第14話空晴②
「さて……次は俺のターンだ」
ヴィルがそう呟いた次の瞬間。
地面が砕けるほどの勢いで踏み込み、一気に距離を詰めてきた。
「!?」
(速い さっきとは 比にならない 動き でも まだ 対応できない ほどでは ない)
空晴はすぐさま瞬間移動で避けようとする。
だが―――
「そこだ」
ヴィルは追わなかった。
その場に留まり、身体を半回転させ、空晴が現れる筈の支点に、迷いなく裏拳を叩き込んだ。
「ッ!? やっ ば!」
瞬間移動先に現れた空晴は咄嗟に両腕を交差させて受け止めようとする。
しかし
もの凄い爆音と、衝撃が腕から全身に突き抜け、そのまま数メートル後方まで吹き飛ばされる。
(今 移動先 バレ た?)
(偶然 では なさそう)
ヴィルはしっかりと拳を握り直すと、空晴に向き直る。
「その能力…いや、瞬間移動か?支点と支点の間の距離をなかったものにする能力。強力だが弱点がある」
一拍置くとヴィルは笑みを浮かべる。
「その支点がわかれば、そこで待っていればいい」
空晴は驚いた。ヴィルは自身の能力の大枠を理解し始めている。
(長引かせる のは 得策 じゃない)
空晴は再度瞬間移動をする。もちろん、ヴィルは対応してくるだろう。
「馬鹿の一つ覚えか?少しは学べ」
案の定、ヴィルは空晴の支点の先に拳撃を放ってきた。
「それを 待ってた」
空晴は移動の瞬間にそれを発動する。
『崩空拳』
喰らった対象を、空間丸ごと砕く攻撃。
それでヴィルの拳撃を受ける。
これでヴィルの拳は使い物にならなくなる筈で…
「さっき放ってきた技だな、お返ししてやろう」
ヴィルは、拳と拳が当たる寸前で、構を変えた。
空晴の一撃を包み込み、その威力をそのままそっくりお返しする。合気が近いだろうか
「ま た!?」
空晴の一撃は、その頬にそのまま帰ってきた。空晴は大きく上空を舞い、地面に落ちた。
「ぐっ………」
空晴はゆっくりと立ち上がる。
頬から一筋血が伝う。本来の威力には程遠い、が空晴には確かなダメージだ。
(強く なってる 訳じゃ ない?)
(覚え てる 感じ)
ヴィルは尚涼しい顔で静かに立っている。
「理解した」
「わかれば案外簡単だな」
(覚え られた)
最初は受け止め、次は受け流し、そして今、利用された。
「ヴィル 覚えてる」
「覚えている?それは少し違う。俺は最適解を貫いているだけだ」
「最 適解……」
空晴はその言葉を小さく復唱する。
(最 適 解… なら まだ 勝ち目 ある)
そう考えると空晴は踏み込む。瞬間移動は使わない。
空晴の瞬間移動は一見隙のない能力に思えるが、その実弱点も孕んでいる。
移動後の一瞬の硬直。ほんの僅かに満たないが、その硬直によって一手遅れる。だから今は使わない。
「能力を使うのをやめ、肉弾戦に持ち込むつもりか?」
空晴は反応しない。無言のまま地面をさらに蹴り、加速する。
右、左
フェイント、規則性のない足運び。
「錯乱させるつもりか?だが、読めるな」
ヴィルはそう呟き拳を放つ。
だが空晴は喰らわなかった。
身体を半身に捻り、拳を避けると、そのまま肘打ち
アッパー、回し蹴り
一撃一撃をさまざまな技にして、放つ。
ヴィルは捌く、がその顔には少しずつ冷静さが失われている様にも思えた。
少しずつ、押され始めていた。
「戦い方を変えたか…」
「少しペースを上げよう」
ヴィルの動きがさらに洗練され、スピードが上がる。
それに呼応するように空晴もスピードを上げていく。
しかし遂に
「もう分かった」
ヴィルは痺れを切らしたのか、空晴の一撃を弾き飛ばす。
「それを 待ってた」
空晴は瞬間移動をした。
「ここで差し込んでくるか!だがやはりゆいは!お前は馬鹿だ!」
「俺はもう!それは理解している!」
ヴィルは空晴の移動先に渾身の一撃を放った。
空晴が現れる。その空晴の顔は、笑っている様に見えた。
「ヴィル 貴方 の負け」
(最適解 を ついてくる)
(なら その解を 増やせばいい)
次の瞬間、ヴィルの後ろに突如現れた人影が、ヴィルを地面に叩きつけた。
「ヴィル 最適解 選ぶ」
「だから 一対一の 戦い 強い」
「でも 解が 二つ あれば」
「方程式は 崩れる」
仰向けになったヴィルは、笑いながら
「はー…完敗だ!」
そういった。
戦いは幕を閉じた、空晴の勝利によって
だがこれからも空晴の困難はつづ…
「「見る な!」」
続いていくだろう…




