26.魔王城防衛戦②
あちらこちらから悲鳴や指示が聞こえる――ことは無い。
ハウラルに事の内容を詳しく教えていたことで事前に作戦が立てられたからだと思う。
別にハウラルに『知り合いなので生け捕りにしてくれ』などと言ってるわけではないのでもしかしたら全員死ぬかもしれないが、その時は甘い考えでラスボス戦に挑もうとした彼らが悪いってことで。
え、俺?いや、だって彼らに仲間意識無いし。
うーん、それにしても暇だ。
魔王様はいつ勇者が来てもいいように玉座にお戻りになられました。
なんか暇つぶしになる事はないかなーと考えているとハウラルが大扉を開けて玉座の間に入ってきた。
え、あの人どうやってあれ開けてるの?確か俺よりも力なかったと思うんだけど。
もしかして力と攻撃力って比例しない!?
「魔王様! 勇者たちの捕縛に成功しました!」
「へー、それってつまり私の出番が無くなったってこと?」
「え?ええ、まあそういうことですね」
それを聞いた瞬間魔王様は明らかに不満げな顔をした。
「なんで。私せっかく頑張って強くなったのに出番なしって酷い!」
気持ちは分からなくもない……戦闘狂じゃないから気持ちは分からないけど、おいしそうな食事を目の前で分捕られたみたいな感じなら理解はできる。
俺だって昼食の弁当を玲奈に食べられたときはイラッてきたもん。
「そういえばハウラル、お前は誰だ」
「……それはいったいどういう意味ですか、シンイチ殿」
二人の視線が交わりあう。
そんな状況でもブレずに不貞寝しようとする魔王様、さすがです。
「つまりはそういうことだよ、偽物」
「偽物……ですか。それは証拠があっての物言いと受け取っていいのですか」
「証拠って、裁判じゃないんだからさ、いい加減認めなよ、王女様。こっちは疑ってるんじゃない、確信があって言ってるんだからさ」
その言葉に偽ハウラルは慌てる風もなく堂々とした態度のまま魔法を解いた。
そこにはかつてのトラウマになりかけた人間――王女様がドレス姿で立っていた。
「お見事。さすがは私の運命の人」
王女様は嬉々としてその言葉を紡ぐ。
「ですが、ダ・メですよ。そんなロリッ子に半年なんて時間を与えちゃ。あなたは私だけを見ていればいいのですから」
「悪いがあいにくにもヤンデレ娘は彼女候補には受け付けてないんだ。大人しく王城に帰ってもらえるとありがたいんだが」
「そうですね。そこの小娘を捌いたら大人しく帰らせていただきましょう。今は」
「そうか。それは残念、俺たちは永遠に結ばれることは無いようだ」
「では無理やり連れ帰って私しか愛せなくなる位私の愛を受けていただきましょう」
そういって王女はゆっくりと、重く、深く、歩いて行く。
進行方向には――魔王様がいる。
俺は二人の間に立とうとするが、足が動かない。
おそらく何らかのスキルが発動――いや、王女が持つ三つ目のステータスの影響だろう。
一応彼女のステータスを確認する。
名前:マリア=クレイニー
種族:人
年齢:18
LV:99
状態異常:
基本スキル
技能系:《鞭術LV.10》
魔法系:《炎属性LV.3》《水属性LV.6》《風属性LV.5》《土属性LV.4》《雷属性LV.6》《闇属性LV.10》《無属性LV.7》
ユニークスキル:《情報確認》《情報公開》《情報視認》《錯覚才能》
エクストラスキル:
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HP:572811/3024
MP:346827/2491
攻撃力:4931
守備力:7329
素早さ:6183
魔法力:4742
運:0
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ほんと、化け物だよこの王女様。
正直言って勝てない。どこからこんな力手に入れたんだか。
ただ、望みがあるにはあるけど、まだ一回も使ったこと無いし、王女の三つ目がどんなものか分からない以上は下手に手を出したくない。
でもそれ以外に手は無いし、やりますか。
「王女様?あなたは私の愛がほしい。これに間違いはありませんね」
「それはつまり私の愛を受け入れていただけるのですね!」
「そうですね。では私の『死』という歪な愛を受け取ってください!」
俺は初めてそれを喚んだ。
体から何かがあふれ出ていく感覚があった。
「……これは」
気づけばそこには獣のように荒々しく、歪で禍々しい何かがいた。




