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 最初に昏倒した職員が目を覚ました。

 その報告を受け、主任を含めた職員たちは大きく息を吐き、椅子に深くもたれかかる。

 元凶である呪いの発生源が処理されたのだ。五年前にとある私立の中学校に通っていた生徒全員を殺す事で、当たりを引いた。

 決して少なくない犠牲だが、それでも最良の結果と言えるだろう。

 そこに至る最も大きな情報を提供してくれたのは、化粧品会社に勤める会社員だった。

『常夢』から目覚めた女性だ。夢に干渉していた職員が彼女が目覚めた時の波長を追う事で場所を補足し、最終的に通報を受けてやって来た刑事が彼女を確保した。そして、その彼女が夢に居た呪いの核である存在の制服を覚えていてくれたおかげで、この選択が取れた。

 ただ、その彼女絡みで大きな悲報も届けられていた。

 どういうわけか彼女は郊外の屋敷に監禁されており、現場に最初に駆け付けた職員二名もその犯人に殺害されたというのだ。しかも、屋敷には他にも三人の遺体があったとの事だった。

 一人の身元は不明だが、二人はその屋敷の所有者である椋鳥シュウジ、レンゲの老夫婦であることが判明。業務用の冷蔵庫の中に入れられており、死後一月ほどが経過していた。

 悍ましいのは、その保存状態なら残っているはずの脳の大半が消失していたという点だ。頭蓋骨には切開の痕もあり、犯人が持ち去った、或いは喰らった可能性を示唆していた。

 これが、ただの異常者の犯行だったのなら特に問題はないのだが、特別な才能を活用するための条件だった場合は非常に厄介で、おそらく状況的に見ても後者で間違いなさそうだった。

 犯人はまだ発見されておらず、また殺された職員の一人の頭部も持ち去られていたからだ。もし犯人が脳を食べる事によって他人の記憶を奪う事が出来るのなら、現場の包囲網を突破する事もそう難しくはない。

「まあ、なんにせよ、ようやく今日の仕事の終わりですね。八十五時間超の今日でしたけど。……さすがに、活性剤の限界かも」

 大きく伸びをしていた職員が、手のひらサイズの薬瓶を左右に揺らしながら言った。

「特別手当に期待ね。というか、早く家に帰ってシャワーを浴びたいわ」

 と、女性職員が欠伸を零しながらぼやく。

 弛緩した空気。

 その気持ちはわかるが、まだ早い。

「状況が落ち着くまでは無理な話だな。少なくとも犯人が捕まるまでは、厳戒態勢のままだろう」

「計器が反応したんですか?」

「いや。だが、呪化(じゅか)する可能性は高い」

「それは主任の直感ですか? それとも統計的なもの?」

「前者だ」

「じゃあ、本当に高そうですね。……主任の息子さんの結婚式って、いつでしたっけ?」

「十日後だ」

 だから、出来ればそれまでに片付いてほしいが、願望が予感に勝ることなどなく、犯人が見つかったのはそれから二週間後の事だった。


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