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私は今、夢を見ている。
それを自覚しているという事は、これは明晰夢というやつなんだろうか。
いつそれを自覚したのかは覚えていない。随分と長いあいだ此処に居る気がするし、ついさっきな気もする。
思考もどこかぼやけていて、私はあてもなく、記憶にあるようなないような、どこにでもありそうな街路を彷徨い歩いている。
……退屈だ。
早く起きてしまいたい。
あぁ、けれど、現実の私は充実しているんだろうか?
それ以前に、私はいったい誰なのだろう? …………困った。どうやら記憶に靄がかかっているみたいだ。全てが曖昧にぼかされていて、喉元まで出かかっているのにそこで全部詰まってしまっているような感じ。
何かきっかけがあれば、すぐにでも思い出せそうな気はするのだが――
「――こんなところにいた」
不意に、左手から声がした。
振り向くと、そこには彼女がいた。
彼女…………そう、シズカだ。多分、シズカだと思う。
華奢な体躯に太腿まで届く亜麻色の髪が特徴的な、私が四番目くらいに好きだった、なによりも特別な彼女。
「いつまで、私から逃げるつもりなんですか?」
非難するような眼差しに、否応なく胸が苦しくなった。
彼女とは最近ずっとギクシャクしていて、私は忙しさを理由に距離を置いていたのだ。どうすればこの問題を解決できるのかがわからなくて、逃げていた。
でも、このままじゃいけない。
此処は夢の中だけど、彼女は彼女のままに見えた。だから此処で予行演習をして、そして目を覚ましたら、今日こそ彼女との関係を取り戻そう。
「すまない。君を傷つけるつもりはなかったんだ。私はただ、君との関係を大事にしたかっただけなんだ」
「本当に?」
「あぁ、もちろんだよ」
「だったら証明してください。私を愛してください」
台本を読んでいるみたいに、お互いがすらすらと言葉を並べて、私達は当たり前のようにホテルへと足を運ぶ事になった。
そして、私はそこで、自身の頭蓋が割れる音を聞いた。
『……あぁ、本当に最高の聖夜ですね。もうじき、もうじき私達は一つになれる。永遠に』




