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Aims to Orca in the stomach

お久しぶりです。

サブタイトルはグーグル先生に翻訳してもらいました。

「粗茶ですが、ビット様のお気に入りを出せればよかったのですが…」


「構わねぇさ。茶が出るだけ上等だ」


 床にあぐらをかいて茶の入ったカップを受け取り、軽く啜る。

 クレナイはああ言っているが、淹れ方は悪くないしそこそこ良い茶だ。十分飲める。


「んで、クレナイよ。どこまで掴んでる?」


「ギン様から前以て指示されていた通り、深入りしない程度には調べがついています」


 そう言ってクレナイは懐から紙束を取り出して俺に寄越した。

 パラパラと軽くめくってざっと目を通す。


「……なるほど。王手チェックにゃ遠いが歩兵ポーン半分、ルーク僧侶ビショップが食われたってトコか」


「え、今の流し読みで分かったの?」


「大体はな。書類の処理は手早く確実に、がコツだ」


 全体を見通して要所を目に留めれば概要くらいは掴める。


「んじゃ、ウルシ達が戻ってくるまでの暇潰しに、マイロの状況を整理するかね。クレナイ、地図と駒」


「ここに」


 秒と待たず、クレナイがマイロの地図、そしてチェス駒の入った箱を取り出した。

 箱の蓋を開けると、中には白黒以外に透明な硝子や曇った磨り硝子の駒も入っている。

 地図の脇にそれをばら撒き、黒のキングと白のクイーンを手に取ると、キングを沖、クイーンを港に置いた。


「いいか、キングが排斥派の海賊、多分部隊長辺りか、クイーンが『夕暮れの黒鯱』の船長サマだ。んで、ルークがそれぞれの船」


 続いて白黒のルークを取り出してそれぞれキングとクイーンの側へ。

 続けざまにポーン、ビショップをそれぞれの陣営に並べていく。

 更に透明なポーンを街に無造作に置いた。


「透明のポーンは街の常人種ヒューマン、ビショップはそれぞれの副官クラス、まあ頭の指示を的確に下に纏める役目だな。現状マイロじゃあ、常人種が両陣営から狩られて凡そ四分の一程度の人間がミイラになってる」


 指で突付いて幾つかの透明なポーンを弾き、コロコロと駒が転がる。


「そんで、俺らがここに来る数日前、『夕暮れの黒鯱』がマズいことになった」


 そう言って俺は白のルークを傾けてゆらゆらと揺らした。

 指を離すとカタンと音を立てて駒が倒れる。


「排斥派との海戦で船のマストと舵がやられた。辛うじてマイロに戻ることは出来たが、暫くまともな航行は不可能だな。その代わり」


 続いて黒のビショップを倒す。


「排斥派の副官を女船長が討ち取ったらしい。因みに航海士だったそうだから、海戦での排斥派の脅威度は半減、お互い痛み分けだな」


「このまま長引けば戦いは泥沼か」


「そそ」


「……あら、ちょっと待って?」


 何か疑問に思ったか、アルカ嬢が手を上げた。


「ん?何かわかんねー事が?」


「さっきビットさん、『歩兵が半分』って言ってたわよね。でも…」


「…ああ、そこね」


 残った住人の四分の一はどうして減ったのか、とアルカ嬢は言いたいらしい。

 俺は透明なポーンから更に四分の一を地図の上から外し、そこに黒のポーンを置いた。


「残った四分の一は、排斥派の兵隊とすり替えられた」


「すり、換え?」


「入れ替わったと言ってもいいな。どうやら排斥派には『違う誰かに成りすます能力』を持った連中が居る」


「……っ」


 アルカ嬢の顔が蒼白に染まるのも仕方ない。

 今まで何食わぬ顔で接していた隣人がある日別人と入れ替わっていた。

 実際にやられると結構なホラーだな。


「……聞いたことがあるな」


「お?」


 地図を眺めていたキーシャが猫耳を動かして呟いた。


「何、なんか知ってんの?」


「ああ、排斥派の第4師団、そこの部隊長の1人が『他人を擬態させる能力』を持っているらしい。そこで隠密行動の訓練を受けた名無し(ネームレス)共を潜入させているとな」


 人伝に聞いた噂だがな、と肩を竦める。


「ほぉ…さっきの黒服共にも言ってたけど名無しってなんだ?」


化け猫(わたし)斉天大聖ハヌマーンの様に異名を持たない吸血種ノスフェラトゥの事だ。個人を表す特性が無い事から総じてそう呼ばれている」


「成る程ね」


 キーシャや坊っちゃんなんかは分かりやすい特徴が身体に現れてる。

 それは即ち、吸血種としての潜在能力の高さを表しているのだろう。

 …っと、話が逸れちまった。


「この街を襲ってる海賊の大将がその部隊長って考えるのが順当だな。………さて、どうすっかねぇ」


 腕を組んで考える。と、小屋の入り口から規則的なリズムのノックが鳴った。

 クレナイが直ぐ様立ち上がってドアを開ける。


「只今戻りました。竜車は裏手の茂みに隠してあります」


「おう、ご苦労さん」


 足音も衣擦れの音も鳴らすこと無く静かに入ってきたのは、シャドーイーグルのヨギリを肩に載せたウルシだった。

 そのウルシを先頭に、ジャコ、ゲルド、窮奇のシャッコウが続々と小屋に進入する。

 さて、これで全員揃ったわけだが。


「……………………………よし」


 暫く考え込んでいた俺は一つ頷き、クレナイに目を向けた。


「クレナイ、ウルシ、俺とお前らで夕暮れの黒鯱に潜り込んでみっか」


「えっ…!」


 俺の提案にアルカ嬢は目を見開く。

 その後ろではキーシャがやれやれと頭を振っていた。

 ……なんだよ、その『言うと思った』って面は。


「畏まりました。服などはいかが致しましょう?」


「着たかねぇが、適当に女物見繕っとけ。性別誤魔化しゃ嬢達との繋がりはバレねぇだろ」


「ちょ、ちょっと待って!ビットさん何考えてるの!?」


 話を進めていると、嬢が慌てて制止をかける。

 わざわざ危険の渦中に突っ込む必要は無いと言いたいようだ。


「多少のリスクは背負ってなんぼ。俺なら捕まっても死なねぇ分人質としての価値は低いし、クレナイ達の逃げ足は速いから、捕まりそうになっても俺を囮にすりゃ十分逃げられる」


 最悪夕暮れの黒鯱に俺を『殺させて』打ち捨てさせれば逃げる事もできるしな。


「キーシャ、俺が居ない間の事はサーミャ某とお前に任す。いい感じに話を纏めて嬢の判断を仰げ」


「……承知した」


 腕を組んでキーシャが渋々頷いた。


「んじゃクレナイ、着付け手伝ってくれ」


「畏まりました」


 そうと決まれば善は急げ、俺は潜入のために着替え始める。


「わ、わー!わー!みんなあっち向いてて!」


 ジャケットを脱いでシャツのボタンに手を掛けていると、嬢が慌てて皆の視線を誘導し始めた。

 ………いや、俺男よ?確かにこないだは『男のストリップ』とか冗談で言ったけどさ。

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