第06話決意
「んぅ…」
意識が鮮明になる。目を開けると、そこは2度目の天井、2度目の部屋、2度目の相立。
「お、起きたか」
フォンデュが起きたことに気づいた相立は、フォンデュの寝ている場所のすぐ側にある椅子に座り、話し始める。
「まず、シェラの仕事への同行、お疲れ様だったな。」
そうだ、フォンデュは、確かキャラ被りのシェラと違法能力者の拠点に行って…確かそこで…
そこまで思い出してフォンデュは息を呑んだ。
「わたくし…人を…」
そう、フォンデュは人を…殺してしまった。
命の危機を感じた。死ぬかと思った。怖かった、苦しかった。でも…殺してはいけなかった。
「フォンデュ、今回は、お前は悪くない。」
相立はフォンデュを慰める。
「すみません、今は1人にしてくださいまし」
「あぁ、分かった」
――――――――――――
数時間後…
フォンデュは、ベットに寝転がっている。
あれからどれぐらい経ったのだろうか。
どんなに忘れようとしても思い出してしまう。
自分が殺してしまう前の男の顔、声、最後の一瞬。
「わたくしは…」
自分のこの手で、男の命を、未来を奪った。例え犯罪者であったとしても、許されない。許してはいけない。そんな気がした。
「コンコン」
不意に、扉が、叩かれた。
「フォンデュさん、今、よろしいかしら」
シェラの声が聞こえた。
「…いいですわ」
そう告げると、シェラはすぐに医務室に入ってきた。
心の奥底で、誰かに聞いて、救って欲しかったのだろうか、フォンデュは、いつのまにか口を開いていた。
「シェラさん、わたくし…人を…」
その先がその先の言葉を紡ぐことを躊躇ってしまう。フォンデュが先を言う前に、シェラが返答した。
「そうですわね」
シェラは慰めない、ただ、フォンデュのしたその行為を、肯定した。
「わたくし…怖くて、死を感じて…いつの間にか、手を伸ばしていましたの」
「でも…殺そうなんて…殺したいなんて…思っていませんでしたわ」
シェラが、シェラの顔が少し険しくなった気がした。
シェラはフォンデュが眠っているベットの横に椅子を持ってきて、座る。そして話し始めた。
「フォンデュさん、ワタクシ達のこの仕事は、決してクリーンで、優しくて、そんなものではありませんわ」
シェラの言葉一つ一つには、いつもはない重みが、ある気がした。
「違法能力者を捕まえる、一般人を守る、不殺で。言葉で言うだけなら、簡単ですわ。」
シェラは険しい顔つきで続ける。
「でも、現実は…現場は違いますわ。私達能力者は、常に殺し、殺され、そのリスクを背負っていますの。でも…だからこそ…」
「それを当たり前と、慣れては、いけませんわ。常に悩み続けなさい、悔やみ続けなさい、苦しみ続けなさい。それを忘れず、それでも尚…前を向きなさい」
フォンデュはその言葉を、無心で聞いていた。そして最後の言葉を聞いた瞬間、少し、心が軽くなった、そんな気がした。
「シェラさんも、ありますの?」
「なにをですの?」
「人を…殺したこと」
シェラは少しだけ何かを躊躇ったが、口を開き
「ありますわ…何度も」
それを言い残すと、シェラは立ち上がり、フォンデュに背を向け
「今日は休みなさい、フォンデュさん」
それだけ言い残すと、シェラは医務室から去っていった。
フォンデュはその背中に、悲しいような虚しいような、そんな言葉では言い表し難い感情を感じた。
そしてフォンデュは決意した。
能力者として生きて行くこと、そして、今日という日を忘れないことを。




