疑惑
この描写の元ネタが分かった方、時代劇映画好きですか?
「どうすんだよ、アルカ」
「何が?」
俺の問いかけに対し、アルカは目を合わせもしねぇでケロリと問い返した。
「ビットと化け猫の事だ!分かりきってんだろ!?」
「心配しすぎよ。彼は信用できるヒトだもの」
穏健派を抜けると言い、すぐに荷物を纏めてここを出て行ったビット達を、アルカは止めなかった。
敵が隠れてるこの街でそれがどういう事を意味するのか、分かってねぇはずがねぇだろ!?
「あいつらを通して排斥派にこの場所が割れねぇ保証はねぇ!お前はそれを分かってんのか!?」
「分かってるわよ。でも大丈夫」
「何を根拠に…!」
「よぉ、ベル・フェドの奴がここを出てったんだってぇ?」
更に反論しようとした俺を遮るように、隠れ家の入り口から誰か入ってきた。
燃えるような赤い髪と、右側だけ開かれた赤い隻眼。
アルカが手を組んだという例の海賊の船長、シエラ・セリーナだった。
隣にはギンってヒトの私兵であるウルシも付いている。
「いらっしゃい、シエラさん」
「おう。そんでアルカのお嬢、あの詐欺師はなんつってたんだぁ?」
シエラの奴も然程動揺した様子もなく、どっかりと床に座ってそう問いかける。
アルカも一度手元の紙束を置き、シエラと向かい合った。
「『派手に花火をブチ上げるから、一旦穏健派を抜ける』ですって」
「……っはは、成る程なぁ」
2人はにやりと笑い合っている。
2人にしか理解できない何かが今のセリフに含まれてんのか?
「お二人だけで通じ合うのは宜しいですが、今のお言葉に何かあるのですか?」
そんな中、2人に割って入る様にジャコが俺と同様の疑問を投げた。
「ええ。ビットさんは『派手な花火』って言葉、前にも一度口に出してるの」
「オレらとお嬢が手を組む時になぁ。『花火』は合図、それまでは力を蓄えろって事だろぉ」
そう言って2人はくつくつと笑い合う。
「そんな言葉だけで、あいつを信用するのか!?」
「するわ。それだけの手腕を彼は見せてくれたもの。ね、ジャコ?」
「………確かに、蛇王達を撃退出来たのも、あの方の策があってこそでしたが…」
ジャコはそう言った後、一拍置いて言葉を続けた。
「アルカ様には申し訳ありませんが、私はあの方を完全に信用し切れません」
「…ジャコ…」
自分の味方をするかと思っていたジャコの発言にアルカは目を見開く。
「確かにあの方には何度も知恵を貸して頂きました。ですが、あの飄々とした人間性は元より、敵対していた化け猫を味方に就けたり、自らが死なないからと無茶な手段でシエラさんを揺さぶったり、あの方のやり方は分の悪い博打が多すぎます」
「……そりゃ、確かになぁ」
揺さぶられた当人であるシエラはうんうんと頷いている。
どっちの味方だお前。
「そして何より、あの方が私達に協力するメリットが無さ過ぎます。なのに私達への協力を惜しまない。ギンさんの私兵を使い、ギルドの支部長であるゲルドさんも動かす。吸血種である私達に対して、なんの見返りも求めずに手を貸してくれるあの方は、正直に言って吸血種以上に気味が悪い」
「ジャコ!言い過ぎよ!」
「ですが!あの方の博打にいつアルカ様が巻き込まれるか分からないんですよ!?アルヴィラ様に選ばれた資格者がどうとか言っていましたが、あの方の目的そのものが不透明なのに、何が信用できると言うんですか!?」
「それは…!」
ジャコの叱責にアルカは言葉を詰まらせた。
俺も大体の話は聞いてたけど、確かにあいつを信用し切るのは厳しいと思ってた。
極端な事を言えば、化け猫に信用されてる時点で、あいつと排斥派の繋がりを疑う理由にもなる。
「どうすんだよ、アルカ。このままあいつが動くのを待つのか?それとも、この場所が割れる前に始末しちまうか?」
「………」
こないだの模擬戦じゃ負けちまったが、相討ち覚悟で特攻すれば、化け猫と刺し違える自信はある。
穏健派とアルカを守るためなら、いつだって死ぬ覚悟は出来てる。
あとはアルカが命じてくれりゃそれで動ける。
「動くのか、動かねぇのか、早く決めてくれ、リーダー」
「まーまー、落ち着けよぉ、サルぅ」
「………あ?」
俺とアルカの間にシエラの奴が割って入る。
「あんだよ、手ぇ組んだっつっても、この事はテメェには関係ねーだろうが。首突っ込んでくんな。あとサルって言うな」
「確かにオレぁこの話に関係ねぇー。ベル・フェドの事ぁ殆ど知らねぇ。分かんのは精々あいつが口のよく回る詐欺師だって事だぁ」
「けどなぁ」とシエラは俺をまっすぐ見る。
「死んだフリなんつぅ博打してまで、お嬢の為に動けるあいつがぁ、信用できねぇって言い切れるワケでもねぇだろぉがぁ」
「……………」
そう言われて今度は俺とジャコが言葉を詰まらせた。
確かにビットを信用するのは難しい。
だがそれと同じくらい信用しないのもまた難しい。
シエラの奴はそう言ったのだ。
「確かにベル・フェドは口八丁で煙に巻くがなぁ、一遍こうと決めたら曲げねぇヤロウだとオレは思うぜぇ?」
シエラはそう言って懐からスキットルを取り出して中身を煽る。
「ん…っかぁ。どぉしても疑いが晴れねぇってんならぁ、あいつらを尾けてみるかぁ?意見が食い違ってるモン一人ずつ居りゃぁ良いだろぉ」
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