1-3
真っ赤な部屋に、私は佇んでいた。
ベッドの上には死体が一つ転がっている。
何度も何度も何度も何度も、
何度も何度も何度も、
何度も何度も何度も何度も何度も、
何度も何度も、
何度も何度も何度も、
何度も何度も何度も何度も、
何度も何度も何度も何度も何度も何度も刺したから、もはや誰なのかの判別もつかない。
私は、今もこんなに憎んでいたのかと、自分で自分に驚くくらいの執拗さだった。
その所為で、ナイフも折れてしまった。
けれど、全てを出し切ったからか、実に清々しい気持ちでもあった。
苦しくて仕方がなくて、涙があふれた。
「素敵な光景ね。とても嬉しいわ。ありがとう」
傍らで、シズカの声がした。
お礼なんていらなかった。むしろ――
「……あれ?」
部屋には誰もいなかった。
私は一人で、此処は実家の私の寝室だった。
中身のぶちまけられた枕やベッドの羽毛、割れた花瓶、血のシミのついたカーペット。……懐かしい。
床に散らばる花瓶の欠片を手に取って、強く握りしめる。
痛みはなかった。でも、血はしっかりと出た。
……あぁ、まだ夢の中なのだ。
忘れてしまっていた。
自分がいつまでもこの夢の中にいる事を、どうしてか忘れてしまっていた。
どうすれば起きられる? どうすれば終わらされる?
なんだろう、同じところをぐるぐると回っている気がする。
鮮明なのに不透明で、曖昧なくせに切実な焦燥感。
「――嫌、嫌、嫌嫌嫌ぁぁあああああああああ! どうして、どうしてどうしてぇええええええええ!」
突然、甲高い女の絶叫が部屋から響いた。
耳に障るどこまでも不快な音。
あまりの煩さに耐えられなくて、私は耳を塞いだ。目を瞑って、嵐が過ぎるのをじっと耐えることを選んだ。
そうやってどれだけの時間歯を食いしばっていたか、ようやく音が消えたところで安堵の息を吐きながら目を開けると、手が届く距離にアカリがいた。
肩口で切り揃えられた黒髪と、意志の強そうな太めの眉が印象的な彼女。
他に何もいらないくらいに大好きな彼女が、
『……あなたを許さない。絶対に、許さないから』
私の心を、絶望の淵へと突き落とした。




