るなりしてていいよな?今度、『他の誰かの訓練の邪魔にならないように』、ね?」
皮肉のつもりで揶揄ってみた俺に、会長も苦笑しながら俺達が去っていくのを怪しい笑顔のままで手を振って見送るだけだった!
さっき、どこまで盗み聞きしていたか定かではないが、まさか【愛の大聖霊イーズベリア】を持ってしてもエルヴィ―ナ会長が【神隠し】を使っている時の聖魔力の波動をまったく感じ取れなかったなんて…………
3年生の会長って本当に手練れ過ぎている精霊術使いで、何年も前から上級精霊を持っている熟練度高い使い手だけじゃなくて精霊との相性も抜群かもしれないから、そう易々と技の練度を極限まで極めてイーズからの探知能力をも上回れたんだな!
まあ、何はともあれ、今は俺が死霊魔術使いという事実だけを聞かれずに済んだのが不幸中の幸いとでも言うべきだろうな、はははは……………
さすがに別の日で話を続けると言ったばかりの俺だったので、大人しくなったジュディを連れて、俺達はお互いに無言のまま森を出て、寮に戻っていくのだった!
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…………………………
生徒会長の視点:
「ふああーー!さっき乱入してきて正解だったねぇーー。お蔭で、未知なる【死霊魔術】の怪しい術で我が学院の生徒の一員であるジュディ君の魂を別の器へ移され、殺されずに済むのぉー!」
「でも余計な世話だったろう、このお節介女は!お陰でこの立派な雷豹である俺様にまでテメエの嘘に付き合わなきゃならんかったぞーー!?」
「ごめんめんご、ゲンナドーリエルちゃん!でも仕方なかったんだよぉー。ボク達の大事な学院生を訳の分からない死霊魔術で命を落とさせてはいけなかったんだぁ。もし何かの手違いがあったりしたら、オケウエー君にそんなつもりはなくてもジュディ君を手強い無差別殺人なゾンビーに変貌させられるところだったんだよぉー?止めたことは正しい行為なんだぞぉ?」
森の中で、ボクは目の前に、とある色白肌でイケメンすぎる長髪のスリム体形している執事姿の男性と対面して会話してるんだぁ。
「まったく!この間はやっと進化姿として格上げできた俺様だってのに、最初の仕事が主の嘘つきに付き合うことになるとはこれ以上の屈辱はないぞー!何千年も前から存在してきた俺様の名誉に、小童なテメエがいつまで泥を塗って気分が済むのか―!このビッチ!」
そう、この男こそは、先日の激しい秘密の訓練でボクが自分の契約精霊、【雷豹ゲンナドーリエル 】をやっと人型化した【進化姿】にまでレベルアップした者だよぉ。
上級精霊だけが【進化姿】としての最終段階の進化を遂げ、人型にまで自身の身体を自由に変えられる状態のことなんだねぇー!
「次はろくでもない仕事を押し付けられたら承知しないからな!テメエ!」
そして、……見ての通り、ボクの精霊ってばね、……その、口が悪くて反抗的な気性荒い【雄】なんだねぇ~。
最初は扱いに慣れるまで苦労したけれど、今となっては暴言を吐きながらもちゃんと言う事を聞くようになったのはせめてもの救いとしか言いようが……
でも!
「おっと、口を謹めよねぇ、『ボクの愛しき雷豹ちゃん』~!」
ドサ―――――!
そう言いながら、学院一の美少女生徒会長と自負したボクが自分のルックスに負けないぐらい端正な顔してるそのイケメンの顔面を思いっきり蹴り上げたぁ!
「いてえー!?」
そしてー!
「黙れ、クズ猫が!これからはボクの指示に従ってもらうからねぇ!さあ、服を脱ぎなー!」
「は、はいィ~~」
そう、この我がままな精霊の扱い方は至ってシンプルだよぉ。
このゲンナちゃんはねぇ~~、根っこからのマゾ―なんだから、こうして女の主人であるボクにきつく命令されたり、乱暴に扱われたりしたら、すぐに言う事聞くんだもん!
「じゃ、今度はボクのこれでも舐めて銜えたりするんだぞぉ!いいなぁ!?」
それだけ言うと、ボクは自分のハイヒールの皮ブーツを彼の顔に近づけて、舐めるよう強制したのだったぁ!
いいや~~ゾクゾクするんだねぇ、生意気な口悪い精霊を懲らしめて罰としていたぶったり辱めたりするのってぇー!
進化姿になる前でもずっと猫ちゃんの姿で蹴ったり足を舐めさせたりしてきたんだったからねぇ、このボクが……
「れろれろ、くっちゅ!」
「ひょひょひょ……」
でも、こんなのを書記のマーリエラ君に見られたらきっと驚かせちゃうかもねぇー?
だってほら、……ボク達の、………【本当の自分】を知られちゃうんだもん。
これで、正体を隠している死霊魔術使いのオケウエー君と顔が醜くなったらしい呪いをかけられてるジュディ君のことについても何も言えないよねぇ~。
ボクも、『隠し事するその仲間入り』なんだからねぇ~、ひょひょひょぉ!
でも、いつかは精霊とだけじゃなくて、人間の男、……理想は彼氏かぁ、に対しても虐めてあげたいものだねぇ、ひょひょひょぉ………
豊満な巨乳持ちでもある美少女会長であるボクは、自分の胸を今度は彼の整った容姿端麗なイケメン顔まで近づけて、お楽しみタイムとしゃれこんでいくのだったぁ~~いやぁあん~っ、ひょひょっ!
やっぱり、イケメンは美少女の食い物になる定めであるべきと相場が決まったんだねぇ~、ひょひょひィひィ~~!
「念入りに舐めていきな!」
さあって、いつか、オケウエー君も自分の食い物にしたいと思うんだが、何か良い手はないかなぁ、ひょひょ!
なにせ、【精霊魔術使い】や【死霊魔術使い】どころか、普通な男である執事や道行く人に対しても屈服させてみたことはまだ一度もないんだからねぇー。
所詮、自分はまだまだ未熟で、自分の契約精霊とだけしか本性を見せない臆病女だってことぉー!
未だ処女だもんねぇ、ひょひょひょっ!
「それにしても、やっぱり【愛の大聖霊】の能力は伊達じゃないんだねぇ」
さっき、【神隠し】をゲンナちゃんに発動させたんだけど、イーズベリアの放った探知オーラが強すぎて、こんな短距離の範囲内では長い間は保ちそうにないねぇ!さっき、試してみても息が絶え絶えになりそうだったしィー!
だから、仕方なく発見される前に、【神隠し】を解除してあたかも自分が訓練したから叩き落されたって装うしかなかったんだねぇー!
だけど、【神隠し】は言わば、ゲンナちゃんの基本中の基本的な【精霊魔術】に過ぎないィ!
全体能力として、まだボクの方がオケウエー君より何倍も強いことは明白だねぇ、この時点だけはぁー!
………………
………
こうして、歪んでいる性癖を持っている生徒会長、エルヴィ―ナ・フォン・ミラクリーズ は、自分の人間姿となったばかりの精霊に向かって、奉仕を強要している最中であった!
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