30.相乗り馬車
四章です。
>非戦闘スキル>生産補助スキル>調剤スキル>スキル名:錬金術
【基本スキル《錬金術LV.1》を入手しました。
〈抽出〉〈合成〉を入手しました。
知識内に存在する作成可能なレシピを記録しました。】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お客さん、もしかして相乗り馬車は初めてですかい」
御者の魔族の男が訪ねてくる。
その問いに俺はコクンとうなずく。
「というよりは馬車自体が初めてだな。だけどまさかここまで揺れないものとは思わなかった」
「ははは。そりゃあうちは馬車本体にも護衛にもお金をかけてますからね。伊達にも高いだけのことはあると思いますよ」
「なるほど。あれは高かったのか。手持ちを見て判断してたから気づかなかった」
「お客さん、もしかしてどこかの箱入り貴族ですかい。お金に疎いのに馬車に乗ったことがないとは」
「そういうわけではないんだがな」
二人は他愛もない会話をしながら大陸へ進んでいく。
「そういえばお客さんは魔族じゃないようですが奴隷ですかい。それとも生まれが魔大陸とか」
「どちらも外れ。大外れだ」
それは残念だ、と御者の魔族がケラケラと笑う。
「それで? この先の森林大陸にどのようなご用事があるんですかい」
「あそこは特殊な薬草が多いからもしかしたらエリクサーとか最上の解呪ポーションがあるかと思ってな。まあ、なければないで材料だけでも揃えられればあとは作ればいいだけなんだが」
「作ればって、もしかしてお客さんは凄腕の錬金術師ですかい」
「違うが、錬金術はできないこともない、と言ったところだ」
御者は珍しそうな眼を向けたのち、そうですかいと馬を進める。
せっかくなので俺に馬術を教えてくれないかと頼んだところ、企業秘密と言われてしまった。
「お客さん、頑張ってくだせぇ。何せエルフは気難しいことで有名ですからね」
「ああ。あんたもエルフとの交易、頑張ってくれ」
「――!お客さん、どこでそれを」
「ただの御者が元手なしにここまで豪華な相乗り馬車を始められるわけがないだろう。だからおそらくは元商人、もしくは今も商人なのかもと思ったわけだが、一番の理由なら『顔に書いてあった』だ」
「……ははは、お客さんにはどうやら人を読む才能があるようだ。どうです、私と商人の道を目指しませんか」
「お断りだ。俺に商人は似合わない」
「ははは、その通りだ」
そうして俺たちが話していると、護衛の一人がそれに気づいた。
「おい、なんだあれ」
「あー、多分魔物の群れじゃねーか。そんなの俺たちにしてみりゃ――」
「おいちょっと待て、あれってトロルの群れじゃねーのか」
「……マジかよ。トロルの群れなんて聞いてねーぞ。そもそも何でこんなところに出るんだよ。あいつらの生息域はもっと 東だろ」
「悪いな御者さん、俺達でもあのトロルの群れは相手にできない」
そういって彼らは我先にと街へと引き返していった。
「ほぉー、あいつら足はやいな」
「ははは、あんなの私からしてみればまだまだ赤ん坊ですよ」
「まあそれもそうなんだが。それで?あれはあんたで対処できるのか」
「……微妙ですね。目視だけで二十、おそらくは百以上いるでしょう」
「つまりあんたでも対処できないと」
「ええ。ですが彼らを逃がすだけの時間は作れますよ。なのでお客さんはこの馬で街に引き返して――」
御者がそう言ったところで俺は馬車から降りて自身の愛剣を取り出す。
「それは魔剣ですか。それもかなりの業物の様で」
「当然だ。なんて言ったってまだ第一世代だからな。最高のパフォーマンスが期待できるさ。な、グリモア」
<もちろん。グリモアはマスターが使えば使う程強くなる。期待してくれていい>
「じゃあ久しぶりだしあの雑魚達で準備運動と行こうか」
<了解>
俺はそれなりの動きが出来るように《無魔法》の〈身体強化〉を発動させる。とはいえ、このままグリモアを振ればオーバーキルどころか余波でいくらか逃がしてしまう。それは俺のステータス的に見逃せない。
よって俺は二つ目の魔法をかける。
《風魔法》の〈風圧緩和〉。
名前の通り、使用者の半径五十メートル内は風が極限まで弱くなる。
さすがに限界はあるが台風程度なら防げるのならそれで十分だと俺は判断した。
千を超えた素早さについてこれるものはおらず、瞬く間にトロルが真っ二つになっていく。
それを見ていた御者もさすがの圧倒的な強さに声が出なかった。
俺が最後の一匹を屠ったとき、辺りは道をふさぐトロルの死体の群れが転がっていた。
<マスター、これどうするの>
……本当、どうしようこれ。
俺としては燃やしてもいいけど、貴重な魔力だから出来るだけ使いたくないんだよな。
せっかくMPが六桁もあるのにもったいない。
「お客さん、もしよければこちらでいくらか引き取りますよ。さすがに全ては持ち運べませんけど」
「おお、助かる。俺としてもこれ全部は圧迫して他が入らなくなるから嫌だったんだよ。ただでさえドラゴンが入ったままなのに」
「ドラゴン、ですか」
「ん、ああ、こっちの話だ。気にしないでくれると助かる」
「ええ、どうやらお客さんはとんでもない人たちの様ですから。代わりにうちのメンデル商会をご贔屓に、お願いしますね」
「了解だ。今度寄った時には何か買わせてもらうとするよ」
俺たちはトロルの死体を回収したのち、馬車に乗って森林大陸へと馬を走らせた。
気づけばPV五万越え!!ありがとうございます。




