第16話VS教団戦 ⓪
「早急に対策を考える必要がある」
作戦室にて、相立はそう言い放った。
それもそのはず、直近で二回も、この作戦室への侵入を許している。
料理人ジェンヌの突然の襲撃。
いつの間にか侵入していた教団の幹部。
作戦室までの道のりは決して簡単な道ではない。
そもそもノヴァスの本拠地は、関係者以外存在すら知らない。
それでも2度も、侵入してきた。
「はっきり言おう、これは"異常事態"だ」
空気が変わったのがはっきりとわかった。
「料理人…ジャンヌの件はまだいい、アイツは今考えるだけ無駄だ。」
相立は一拍置いて続ける
「しかしあの幹部の件は違う」
「アレは、侵入の痕跡さえ残されていなかった」
「つまり?どう言うことですの?」
シェラが質問する。
「一つ目はアイツが痕跡を全く残さないなんらかの方法でここに来た、と言うこと」
「二つ目は元々ここにいた…かだ」
「元々ここにいたァ?そんなこと可能なのかぁ?」
猪虎は質問をする。
そうだ、おかしいのだ。ここにいたなんて事…それはまるで……
「一つ目も二つ目も、どちらだとしても"内通者"がいる可能性が高い」
猪虎は叫ぶ
「内通者!?ここにか!?いるわきゃねぇだろぅがよぉ!」
「あくまで可能性だ」
「ならよぉ!今からしらみつぶしに探すのかぁ!?」
「いや、探さない」
「!?…それはどう言う事ですの?内通者がいるなら、いますぐにでも、探した方がいいのではありませんこと?」
フォンデュは苦言を呈す。
「今はそんなことを悠長にやっている暇はない」
「そんなことより危険視すべきは、
"教団がどこまでノヴァスの情報を把握しているのか"だ」
「部屋の配置、戦闘員の人数、能力…どこまで把握しているのか分からない」
「もしその全てを把握されているのだとしたら、こちらは今完全に後手だ」
「つまり こっちから 動く」
「そうだ」
「内通者がいたとして、たとえそれを見つけても根本の解決にはならない」
「ならば……」
相立は作戦室のモニターに地図を写す。
「今度はこっちが、攻める番だ」
―――――――――――
『攻めると言ったってさぁー?どう攻めるの?場所分かってるの?』
アラクネが質問をする。
「いや、分からない」
被せに来ているかと思うレベルの即答だった。
「ならどうするんですの?」
フォンデュがさらに質問をする。
「場所はわからんが手がかりならあるだろう」
「それ は?」
「ヴィルだ」
相立はそう言い放ったあと、詳しく説明を始めた。
ヴィルは教団から依頼を受けて空晴を殺しに来た。
つまり現時点で教団に一番近い教団外の人間はヴィルである。
ならそのヴィルから情報を聞き出せばいい。
概ねそんな内容だった。
「……でもその計画には大きな穴がありますわ」
シェラが口を開く
「ヴィルの現在位置が分からないことです」
「それなら だい じょぶ だと 思う」
「何がですの?空晴」
「ヴィーヴィー まだ 負けた ばっか だから 戦った 場所で 寝転がってる と思う」
「それを早く言え!?」
相立が咄嗟に叫んだ。
空晴が当たり前のように話したその情報は今の状況を打開できるかもしれない大きな情報だった。
「な…なら早速行きましょうですわ!」
フォンデュが立ち上がる。しかし
「待て」
「その前に今回の目的を整理しておくべきだ」
相立がモニターの内容を、地図からいつ作られたか分からないスライドに変わる
「目的は大きく分けて二つ」
「一つ、ヴィルから教団の情報を聞き出す」
それと同時に、モニターのスライド内に一つ目の目標がアニメーションで現れる
「二つ、ヴィルを教団から保護、いや、こちらに引き入れる」
スライドがリアルタイムで手直しされる。
「ヴィルを引き入れるだとォ?」
「あぁ、そうだ」
「でも ヴィルヴィル 敵だった」
空晴は疑問を呈す
「敵だったとしても、貴重な情報源だ、それに、引き入れることができればこちらの行動をよりスムーズに実行できる」
「そ…それならっ!いそがな…きゃ…行けないと思いますっ!」
「教団側がっ…ヴィルさんがやられたことを、もう知ってる…筈だからっ!」
「消される可能性も…」
『偉い偉いよく言えたね〜』
「アンナの言う通りだ、早速行こう」
相立は空晴に向き直る
「空晴、案内を頼めるか?」
「まかせ て」
空晴が立ち上がり、名指しする
「相立 フォンフォンちゃん 行く よ」
「え?…わっ、わかりましたわ!!」
フォンデュは慌ただしく立ち上がり、空晴についていく
「ちょっと待てよ!!」
猪虎が声を荒げる
「どうした?」
「俺はどうするんだ!?」
「留守番してろ」
「えぇー?そりゃねぇぜあっちゃんよぉ!」
「まぁまぁ!」
千夏が猪虎を宥める
「ほら!全員で行ったらここがガラ空きになっちゃうよ!」
「そしたらさぁ〜?ちなっちゃん達の拠点ボッカーン!ってしちゃうかもよ?」
「まぁそう言うことだ、猪虎、千夏、アンナ、シェラ、留守は頼んだぞ」
「任せてくださいまし」
「…わかったぜ!」
「ちなっちゃんにお任せ〜!」
「わっ、わかりました!」
『行ってらっしゃ〜い』
三人は空晴に捕まり、転移した。
―――――――――――
時は少し遡り、ヴィルと空晴の戦闘跡にて
開けた土手の上に、ヴィルは大の字になって倒れていた。
「……」
ヴィルは身体を起こそうとするが、思うように力が入らず、上手くいかない。
「派手にやられたな…」
その時、
「あれあれ〜?」
いつかの声がした。
人の神経を逆撫でする、ムカつくその声。
ヴィルが顔を上げるとそこには、
つい先程まで作戦室にいた、教団の幹部がいた
「苦戦したみたいだね〜?」
幹部は周りを見回す。
見渡す限り地形がボコボコになっている。
それはヴィルと空晴の戦いの激しさを物語っているかのようだった。
「…なんのようだ」
ヴィルは幹部を睨む
「えー?待って待って?そんな怖い顔しなくてもいいのにぃ?」
「警戒するに決まっているだろ」
「……」
数秒の沈黙、その後幹部が口を開く。
「それよりさぁ?聞きたいことがあるんだ〜?」
「なんだ」
「君、あの子に何か喋った?」
ヴィルの顔が険しくなる。
「…そっかぁー」
幹部はそのわずかな表情の変化で何かを察したようだった。
「なら………」
その瞬間、近くにいきなり気配が現れた。
幹部は咄嗟に振り返る
「あ あそこ ヴィルヴィル」
「ん?そばに誰かいませんこと?」
「あっららー、もう来ちゃったかぁ…」
「ヴィルヴィル 来たよ」
空晴達はヴィルに近づいていく。
ヴィルは辺りを見回した。いつの間にか幹部の姿は消えていた。
「ヴィル…」
相立が一歩前に出る
「なるほどノヴァスか」
「話を聞かせてもらう」
教団を追うためのただ一つの道筋。
教団との接敵は近い。




