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1-6

「――聞こえますか? 聞こえますか?」


 知らない誰かの声と共に、私はまた違う場所に佇んでいた。

 滑り台とブランコだけがある、寂れた小さな公園。

 見覚えはない。まあ、幼少の頃の記憶なんて殆どないので、その時に足を運んだ場所なのかもしれない。


「――あなたは、非常に不味い状況に置かれています。目を覚ます必要がある。けれど、そのためには、あなたは自分が何者なのかを思い出さなければならない」


 どうやら、この声は空の上から降ってきているようだった。

 安直だけど、現実世界の誰かが私に呼びかけているのかもしれない。


「――自分を思い出して。それが其処から出る鍵。急いで、あまり時間はない」


 時間がないという事は、もしかしたら私は今死の淵にでもいるのだろうか。

 あの世からの手招きを受けていて、心停止のように時間が経つことに帰還が難しくなっている?

 ただの想像でしかないけれど、焦燥感の正体はそれのような気がした。

 とにかく、此処から出ないと不味いのは事実なのだろう。

 するべき事が見えてきたおかげか、私は少し明るい気持ちになっていた。

 よし、と気合を入れてベンチから立ち上がる。

 瞬間、青空だった空が真っ暗に染まって――急速に込み上げてきた吐き気に逆らえず、私はそこで激しく嘔吐した。

 胃液しかできなかったのは幸いだったけれど、気持ちはまた一気に沈んでしまっていて、


『――先日、〇〇公園で顎の切り取られた遺体が発見され、その特徴から刑事機関は口攫い事件の十七人目の犠牲者と見て捜査を進めており――』


 頭の中で、声がした。

 事務的なナレーターのような響きだった。

 心臓が収縮して、呼吸が乱れる。

 知らない、

 知らない知らない。

 こんな事、私には関係ない!

 関係ない、関係ない関係ない関係ない、関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ないっ!

 呪詛のように繰り返して、私は心を落ち着ける。

 大丈夫、

      大丈夫、、

                 大丈、夫。

 だって、そう、、、あれは、あれはもう時効なんだから。

 そうだよ、時効だ。十五年経ったんだから完全犯罪だ。死んだ奴以外、誰も悪くなんてない。

 呼吸を整えて、また目を開ける。

 すると、目の前にはシズカがいて、


「あの時から、私達ずっと一緒にいるって決めたんだものね。約束、したんだものね? ねぇ、破らないでよ? 私を独りにしないでよ? 私にはもう、あなたしかいないんだから」


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