29.【洗脳】
その部屋は魔王城の監獄、そのさらに奥に位置する。
そこに入れられているものは優秀な才能を持ちながら魔王に楯突いた者たちだ。
その中でも異彩を放つ者がいた。
彼らは俺を見るなり飛びついて来ようとするが途中の檻に阻まれて近づくことが出来なかった。
「……恐ろしいな。【洗脳(最上)】使える奴とか人間側には一桁しかいないと聞いたんだが」
【洗脳(最上)】は最高位の状態異常だ。
よって解呪に必要なスキルも〈状態異常完全解呪〉となるのだが、それの取得に《聖魔法LV.10》が必要となる。
残念なことに俺は《聖魔法LV.5》であるし、魔族で《聖魔法LV.10》まで極めているものもいない。
よって今の俺では彼らを救うことが出来ないのが分かった。
俺は彼らに【情報眼】を使う。
ここに来るまでに改めて【情報眼】がどのようなものか調べてみた。
すると面白いことに、『視界内であればどのような情報でも知ることが出来る』という事が分かった。
例えば、『【洗脳(最上)】によってかけられた内容』だったり、『それを掛けた人物』だったり。
実際に彼らに使ってみると、
「――――っ!」
予想外の量の情報が視界をよぎっていく。
その気持ち悪さに思わず【魔眼化】を解いてしまう。
「おい、ヤナギ殿、大丈夫か?」
「……ああ。ちょっとヤバかったけど、今良くなった。次はちゃんと情報を絞らないと」
さすがに二度もあれを見るのはつらい。ガッツリ酔って三日は安静にしなきゃならないレベルだ。
「じゃあ改めて」
今度は同じ手を味わわないよう、対象を明確にして【魔眼化】を行う。
【洗脳(最上)】にかけられた指示:
・柳 真一の捕縛
・魔物の駆除
・魔族の皆殺し
【洗脳(最上)】の使用者:
マリア=クレイニー
【洗脳(最上)】の解呪条件:
・〈状態異常完全解呪〉の使用
・柳 真一の捕縛
・【洗脳(最上)】での上書き
・エリクサー、解呪ポーション(最上)の使用
「――っと、今はこれくらいが限界か」
これ以上使えばまた軽く酔ってしまいそうだ。こればかりはだんだん慣れていくしかない。
「どうだ、目的は済んだか」
「ああ、今は十分だ。ただ、また後で来るかもしれないとだけ言っておく」
「分かった。ではここのカギはしばらく私が持っていよう」
俺とハウラルはその部屋を去った。
あとに残ったのは興奮状態の元勇者六名とその他の重罪人のみだった。
「俺は旅に出ようと思います」
《隷属》で逆らえなくなった六人とハウラル、ミラの前で俺は宣言した。
「それは何か目的があってのことか。それともただのんびりと街を巡ってみたいと言う話か」
ハウラルが疑問をぶつける。
「目的はエリクサー、もしくは解呪ポーション(最上)六本の入手か、作成。副次的な意味としては他国の情報の入手と観光、ってところ」
「……できればヤナギ殿にはまだここに残っていてもらいたいのだが」
「あきらめろよおっさん。柳が目的をもって行動した日にはもう誰も止めらんねーよ」
倉場の言葉を聞いてハウラルは「仕方ないか」とため息をついた。
「それでやー君、まさか一人で行くつもりじゃ無いよね」
「そりゃあもちろん一人で行くけど」
「ダメだよシンイチ! 一人だと何かあったときに大変だよ!」
「大変? 例えば?」
それを聞いたミラはうーん、と首を捻ったのち、
「そう、料理!」
「向こうでは一人暮らしだったし大丈夫だ」
「向こうのこと何も知らないでしょ! 私がついて行けば」
「ミラ嬢! 魔王城はいったいどうするのだ!」
「というか半年も書庫で調べものする時間あったし、レベル上げしてたミラよりは色々知ってると思うぞ」
ことごとく論破された。
結局旅には俺だけが行くことになり、他の者たちは城で非常事態に備えて待機することになった。
一部抵抗したものもいたが、《隷属》だったり責務だったりで行くことは叶わなかった。
そして翌日、いつの間にか待機していたメイドや執事さんたち、皆に見送られて新しい大陸へと向かった
二章の章タイトルを変更しました。
内容については変更はありません




