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決まった思い

最終話になります。

ここまで読んでいただいて、有り難うございます。


この話を、1話毎に誤字脱字報告や案を考えてくださったどてカボチャさんにおくります。



「信じられない」


 帰りの新幹線の中で、麻友は怒っていた。

 夕方まで続いた誕生会は、本当に麻友も嬉しそうに過ぎたのだが、とある出来事で麻友は怒ってしまい、帰ることになってしまったのだ。

 と言うのも……。


「まあ確かに、誕生会の最後に『次のデートも付き合ってくれるか?』って聞かれて、『はい』って言ったわよ。でも、明日も仕事があるっていうのに、『ホテルに予約を入れてある』ってどういうこと?」


 松井もまた怒っていた。


「ディナーにふさわしい服を買って、宝石も選ぶ予定だった。明日の朝はそのままヘリコプターで帰れば、ゆっくり眠っていられるというのに……すべて台無しだ!」


 というのが彼の怒っていた理由だった。


 なにしろ、ドレスのための店も服も、いくつかおさえていた。松井としても、それを着た麻友の姿を見たかったのだ。

 そして、ネックレスや指輪を婚約指輪として選んで買いたかったし、そこにいくらかかっても構わないとさえ思っていた。

 ヘリコプターだって、少しでも長く一緒に入られるために、大変な思いをして用意した方法だというのに。


「だからそれが信じられない! ちょっといいかな、と思って返事しただけなのに、もうセックスすることでも考えていたんでしょ! もうちょっと相手の気持とかペースを考えてみたらどうなの?」


「俺の気持を考えたことはあるのか?! 本当にお前を選んでいいのか、自分のこと、会社のこと、お前のこと、お前の家族のことを考えてようやく決断して、いい返事をもらうために考えて、聞いて、全ての準備を整えたというのに。何が不満だ?! 第一なんだ、来てくれた友達、男ばっかりじゃないか。いったい何人と付き合っていたんだ」


「あら、すべて恋愛して付き合って、きれいに別れて、見ての通りよいお友達になっている人達ばかりよ。二股をかけたこともなければ、今付き合っているわけでもないのに、何か問題でも?」


「おおありだ。もてていただろうとは思ったが、あんなに多いとは思っていなかった。あの家に入ったことがある男も俺だけじゃないないな? ……どうりでお父さんが、俺に何も聞いてこないと思った……くそっ」


 松井の言葉は半分は正しく、圭吾が松井を寛容に受け入れてくれたのは、確かに今までにも麻友が男性を連れてきたことがあるからだった。

 ただそれよりも、麻友が選んできた男性であれば誰でも大切に受け入れたいという父親心もあったし、なによりあの時に『嫁ぐ前に』と圭吾が呟いたように、松井のことを認めていたこともあったのだが。


 二人が乗っていたのはグリーン車だった。麻友は指定席に一人で座ろうとしたが、松井が無理やりグリーン車の二人席をとってしまったのだ。

 だんだんと大きくなる二人の声に、車掌さんが思わず声をかけてくる。


「あの、お客様。お静かにお願いします」


 振り返ると、周りのお客さんも迷惑そうに、そしてどこか好奇の目でこちらを見ているのが解る。

 麻友は車掌さんに頭を下げて謝った。


「はい、ごめんなさい。……もう、あなたのせいよ」

「お前のせいだろ」

「なにいってんの、だって、あ……んーーー!! …………んっ、信じられない! こんな時にキスするなんて!!」

「お前の唇が悪い」

「わっ、私からキスしたわけじゃないでしょ?!」

「お前の唇を見ると我慢出来ない」

「なっ……!」


「あの、お客様……」


 再び現れた車掌に、さすがに悪いと思った二人は、丁寧に頭を下げて小さい声で話すと約束するしか無かった。

 おそらく次に注意されたら、グリーン車を出て東京まで立っているしかないだろう。

 言いたいことは山のようにあったが、ふたりはしばらく黙るしか無かった。


 松井は腕を組んで、いらいらしたように足を揺すっていたが、我慢できずに麻友に話しかけてくる。


「いいかよく聞け」

「なんですか? ……というか近いです」

「うるさい。大事なことを言うから、しっかり聞いておけ」


 小さな声で話すだけにしては近すぎる距離に松井の顔が迫ってくる。

 だが麻友はあえて松井に向かい合うように顔を上げ、しっかりと視線を合わせた。


 そして松井は、熱のこもった視線で麻友を見つめながら、耳に響く低い声で話し始めた。


「お前のことを愛している」

「……!」

「一生、俺のそばにいろ。俺から離れるな」

「…………」


 松井はさらに近づき、互いの鼻が重なる。

 それは、互いの吐息が唇に感じる距離。


「お前は俺のものだ。解ったな」


 松井は麻友の返事を聞かなかった。

 

 答えは解っている。




 松井がさらに顔を近づけると、麻友もまぶたを閉じ、顔をわずかに上げる。



 悔しいが、麻友も気持ちは決まっていた。




 そして二人の唇は、そのままゆっくりと重なっていった。






〈 好きになるまでの時間 終わり 〉





読んでいただいて、有り難うございました。


恥ずかしながらミッドナイトノベルズの方で、京夜の名前で「好きになった後の時間」として、新幹線で帰ったその夜の二人を書きました。


R18です。

本日2月15日の午後8時から毎日更新していければ、と思っています。


良い子はここで回れ右!


アドレスは下記です。


https://novel18.syosetu.com/n5797bb/




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