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腹案

ビットがやたら英語を多用していますが仕様です。

け、決して青いハリネズミに影響されたわけじゃないんだからね!

「やーれやれ全く、面倒な真似してくれたな」


 隠れ家に出戻りした俺はバリバリと頭を掻いて溜息をつく。

 街に潜り込んでいた間諜スパイを一掃できたのは良いが、肝心の目的は果たせず仕舞いだ。

 排斥派のクルックス・オルケインに取り行って内側から破壊工作する予定だったんだがなぁ。


「……狙いを頓挫させたのは悪かったけどよ…」


 部屋の端のほうで不貞腐れた目をしてトゥゼン坊っちゃんが俺を睨んでいる。


「『なんでそれを俺達に言わなかったんだ?』って面だな、坊っちゃん」


「当たり前だ。言わなきゃ、誤解されて当然だろうが」


「至言だな。察しの悪さを棚に上げるのならば」


 坊っちゃんの意見にキーシャが皮肉を交えて肯定する。

 茶々を入れられた坊っちゃんは物凄い目でキーシャを睨んでいた。


「言っておくが、誤解されるような姿勢を示した貴様にも問題があるぞ、ビット・フェン」


「そりゃそうだが。『敵を騙すにはまず味方から』ってよく言うだろ?それに、もしこの場の誰かが拉致られて記憶を読まれるような事になってみろ。潜り込んで内側から食い破ろうとすんのが一発でバレるじゃねぇの」


 今更言った所で後の祭りだけどな。


「………まあ、最高の結果とは行かなかったが、相手の手札を減らせたのはデカいからな。結果オーライだろ」


 今までは一晩に一人二人仕留めるのがやっとだったが、昨夜は一気に数を減らせた。

 これで町の住人が脅かされることもなくなるだろう。


「これ以上犠牲者が出なくて本当に良かったわ」


 今まで気が気でなかったのだろうアルカ嬢が胸に手を当ててホッと溜息をつく。

 根っこは優しい子だ、やっぱり心痛めてたか。


「確かにそれも重要だが、ポイントはそこじゃない。対オルケイン戦で先手を取る取っ掛かりも見つかりそうだ」


「…取っ掛かり?」


 俺の言葉にアルカ嬢は首を傾げる。

 人徳もリーダーとしての器も十分だが、駆け引きに関してはまだまだだな、アルカ嬢。

 俺はちっちと指を振って解説してやることにする。


「それじゃ嬢にひとつ問題を出そう。排斥派の連中が敵である俺達にちまちまと削られていた戦力だが、間諜スパイの補充に穴が空く程のペースじゃあ今まで問題にはなっていなかった。でも昨夜はそれを一気に食い破られた。しかもあっさり謀られて一網打尽にされたなんざコケにされた様なもんだ。しかも今までみたいに少しずつ補充してたんじゃ今度は次から次に潰されて情報収集なんざ追っ付かねぇ。根城は割れてるから河岸も変えにゃならん。………と言うことは?」


「………あ!」


 おっと、ヒントが多すぎたか。

 俺が言い終えてから30秒と経たずに答えに行き着いたようだ。


「そんじゃ、解答を聞こうか」


「多少のリスクを背負ってでも、一気に大人数を動かさざるを得ない、ってことでしょ?」


「That's right!それで、俺らはどういう手を打てばいいと思う?」


「え?えーと…また一網打尽にしても意味が無さそうだし…」


 そこから更に解答を求めるが、今度は少し難しかった様だ。

 仕様が無い、も少しヒントをあげますか。


「いいかいアルカ嬢、人の動きってのは集団の規模がデカくなればなるほど分り易いもんだ。動くって事ァ、始まり(スタート)終わり(ゴール)が必ずある」


「………成る程ね」


 アルカ嬢はすっきりした表情で俺の目を見る。

 ………よく澄んだ綺麗な金の瞳だ。


「彼らがどこから来て、今度はどこを拠点にするのかが分かるって事でしょ?だからそこを逆に利用すればいいって事ね」


「Perfect! Fantastic! That's Greatest!!!100点満点だ、アルカ嬢!」


「そ、そう?ありがとう」


 パッと紙吹雪を出して俺の求めた解答を出したアルカ嬢を賞賛すると、照れたのかアルカ嬢は苦笑して赤くなった頬を掻いた。

 どっから出したって?ただの手品さ。


「おい、2人だけで完結させんなよ。どういう意味なのか俺らにも教えてくれ」


「お、そうだな。もう隠すのはナシだ」


 坊っちゃんが俺達の会話の詳細を求めたので教えてやることにする。


「いいかい坊っちゃん、今までは既に街に潜伏してる連中を狩る事しか出来なかった俺達だが、そいつらはどこから来てた?」


「あ?……そりゃ、その大王烏賊クラーケンの船からだろ?」


 Ah…そこからかよ。


「それは大元の大元。俺が言いたいのは、その船からどうやって俺らに気付かれないように街に潜り込んでんのかって事」


「………???」


 額のバンダナを弄りながら坊っちゃんは首を傾げる。

 やはり頭脳労働は苦手のようだ。


「要するにだサルぅ、ベル・フェドは、あのクソ野郎共が港を介さずに街に入り込む秘密の道を知ってるんじゃねぇかって言いてぇんだろぉ。なぁ?」


「ご名答。坊っちゃん、わかったかい?」


「………おお、そういやそうだ。ってサルって言うな!」


「おぉっと、わりぃわりぃ」


 シエラ船長の解説で漸く理解できた坊っちゃんはサル呼ばわりされて憤慨しつつ、船長と取っ組み合いを始めた。

 船長も楽しげに応戦しつつ戯れる様を横目に、俺は頭の中で作戦を組み上げていく。

 さて、こっからは俺らのターンだ。

 首洗って待ってろよ、クルックス・オルケイン。

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