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資格なきモノ

前話までの対蛇戦はいずれ統合しようと思います。

今回も割とグロ注意。むしろSANチェックかも。

「フ、フフフ…!アハハハハハ!」


 閃光が収まって再び闇が支配する中で蛇姫ラミアの嘲笑が部屋に響く。

 アメイルは頭から被った血液の熱を感じて悦に浸っていた。


「まずは一匹ぃ…」


 エイガンはアメイルの笑い声を聞きながら舌なめずりして再び周囲に目を向ける。


「アハ…アハハハ…は?」


「…アメイル?」


 蛇姫の声が徐々に落ちていくのを耳にしたエイガンは首を傾げてそちらに目を向けた。


「あ…ああ…ぎゃあああああああああ!!!!」


 嘲笑が悲鳴へと変わり、アメイルはその場にうずくまってのたうち回りながら身体を掻きむしり始めた。


「アメイル!?どうした!?」


「熱い!身体が熱いよぉぉ!!」


大当たり(ジャックポット)だ!』


 エイガンの意識がアメイルに向いた瞬間、その声が部屋に響く。

 直後、部屋に突然明かりが灯り、天井と床から2つの影が飛び出した。


「ソード・スレイヴ!」


「はぁっ!」


「あ゛っ…!」


「がぁっ!?」


 上から降りてきたキーシャが蛇姫の腹を切り裂き、下から飛び出したアルカは蛇王ナーガの手足を串刺しにして壁に打ち付ける。


「因果応報だ。やったのは蛇王だがな」


「あぐ…ぶぶぐぅ…」


 倒れ伏した蛇姫はキーシャに見下されながら血反吐を吐いた。

 部屋の明かりに照らされ、顔や全身が爛れている。


「アメイル!アメぇぇぇイル!!」


 手足を拘束された蛇王は双子の片割れの姿に動揺し、傷口が広がるのも厭わずにもがき暴れた。


「ほぉ、性根の腐った餓鬼でも、家族に情は覚えるのか」


「っ!」


 その声を聞いたエイガンは冷や水を頭に被ったような顔で目を見開く。

 視線の先には、キーシャとともに居た灰色の髪の青年が、アルカが飛び出した床下から這い出す姿があった。

 エイガンが斬った筈の腹には既に傷はなく、シャツの下から乾いた血糊がポロポロと零れ落ちている。


「これで詰み(チェックメイト)だ、爬虫類」


 カボチャ頭のメイドと黒い着物を着た女に肩を借りながら、青年はにやりとほくそ笑んだ。






「お、お前…お前ぇぇ!!」


「落ち着けよ。吸血種ノスフェラトゥなんだからこの程度で死ぬもんか」


 ガシャガシャと嬢の剣を揺らしながら怒り狂う蛇王に俺は冷静に言葉を吐く。


「なんでだ!なんでアメイルがこんな目に!!」


「先に仕掛けてきたのはテメェらだ。俺らはそれを迎撃したまでさ」


 ギンとジャコに肩を借りている俺は、未だにうめき声を上げている蛇姫の側に落ちていたモノに目を向ける。

 蛇姫がキーシャだと思って真っ二つにしたそれは革袋で作った人形だった。

 中には人肌程度に温めた湯が、二重構造になった腹回りから白い粉末が零れている。

 蛇姫が血と臓物だと思って引っ被ったそれは、肌と触れれば炎症を起こし、水と反応する事で高熱を発する物質、生石灰。

 石造りの家を建てる時なんかにゃ重宝する、ガキの小遣いでも買える代物だ。


「ま、そう悲観することはないさ。こっちはテメェらの『目』が何なのか分かってたからよ」


「お前…」


「お前らはトクベツ目が良いわけでも、鼻が利くわけでも、耳が良いわけでもない」


 次の言葉を強調するために俺は一度深呼吸を挟み、奴らの秘密を暴く。


「答えは、『熱』だ」


「っ!?」


 俺のその一言で、蛇王の目が驚愕に見開かれた。


「蛇って生き物は夜行性だが、その実大して夜目が効く訳でもない。だったらどうやって獲物を捉えているか。そいつは『ピット器官』っつぅ天然の赤外線感知器官サーモグラフィーを持ってるからだ」


 俺は種明かしが楽しくて早口にまくし立てる。


「お前らが蛇の吸血種だってことと、暗所からの暗殺が得意だってキーシャから聞いた時、ピンときてな。お前らが持ってるアドバンテージを逆に利用させてもらった」


 わざわざ戦いの場を喧騒で溢れかえる娼館街に移し、内部をほぼ完璧な暗所にしたこの建物に誘い込み、異臭を充満させることで、奴らに視覚と嗅覚と聴覚を使わせなくした。

 その時点で連中はピット器官を用いてでしか追跡が不可能になった。

 この部屋に踏み込まれた時の木箱。

 アレは微量の石灰を含ませた水で発熱させた囮、そいつを部屋の隅に置くことで意識をそちらに向けさせた。更に閃光弾フラッシュバンのおまけ付きで。

 上からキーシャが落とした人形。

 アレもギンの魔法で人肌程度に保温させ、蛇姫のぶち撒けた中身の水を血液と誤認させた。

 奴らがピット器官に頼り切り、驕った時点で勝ち目は無くなっていた。


「さ、これで種明かしは終いだ。排斥派の情報吐いてクタバルか、吐かずにクタバルか、好きな方を選びな」


「…………」


 俺がそう言うと、キーシャが瀕死の蛇姫に血晶剣を突きつける。


「ちょ…ビットさん!いくらなんでも殺すなんて…」


「キーシャの時とは状況が全く違う。今こいつらを見逃せば確実に禍根を残すぞ」


 嬢が俺達を止めにかかるが、俺とキーシャにやめる意思はない。

 キーシャは雇われ兵でまだ交渉の余地があったからいいものの、こいつらは排斥派の部隊長。組織にどっぷりと浸かった人間だ。

 この場で殺しておかなければ、次は部隊長クラスの連中がウジャウジャとガルサに押し寄せるかも知れない。

 下手を打てば師団長が出張ってくるかも知れない。

 ならばこの場でこいつらを殺して口封じしておいた方が上策だ。


「だからってそんな…」


「世の中キレイ事ばかりじゃやっていけねぇよ。第一こいつらは遊び半分で人殺しをするような連中だ。同情すればそこに付け込まれる」


 嬢は俺の言葉にぐっと言葉を詰まらせる。

 そして反論を出すことも出来ずに俯いてしまった。


「…………」


 まずいなぁ、少し脅しすぎたか。

 さて、どうするか。

 俺がそこまで考えた時だった。


「っ…ああああああああああああああああ!!!!!!!」


「!?ビット・フェン!!」


 先程からだんまりを決め込んでいた蛇王が再びもがき、暴れだす。

 手足に突き刺さった嬢の血晶剣で傷口が広がるのも構うことなく、半狂乱になって手足を動かし、ぶちぶちと嫌な音が響いた。


「お前が!お前が居なきゃァァァァァァァ!!!!」


「あ、やば」


 蛇王エイガンは吸血種の膂力で無理矢理手首と足首を引き千切り、前のめりになって俺の肩口に文字通り齧りついた。


「うぎ…!」


「んぐ…ぢゅるるるるるるるっ!!」


 ばぎ、ぼぎんと鎖骨が砕け、肩から血が噴き出す。

 そしてその血を蛇王はずるずるとすすり上げた。

 こいつ…血を飲んで…!?


「ビットさん!」


「蛇王、貴様ァッ!!」


 アルカ嬢とキーシャがすぐさま蛇王へ斬りかかるが、一瞬早く蛇王は俺から牙を離し、ゴロゴロと蛇姫の側に転がっていく。


「ヒヒッ、待ってろアメイル!今すぐこいつらを殺して、お前を……………ヲ?」


 笑い声を上げる蛇王は蛇姫へ何か言いかけたが、その口が突然止まった。


「ヲ?ヲヲヲ?」


 どくんと、何かが脈動する音。

 同時に、蛇王の身体が脈打った様に見えた。


「何だ、これ?チカラ?」


 再びどくんと鼓動。

 次は錯覚ではなく、蛇王の身体が脈打った。


 次の瞬間。


「エァ?」


 ぶちゅりと蛇王の中で何かが切れた。


「お、おおお、オオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


 蛇が吠える。


「なっ…?!」


「…………これは…」


 ぐちゃぐちゃと1人の人間の身体が作り変えられていく。

 千切れた手足から吹き出した血が血晶となり、手足を形作る。

 元々蛇のように大口を開けていた顎が更に裂け、牙が伸びる。

 爬虫類を思わせる緑の瞳が血晶に覆われ、ギラギラと瞬く。

 全身にウロコが浮き上がった肉体は肥大化し、着ていた衣服を引き裂いてもなお止まらない。


「………チカラ、チカラがワいでグルぶゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」


 再び蛇が吠える。

 その姿に先程までの面影は無い。

 否、奴は蛇の特徴を持った吸血種という『人間』では無くなっただけ。

 俺達の目の前には、蛇の特徴を持った『怪物』が立ちはだかっていた。

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