16.元契約者
「僕は女だ!」
「聖剣って知ってたの」
その言葉に俺はただ困惑するしかなかった。
「あー、聖剣だとは知ってた。けどさすがに女性だとは思わなかった。基本無性別かあったとしても男性かなーって」
「どこがだ!この僕のどこを見たら男の子だって思うんだ!」
「髪が短いところとか、一人称が『僕』なところとか、あとは端正な顔立ちをしてるところとか」
「......うそでしょ。ここまで僕が美少女になろうと努力したのに............。」
「少なくとも俺には美少女じゃなくて美少年に見えるな」
聖剣く......さんは明らかにうなだれている。
でもしょうがないと思う。そんな恰好でグリモアが何の反応も示さないんだから気づきようがない。
「?聖剣って全員男っぽいの、違う?」
「分からないけど、たぶんそれは違うんじゃないかなあ」
「そう」
グリモアはいつも通りの無表情——じゃないな、なんとなくだけど少し苛立ってるかなって顔をしてる。そしてそれを《心眼》で見てるから苛立ってるのははっきり分かった。
聖剣と魔剣だから対立するのはしょうがないにしてもちょっと嫌いすぎな気がする。
でも苛立ちに明確な理由が見えないから一般的にこんなものか。
「それで、何故俺なんだ。何故俺がお前の契約者に選ばれたんだ」
「それは君が一番強いからだ!」
「そうか。じゃあ後数日で俺以下の奴らが来るからその中で選べ」
「それは無理だ!君と彼らでは明らかに性能が違いすぎる!」
「それはレベルの問題だ。大人しくここであいつらが来るのを待ってろ」
そこで聖剣は思い出したかのように話を変えてきた。
「そもそも、何で君は魔剣なんて持ち歩いてるんだ!」
「そんなの俺がグリモアに誘ったからだよ」
「そうじゃない!何故君が魔剣に出会えているんだ!」
「話が見えない。俺は普通にこいつとギルドの地下で会って仲間にしただけだ。それのどこがおかしい」
「おかしいどころの話じゃない。僕は自分の力でこの世界の聖剣と魔剣の位置を知ることが出来る。それも寸分たがわずに。だから分かるんだけどね、それは本当にただの魔剣なのかい?」
「......どういうことだ」
俺は疑問に思った。こいつの言ってる力が本当かどうかは別にしてもここまで聖剣が矛盾したことを言うのか?
自分の目の前にいる魔剣に対して本当に魔剣なのかだなんて。
「約800年前、僕の元契約者、つまり前勇者は魔王を倒すため、そして大事なものをすべて守るため一心不乱に強くなろうとした」
「前勇者、それはいったい誰だ。へレス=ルーベルトか?それとも学校の初代校長か?冒険者か?唯一俺が全く情報を手にしてない残りの一人か?」
「それは多分最後の人だよ。彼が冒険者だったなんて聞いてないし魔王を倒した後に校長もやってないから」
俺は軽く舌打ちをした。
ほとんど音はしなかったはずなのに三人ともこちらを向く。
何故だ。顔か?顔に出てたのか?
(主がこんな顔するなんて、何か心当たりでもあるんですかね)
(マスター顔怖い)
(なんだ彼!?なぜあんな顔をしているんだ!?何か地雷でも踏んでしまったのか!?)
顔なのか。
というか聖剣うるさい。
「主、何か心当たりでも?」
三人の中で感想がずれている付属品さんが聞いてくる。
「ああ、もしかしたらではあるがそいつの人物像について少し予想がついてな」
「予想!?僕はまだ何も言ってないのだけど」
「そいつは黒目黒髪か?」
「え、何で分かったの!?」
「俺からの質問はまだある」
それからいくつかの質問をしてみたが聖剣の回答は俺の思っていた回答にドンピシャとまではいかなくても8割当たっていた。
そして俺は確信することが出来た。
この聖剣の元契約者で前勇者の一人。
四人の中で唯一身元がはっきりせずこの国よりもかなり発達した技術や知識を持った人間。
その可能性があるのは一つしかない。
「お前の元契約者って地球人なんじゃないか?」
「チキュウジン?マスター何それ」
「僕は彼がチキュウジンっていうのなんて聞いたことがないんだけど」
「地球というと主の故郷ですね」
「その通りだ。おそらくそいつは転移者か転生者、見た目から考えると転移者だな」
ここまで情報がそろっているんだ。これはほぼ確定だな。
「それで?その話と魔剣がどうつながるんだ」
「別にこの話自体に話のつながりは無い。あくまでも俺の疑問をいくつか解消しただけであって」
「疑問?それって?」
「例えば地球とこの世界の時間。前転移者が現れたのはこの世界で800年前だったらしいけど、地球ではこの世界の最新技術が導入されてからまだ100年程しか経ってない」
道具屋『へレス』、あれの元はデパート。800年前にはまだ開発されていない建築方法だ。
周りが木造とか昔の建築方法なのに対して少し先取りしすぎている。
「他にもそいつだけ存在があやふやなことから何かを警戒していた可能性がある」
「何かって何?」
「それは俺には分からないさ。もしかしたらそいつでも勝てないバケモノとか権力の強い国とか」
それを知る術は俺にはない。
だから俺も最低限身元を隠しておく必要があるかもしれないってだけだ。
「まあこれはお前たちの気にすることじゃない。それより聖剣、魔剣についての話を続けてくれ」
俺は脱線した話をもとに戻した。
だが脱線させたのは俺である
少し投稿ペースが落ちます。
何故かって?
中身が思い付かないからです。
でも放置はしない。




