44.獣大陸武闘会予選
武闘会当日。
「思ったよりも人が居るな。これはもしかしたら席が確保できないかも」
「そう。まあ別に見やすい位置で立ってればいいんじゃない?どうせ休憩が入るでしょ」
俺と王女は観客席から四人の姿を見つけるべく見やすい位置を捜索していた。
俺たちが無事座る事が出来たところで会場内に声が響いた。
『さて皆さんお待ちいたしました!これより第42回獣大陸武闘会を始めさせていただきます!なお、今回の実況は私、シラレ=コリーが努めさせていただきます!』
その言葉を皮切りに観客席がヒートアップする。ちなみに大会はまだ開会式をはじめたばかりである。
周りの観客たちと違い俺と王女様は闘技場の外で買った屋台の食べ物に手をつけて待っている。お金は前回魔王城に戻ったときに質屋で火竜やトロルなどの死体を買い取ってもらったので抜かりは無い。
「あとどれくらいで予選が始まるのか。正直この熱気の中を何時間も居るのはつらいものがあるぞ」
「確かにね。まさか開会の挨拶だけでここまで観客のテンションが上がるなんて予想外よ」
実際、周りの人たちは男女問わず拍手喝采を浴びせているので実況の声が聞こえるのが軌跡な位である。
『ではまず予選の説明をいたしましょう!ルールはみなさんも知っての通りのバトルロイヤル!それぞれのリーグで生き残った四名のみが決勝へと進出できます!』
「へー、じゃああの四人は少なくとも全員予選は突破できるのか」
「理論上はね。あの四人がどれ位強いのかは知らないけどそれでも四人より強い人だって参加してるでしょ。だったらもしかしたら誰かは予選で落ちるかもよ」
「その場合は予定通り罰ゲームを執行するさ。少なくとも予選落ちを後悔する位には」
『では第一リーグの選手は入場してください!このリーグでの注目選手はここリワール獣国の騎士団団長、獣人のヘイスだー!彼の圧倒的な速さについていけるものは現れるのか!』
へぇー、国名初めて知った。そんな名前だったんだ、リワール獣国。
「あいつ、強いね。あの四人、アイツには負けるんじゃない?」
王女様はあの四人が負けると思っているらしい。まああいつらの対人経験が足りない以上は可能性はあるかもしれないが、それでもスペックの差ではかなり差がある以上問題は無いと思う。
『では第一リーグ、開始っ!』
その掛け声で試合が始まった。どうやらこのリーグには四人は居ないようだ。
試合はそれぞれが殴りあったり切りあったりしているが、多くの人物が片手に盾を持っている。獣人のヘイスとやらは盾を持たず両手に大剣を持っている。
そのヘイスはほとんどその場を動かずにその攻撃をいなしながらカウンターを食らわせている。先ほどの実況が煽ったせいなのかどんどんやられているにもかかわらず相手には困っていないようだ。
「ヘイスってヤツ、いい動きをしている……?」
「ん?どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
俺は視界の端に見つけた人物に目が移った。
そいつはフードを深く被っており、その白いローブのせいで姿見は確認できないが、俺にはそいつが何らかの“魔法”を使用しているように見えた。
だが審判からのコールは無い。ならばアレは魔法ではないのか、それとも審判の目か何かを掻い潜る何かがあるのか。俺はじっと目を付けていた。
そいつがそれを終了してすぐに第一リーグの四名が決定した。白ローブとヘイスを含めた四名だった。
『続いて第二リーグの選手は入場してください!このリーグでの注目選手は異世界からの放浪者!そのすさまじい剣圧に皆は翻弄されるのか!イズミ=コタロー!』
「!?ゴッホ」
「大丈夫?食べ過ぎたんじゃないの?」
俺は思わずのどを詰まらせた。
泉小太郎はうちのクラスのメンバーである。何故彼がここにいるのかとは思わなかった。というよりはやはりなという思いが強かった。
「なあ、お前、もしかしてだけどあいつらと一緒にこの国に来たんじゃないか?」
「えーっと、そうそう、たしかアイツも居たね」
「やっぱりか……」
俺が大和と再開したとき、アイツは何人かは王宮から追い出されたといっていたが、それは王宮側の付いた嘘だと思っていた。だけど今回、少なくとも複数人は話通りに追い出されている。
王様、馬鹿なのか?
『第二リーグ、開始っ!』
その言葉と共に多くの者が泉へと立ち向かっていく。
彼の獲物はツヴァイハンダーと呼ばれる両手剣だ。その重さは軽く一キロを超え、約一.五メートルの刀身を振り回して他の参加者を蹴散らしていた。
周りを見渡せば、あのツヴァイハンダーに巻き込まれない位置で《魔法剣士》の横田さんが戦っていた。彼女はグリモアに近い長剣と〈身体強化〉の魔法で安全に一人ずつ倒しているようだった。
試合が終わると二人の他に獣人の参加者が二人残っていた。
自分以外の生き残りを確認しようとした泉君と横田さんの目が合う。
「…………」
「…………」
「……マジですか」
「?何かあったの?」
「うん、まあ、何かあったかと聞かれれば何かあった」
二人は見つめあったまま控え室へと戻っていった。
続いて第三試合、大和と下上君が当たったが二人とも無事予選突破。
そして第四試合。
「日野君のほかには、恐らく王宮から追い出されたであろう三河君と留萌さんか。なんでこのタイミングで彼らと会ってしまうんだろうか。せめて俺一人のときが良かったんだけど」
「はあ、もう手遅れじゃないの」
「だよね~」
当然彼らは勝ち上がったのだが、予想通りというかなんと言うか、やはりそれぞれに気づいてしまったのだった。




