20.魔王城へ
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黒竜が言葉にならない声を発する。
まあ、声に出してもいないのに心を読まれたら驚くのも無理ないか。
ちなみに付属品さんには事前に伝えている。
そのおかげで黒竜と付属品さん、二人同時に相手どらなくても済んだ。
付属品さんに伝えたときに当然だと言われたのでそんなことは無いかもしれなかったが。
<それはあなた達を信じろという事ですか>
「違う違う、これは脅しじゃなく交渉だよ。命を救った分俺を魔王城に送り届けるっていう」
交渉、その言葉に黒竜は息をのんだ。
交渉するという言葉を信じるならな彼らは間違いなくこの子らを守ってくれるだろう。
ただしそれは、送り届けなければ命の保証はしないという事なのだ。
もしかしたら私たちを殺して上の人間に渡すかもしれない。
正直なところ、彼らなら私たちを殺すことなど容易だろう。
だが無駄なのだ。相手を生かすという事が。
相手を上げて落とした時の顔が見たいという狂人でもなければ不意を突かれる可能性もあるのだから。
だったらここはひとつ、信用することにしよう。
そんな私の覚悟を知ってか知らずか人間は先ほど切った人間の装備を外していました。
追いはぎ……かな?
「ん、もしかして決まった?」
<そうですね。ただ、一つだけお願いを聞いてもらってもいいですか?>
「はいどうぞ」
<……子供たちにだけは、手を出さないでください>
すると人間は少し長い瞬きをしたのち、首を縦に振った。
「それはもちろんだ。約束しよう」
これで私は安心して行ける。
<子供たち、私はこれから行くところがあります。なので戻ってくるまでの間、ここでおとなしく待っていなさい>
子供たちは一度こちらに顔を向けたのち、ぎこちない動きでバラバラに首を振った。
<ではそこのお嬢さん、私の子供たちをよろしくお願いしますね>
「ええ、分かりました。黒竜さんも頑張ってくださいね」
そう言うと人間の女は私の後ろを通り過ぎて子供たちに駆け寄っていった。
子供たちはおびえることもなくすぐになついているようだ。
――あのような人間になら、私は我が子を任せられる。
<どうやら子供らは心配いらないようですね>
「そりゃあ付属品さんみたいな裏表のない奴なら本能に忠実な奴ならすぐに懐くさ」
<それは良かったです>
そう言うと黒竜は体を地に伏せた。
<どうぞ。魔王城へ行くのでしょう>
「悪いな、助かるよっと。そうだ、自己紹介がまだだったな。柳 真一だ」
<柳さん、ですか。少しの間、よろしくお願いしますね>
俺が黒竜の背中に乗ると黒竜はその翼を大きく広げ、大地を思い切り蹴った。
軽く数百キロはあろう巨体は勢いよく空へ打ち上がり、空中できれいな静止をとった。
「いいな、空が飛べるって。俺も風属性魔法使えるようになったら空飛べるようにならないかなー」
<あくまでも私たちが竜が空を飛べるのは《魔力操作》によって重力よりも強力な反作用を起こしているにすぎませんからそれは難しいですね>
「だったら《魔力操作》さえ使えれば俺も空を飛べるようになるのか」
なるほどな~、と納得している柳を後目に黒竜は魔王城へと飛ぶ。
正直、人間に《魔力操作》を使う術はない。
何故なら、《魔力操作》とは魔物のみが使うことのできる、いわばエクストラスキルなのだ。
さらに言えば魔物すべてが使えるとも限らない。
スライムやゴブリンなど魔力を制御するための器官をもたないものはもちろんのこと、たとえ竜であってもそのスキルを持って生まれてくるものは少ない。
……ただし黒竜のみはその例から外れ、すべてのものが《魔力操作》を持って生まれるのだが。
<《魔力操作》を覚えようと思っているのならやめた方がいいと思いますけど……>
「おすすめはしないって事か。まあ、確かに人間が空を飛べるなんてことになったら世界じゅう大騒ぎだろうからな」
<いえ、そういうわけではなくてですね……>
「細かいことは気にしなくていいさ。とりあえず魔王城まで頼むぞ」
柳に言われてしまっては仕方がない。
黒竜は柳に負担がかからない程度にスピードを上げて魔王城へと向かった。
――黒竜は知らない。
柳にとってスキルは簡単に作ることが出来るものだという事を。
これで二章は終わりです。
なんか勇者、聖剣要素が少ない気がしますけどもともとそこまで関わらせる気もなかったので問題ないでしょう。
ダメだったら章のタイトルを変えとこう。
1/24 章タイトル変更しました




