初めての狩り
つなぎの回なので若干短め。
真新しいカードを手にしたアルカ嬢達を連れて俺達は受付から掲示板の前に移る。
掲示板にはガルサ周辺に生息する魔物の情報や魔物による農作物や家畜の被害など、雑多ながら膨大な情報が貼り出されていた。
「さてアルカ嬢、小手調べにどの辺いっとく?」
「……うぅん…どうしようかしら」
二人並んで顎に手を当て、首を捻りながら考える。
別に俺が魔物狩りをするわけじゃ無いのだが、協力者としては嬢達の対魔物戦での実力は知っておきたい。
とは言うものの、俺の場合はどれも危険すぎて、アルカ嬢の場合は基準がよく分からなくてどの魔物を狩ればいいのか決めあぐねていた。
そんな時キーシャが助け舟を出してくれる。
「貼り紙の右上を見ろ」
言われて視線を多量の貼り紙の右上付近に移す。
紙にはそれぞれ赤や青といった色で○印が付けられている。
「お、冒険者ランクと同じ色分けだな」
「それが魔物の危険度を表している。金が最高危険度、青が最低だ」
成る程成る程。同時に『目安』って訳ね。
冒険者はその色で自分の実力に見合った魔物を狩るのが最適の様だ。
「狙う魔物のランクが高すぎたり、低すぎたりしても特に罰則などは無いが……高すぎれば死ぬかもしれない。低すぎれば低ランカーの食い扶持を奪う真似に当たって、周りから白い目で見られるから気をつけろ。と言っても、お前たち二人はなりたての新米だからな。無難に青の魔物を狙っておけ」
キーシャは腕を組み、赤い瞳を細めてそう忠告をいれた。
む、確かに嬢達は対魔物戦の力は分からないが、少し慎重すぎやしないかね?
「……ビット・フェン。お前に取っては魔物も人間も同じように映っているのだろうが、対魔物戦と対人戦では、勝手が違いすぎるんだぞ?」
俺の胡乱な目を見てキーシャが眉根を寄せてそう言ってくる。
ほう、魔物も人間も等しく俺に取っちゃ危険だと言いたいのか。俺の事が少しは分かってきたじゃないの。
「なんだかんだ言って嬢達にアドバイスする辺り、面倒見いいのな、仔猫ちゃーん」
「っ、うるさい。ただ雇い主の意向に従っただけだ」
俺に指摘されて少し頬を赤くしそっぽを向くキーシャ。
言動こそつっけんどんだが、一度関わっちまうとぶつくさ言いながらも面倒を見るタイプらしいな。
えーと、こういうの昔の島国の言葉でなんつったっけ?
………あー、そだそだ、『ツンデレ』だ。
「………今、物凄くバカにしただろう」
「してないしてない……いででで!」
ニヤけながら否定の言葉を口にすると、キーシャに顔面を引っ掻かれた。
で、それから30分後。
俺達は街から少し離れた平原に来ていた。
「………くぁぁぁぁ………あふ」
適当な岩の上に座り込んで煙草を咥え、欠伸を噛み殺しながら俺は嬢たちの様子を伺う。
「……っ…」
やはり人間同士の戦いとは勝手が違うと聞いてか、アルカ嬢には若干の緊張が見える。
多分だが、温室育ちっぽいしなぁ。
「…………」
それに反してジャコは結構落ち着いているっぽい。
そう言えば、以前俺に殺気を向けたことと言い、俺達が止めたとはいえ死に損なったキーシャへのトドメを躊躇わなかったことと言い、彼女はある意味キーシャ以上に荒事に慣れているフシがあった。
ある意味アルカ嬢以上に謎だな、ジャコって娘は。
彼女達のバックボーンに興味を抱いて無駄なことを考えていると、帽子を取っていたキーシャが顕になった耳をピクリと動かす。
「…………獲物が来たぞ。構えろ」
キーシャの指示に二人は手のひらを傷つけ、直ぐ様血晶魔法を掛ける。
嬢は厚みのある片刃の両手剣、ジャコは小ぶりな戦斧を両手に二本。
二人の武器の用意が終わると、近くの林が僅かに揺れた。
草を掻き分け、そこから灰色の影が顔を出す。
『……ブモォォ』
全身が岩のように大きなそれは、太く短い四脚で地面を踏み鳴らしながら嬢達の前に現れた。
全長は120センチ程、全高は1メートルって所か。
その胴体はまるまるとしており、鼻先のツノと合わせて動物のサイを思わせる。
しかしその頭部、耳と目の中間辺りには、更に一対のツノが湾曲を描きながら前を向いていた。
「あれがトライゼライノス。草食で大人しい魔物だが、突進力とツノには気をつけろ」
そう言ってキーシャは後方に下がる。
自分たちで仕留めてみろ、ということか。
キーシャの意図を理解したらしいアルカ嬢達は一度深呼吸し、武器を構えた。
狩りの始まりだ。
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