19.参戦 or 逃走
しばらくして登山道に到着した付属品さんを回収して俺たちは一度訪れたことのある山を登っていた。
目的は魔王城である。
現在勇者の街であるマギラと魔王城への最短距離を通るには件の山を通る必要があった。
なので今回は邪魔な敵を切り伏せて経験値の糧にしながら山道を登っていく。
食糧問題については到着一日目に所々で見つけた屋台で買い込んでいるので問題ない。
現在問題となっていることと言えば……。
「なあ、ここ凄く歩きずらいんだけど山道って整備されてるんじゃなかったっけ」
「さすがに魔王城までの道のりを作ろうなんて言う人はいませんよ」
「腐っても勇者の街だろ。何とかしようと思わなかったのか」
「マスター、ここの雑魚は強い。勇者ほどの強さじゃなきゃ単独では来ない」
雑魚、あくまでも弱いからそう呼ばれてるんだけど。
まぁさすがに俺も今のレベルでこのパーティーじゃなかったらここまで無理に通らなかったと思う。
「それにしても、勇者かー」
「?主、勇者に何か思い入れが?」
「ん、まあな。一応俺も勇者として呼ばれたわけだしクラスの奴らは今も勇者だからな」
「なるほど、そういうわけですか」
そういわれて考え込む付属品さん。
別にそこまで深い理由じゃないからね。、
「それにしても主、今一体レベルいくつですか?」
「えーっと……56、だな。ここの敵があまりにも弱くて心配だったけど思ってより経験値入ってるみたいだ。それにしても急に何で」
「いえ、勇者が前回敵を倒したときはレベル70ほどだと聞いていたので」
「なるほど。その程度なら魔王幹部でも倒せば何とか貯まる気がするけど」
「そう……だといいですね」
付属品さんが心配そうな顔をする。
もしこれが何も知らない人だったら一目惚れする美女なんだろうな。
でも残念。お互いに恋愛感情は抱けません!
もともとの扱いが頼りになる人だったし仕方がない。
俺たちがしばらく歩いていると不意に何かの怒声が聞こえてきた。
俺たちは急いで声のもとに急ぐ。
俺たちがたどり着いたとき、そこには竜と冒険者達が戦っていた。
戦っている竜の後ろにはまだ大型犬サイズの竜がおびえていた。
大方、竜の巣を見つけた冒険者達が欲に溺れて子竜に手をだそうとしたところに親竜がやってきたといったところだろう。
「おい、お前たち!さっさと手を貸せ」
ここで一つ質問だ。
俺たちはここで二つの選択肢が取れる。
ここから逃げるか、手助けをするか。
<という事で一人一票でお願いします>
<私はやはり逃げるべきだと思います。あれは黒竜で赤竜よりも数倍は強いです。たった四人の冒険者たちの為に命を張る必要は無いと思います!>
<やはりここは戦うべき>
<ちなみに俺は戦うに賛成なので結果、参戦に決定しました。そうだ。あと付属品さんはここにいてくれ、面倒だから>
<は、ハイ、分かりました>
HP:5600/5600→5200/5600
攻撃力:560→2560
素早さ:560→2560
付属品さんにくぎを刺して俺は特攻する。
狙いとの距離は50メートルほどなのだが、俺に気づいた彼は視覚強化系の魔法でも持っているのか?
距離を詰めた俺はグリモアで思いのままに力を振るった。
攻撃力と素早さを上げた俺の攻撃に気づけた者は黒竜のみで、その黒竜すらもこの状況は理解が出来てないだろう。
それも当然だ。
先ほどまで遠くにいた人間が一瞬でこちらに近づき、同族を殺したのだ。
俺はその勢いのまま残りも切り殺すと、冒険者たちのきれいな断面があらわになった。
「これは……思ったよりも殺しなれたな。やっぱり原因はヨルドのファンたちを結構切ったからか」
その姿に黒竜はただただ命乞いをすることしかできなかった。
――勝てない。どうやったところでこの場をしのぎ切る力は自身には残されていない。
黒竜はその力を感じ取っていた。
<すみません、そこのお方。どうか我が子たちだけは見逃してはいただけませんか>
「……ん、さっきの黒竜か。被害ナシ、とはいかないけど子供たちも自分の命も守れて良かったじゃないか」
<…………え?>
黒竜はぽかんと口を空けてしまった。
「?どうかしたのか?」
<い、いえ!……ちょっと、何で彼らではなく私を助けてくれたのかなー、っと思いまして>
そう言って黒竜は笑うが、その顔は苦笑い以外の何物でもなかった。
「だって襲ってたのはそいつらだろ。こっちの法で言うならそいつらは投獄刑なんだから痛みも理解もなく死ねて本望だろ。これでも譲歩してやったんだからな」
<主!それは譲歩じゃありません!>
付属品さんうるさい。
「そうだな。じゃあ感謝してるんならついでに俺を魔王城まで連れて行ってくれ」
<ま、魔王城、ですか>
黒竜は考える。
確かに命を守ってもらったお礼として送り届けることなんて得だらけの話に聞こえる。
だがそれはあの魔王城でなければの話だ。
ただでさえ地上に化け物が集っているのに空中ともなれば危険度はその比ではない。
さらに今ここで私がいなくなればこの子たちはどうなるのだろう。
もしかしたらまたあの人間たちに襲われてしまうかもしれない。
逆にこの子たちがここを出て人間につかまってしまうかもしれない。
「あー、それなんだけどさ、ここに付属品さんを置いて行くってのでどうだろう」




