第13話空晴①
フォンデュと千夏がキョンシーの元にいた頃。
他のメンバー達もそれぞれ重い思いの時間を過ごしていた。
これは、その中の1人空晴の身に起きた出来事。
―――――――
時は少し遡る。
空晴は、ブラブラと街を散歩していた。
広い割には人の少ない街道。
大量の畳屋が軒を連ねる商店街
道路に侵入している明らか建築基準法違反の民家が名物の町。
空晴はこの街の雰囲気を好ましく思っていた。
「きょうも この町 は へい 和」
ブラブラと、空晴が町を散策していると、いつのまにか周りに誰も……いなくなっていた。
先程まで頻繁に人とすれ違っていた商店街も、常時渋滞レベルで車通りが多い車道も、どこも閑散としている。
「なんか 静かすぎ る きも する」
不思議に思って空を見上げる。
空が、赤かった。
「訂正 ちょっと 平和 違う」
気づかなかった。いつからかは定かではない。
まさかこの空晴でも、ここまでの変わりようでようやくわかるレベル。
「…ようやく気づいたか」
空晴はハッと声のした方へ視線を移す。
視線の先にいたのはフードを被った男だった。とても不思議な雰囲気を纏っていた。
男は自分の方に空晴の視線が移ったのを確認すると、話を始める。
「始めまして、俺の名前はヴィル。"そらはれ"、お前を始末しにきた」
「"そらはれ"? 誰 それ」
「…お前のことだ」
「私 そらはれ 違う」
「え?」
「わたし 空晴」
「…漢字は」
「空に 晴れ って書いて 空晴」
「………」
ヴィルはわなわなと震えながら、叫んだ
「空に晴れで"ゆいは"!?そんな読み方あり!?」
「よく 言われる」
ヴィルはアーッと髪を掻きむしると、再度最初に現れた時の不思議な雰囲気を纏い
「…始めまして、俺の名前はヴィル。"ゆいは"、お前を始末しにきた」
「やり 直した」
「仕事を…遂行する」
ヴィルは静かに殺気を放つ。それは鋭く研ぎ澄まされた刃のような殺気。
「本当に やる ?」
「……」
「そ なら 私も 手加減 しない」
空晴は瞬間移動を使いヴィルの懐に入り込む。
そして瞬時に拳を放った。
「ッ!」
ヴィルはその拳をもろに受けると、大きく上空に吹き飛んだ。
「ヴィル こんな もん?」
「舐めるな!」
吹き飛ばされたヴィルは上空で体勢を立て直し、腰からナイフを投げる。しかしそのナイフは、空晴に届く前に防がれた。謎の黒い物質…いや、空間の間にある"空白"に。
「続けて いく『崩空拳』」
空晴の拳にエネルギーが溜まる。この攻撃は、喰らった相手を空間丸ごと砕く、凶悪な一撃。
その一撃がいまだ宙を舞っているヴィルに対して放たれた。
「舐めるなと言ったよな」
ヴィルはその攻撃を、宙に舞っている状態で受け流す。威力を自身の後ろに流し、自身の身を守る。
そのままヴィルは空晴に殴りかかった。
「それ だけ?」
空晴はすぐに瞬間移動で距離を取る。
(あの時 崩空拳 受け 流され た 最初 そんなこと 出来なさそう だったのに)
(なにか おかしい)
「戦闘中に考え事か!」
ヴィルは地面に着地すると、地面を蹴って空晴へ一直線に向かう
「動き 単調」
空晴はヴィルの向かう先んじてに蹴りを置く。
避けられる訳がない、そう確信した一撃。
―――ドォーン!
蹴りは確かにヴィルにクリーンヒットした。
「グッ!…」
ヴィルの身体は後ろに思いっきり吹き飛ぶ。後方にある建物に何軒か叩きつけられ、突き破った後、ヴィルは瓦礫に埋もれた。
「終わっ た?」
空晴は首を傾げ、ヴィルのいる先を覗き込む。
しかし…
ガラッと、瓦礫がゆっくり動いた。
「……痛ぇな」
ヴィルは土埃に塗れている。口からは血が垂れ、顔にはアザもある。しかし、それでもヴィルは…笑っていた。
「なるほど…なるほどな」
「今の攻撃、読んだな、俺の行動を」
「面白い…面白いな!」
ヴィルは立ち上がると、肩を回し、言う。
「だが、お前の攻撃、もう2度と喰らわない」
「もう、分かったからな」
「?」
空晴はヴィルの発言に違和感を覚える。
(でも 考えてても 始まらない 攻撃 ある のみ)
再び空晴は瞬間移動、ヴィルの死角に移動すると、ヴィルに殴りかかる。
「読めてる」
ヴィルは半歩横にずれ、空晴の攻撃を避けた。
「…」
空晴はすぐさま姿を消し、
右、左、上、様々な死角から、拳や蹴りを叩き込む。
しかし
「遅い」「バレてるぞ」「馬鹿の一つ覚えだな」
ヴィルは全ての攻撃を最小限の動きで避けるか、受け流して捌いていく。空晴の攻撃は一撃も当たらなかった。
(あき らかに 今まで 動き 違う やっぱ 変)
空晴は攻撃を続けながら、ヴィルに話しかける。
「なに してる?」
「さぁな」
涼しい顔でヴィルはそう返した。
始めは反応すら出来ていなかった。それが今では涼しい顔で避け、受け流す。まるで、戦いの最中でも強くなっている様だった。
赤い空:
周囲と完全に隔離された別空間を作り出す結界。
呑気な空晴に勘付かれないようにちょーっとずつ生成していった。
この結界を作り出したのはヴィルではない。




